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安保理は komisi keamanan ではない——国連PKOの歩みをインドネシア語で伝える|機関名と3原則の定訳

「平和維持」が「治安活動」になる。国連PKOの記事をインドネシア語に訳す

日→イ JAPANESIA
keamanan と perdamaian を取り違えると、
「平和維持」が「治安活動」になる。
国連の平和維持活動(PKO)は、国連憲章のどこにも書かれていないまま、実際の運用を重ねて形づくられてきました。1956年のスエズ危機で本格的な部隊が生まれ、インドネシアも翌年から部隊を送り続けてきたこの活動が、いま撤収の時代を迎えています。その流れを解説した日本語の記事を、インドネシア語に訳す練習です。
訳例(添削前)は38点。terpaksa(〜せざるを得ない)、sambil(〜しつつ)、mulai dari … hingga(〜から〜に至るまで)は取れています。ただ、PKO を Aktifitas Keamanan(治安活動)、安保理を komisi keamanan(安全委員会)、治安部門改革を revolusi pengamanan(警備の革命)と訳すなど、国連の機関・役職・原則の定訳で大きく失点し、「明文の規定があるわけではなく」「終了させる」という文の核も抜けました。
国連のしくみを知らなくても読めるよう、安保理・スエズ危機・ガルーダ部隊・3原則・撤収の時代・自主積極外交まで、背景を6つの問いで解説し、訳例の赤ペン69か所をまとめて見てから、1文ずつ直していきます。
背景をゼロから(6つの問い) 赤ペンをまとめて見る 1文ずつ添削 模範訳(全文) 図解17点
今日のねらい:国際機関の記事は「定訳」と「文の核」で決まる

①機関・役職・原則の定訳——PKO=operasi pemeliharaan perdamaian、安保理=Dewan Keamanan、事務総長=Sekretaris Jenderal、国連憲章=Piagam PBB、受け入れ国=negara tuan rumah、不偏性=ketidakberpihakan。漢字語を1字ずつ組み立てると、別の機関や別の原則になります。

②平和(perdamaian)と安全(keamanan)——国連の目的「国際の平和と安全の維持」には、2つの語が並んで出てきます。取り違えると、平和維持活動が「治安活動」に、平和貢献が「安全への貢献」に変わります。

③文の核と、動詞のあとの形——「明文の規定があるわけではなく」「終了させる」「関与」を落とさない。didesak(迫られる)・dituntut(求められる)・memutuskan(決める)のあとに何を置くか(bahwa/untuk+動詞)を確かめます。

BACKGROUND背景を、ゼロから

訳す前に、6つの問いを押さえておくと、使う語が自然に決まります。国連のしくみを知らなくても読めるよう、順に説明します。

Q1国連の「平和維持活動(PKO)」って、何?——憲章のどこにも書かれていない

国連(国際連合。インドネシア語で PBB=Perserikatan Bangsa-Bangsa)は、1945年に生まれた国際機関です。2度の世界大戦を防げなかった反省から、いちばんの目的に「国際の平和と安全を維持すること」を掲げています。インドネシア語では memelihara perdamaian dan keamanan internasional。この記事で大事になる perdamaian(平和)と keamanan(安全)が、目的の1文に並んでいます。

その役目を主に担うのが安全保障理事会(安保理)です。インドネシア語では Dewan Keamanan。15か国でつくり、米・英・仏・ロ・中の5か国は、いつも席を持つ常任理事国です。残りの10か国は選挙で選ばれ、任期は2年。安保理の決定には9か国の賛成が要り、常任理事国が1か国でも反対すると成り立ちません。これが拒否権です。インドネシアも、これまでに4回、非常任理事国を務めました(図1)。

国連憲章は、紛争を収めるための道具を2つ用意しています。1つは第6章の「紛争の平和的解決」——交渉や仲介、調停で解決をめざす方法。もう1つは第7章の「強制措置」——経済制裁や、最後は武力も使って、平和を壊す側に従わせる方法です。

PKO は、そのどちらでもありません。兵士を送るので、話し合いだけの第6章よりは踏み込んでいます。でも、相手を力でねじ伏せるわけではないので、第7章とも違います。そのため、第2代事務総長のハマーショルドは、PKO を「6章半」の活動と呼んだとされています。国連も「平和維持は、憲章に明記されていない」と説明しています。記事の第1文の「明文の規定があるわけではなく」「中間に位置する」「慣行の積み重ね」は、このことです。

最初の PKO は、1948年5月に中東に置かれた国連休戦監視機構(UNTSO)。停戦を見守る、武器を持たない軍人の監視団で、今も活動を続けています。

国連の安保理と、憲章の2つの道具——PKO はその間
上は、PKO をつくったり終わらせたりする安保理。下は、国連憲章が紛争を収めるために用意した2つの道具と、その間に生まれた PKO です。
安全保障理事会(Dewan Keamanan)——15か国の席
米英仏ロ中選選選選選選選選選選
常任理事国5か国(いつも席がある・拒否権を持つ)非常任理事国10か国(選挙で選ぶ・任期2年)
決定には15か国のうち9か国の賛成が要り、常任理事国が1か国でも反対すると成り立ちません(拒否権)。インドネシアは、非常任理事国を4回務めました(1973〜74・95〜96・2007〜08・19〜20年)。
憲章 第6章紛争の平和的解決penyelesaian konflik secara damai
  • 交渉・仲介・調停
  • 国連は、話し合いの場をつくる
憲章に明記なし=「6章半」平和維持活動(PKO)operasi pemeliharaan perdamaian
  • 当事者の同意を得て、部隊を置く
  • 戦うためではなく、停戦を見守る
  • 慣行を重ねて形づくられた(第1文)
憲章 第7章強制措置tindakan pemaksaan
  • 経済制裁
  • 安保理が認めた武力の行使
話し合い力
図1:記事の第1文の「紛争の平和的解決と強制措置の中間」は、下の帯の真ん中のことです。第7・8文の「安保理」は、上の15か国の会議です。
Q2「本格的な部隊」は、どうして生まれたの?——1956年のスエズ危機

エジプトのスエズ運河は、地中海と紅海を結ぶ海の近道です。運河を運営する会社は、英国とフランスの資本が握っていました。1956年7月26日、エジプトのナセル大統領は、この会社の国有化を宣言します。

10月29日、イスラエルがエジプトのシナイ半島に攻め込み、英国とフランスもエジプトに軍事介入しました。これがスエズ危機(インドネシア語で Krisis Suez)です。安保理は動こうとしましたが、当事者の英仏が拒否権を使い、何も決められなくなりました。

そこで問題は、すべての加盟国が集まる国連総会に移されます。総会は11月2日に停戦を求め、11月5日には、停戦を見届ける国際部隊をつくると決めました。これが第1次国連緊急軍(UNEF)です。アイデアを出したのはカナダのピアソン外相(翌1957年にノーベル平和賞)。それを数日で形にしたのが、ハマーショルド事務総長でした。最初の部隊は、11月15日に現地に着きます。

UNEF の仕事は、まず停戦を見守り、英・仏・イスラエル軍の撤退を見届けること。そのあとは、エジプト軍とイスラエル軍の間に立つことでした。記事の第2文の「停戦の監視と兵力の引き離し」です。1948年の監視団は丸腰でしたが、UNEF は武器を持った部隊で、国連は「最初の武装した平和維持活動」と位置づけています。記事が「本格的な部隊が初めて編成された」と書くのは、このためです。いちばん多いときで約6000人、10か国が部隊を出しました。

ハマーショルドは、スウェーデン出身の第2代事務総長(1953〜61年)。1961年9月、アフリカのコンゴの紛争の調停に向かう途中、飛行機の墜落で亡くなりました。この年のノーベル平和賞は、亡くなった彼に贈られています。

UNEF は1967年5月、エジプトの求めで撤収しました。受け入れ国が「出て行ってほしい」と言えば、PKO は去るしかない——記事の第7文の「同意の撤回」は、本格的な部隊が生まれたときから付いて回る問題です(図2)。

スエズ危機から UNEF まで——「本格的な部隊」が生まれるまで
最初の PKO は丸腰の監視団でした。武器を持った部隊が初めてつくられたのは、1956年のスエズ危機のときです。
1948年5月最初の PKO(国連休戦監視機構=UNTSO)中東で停戦を見守る、武器を持たない軍人の監視団。今も活動を続けている
1956年7月26日エジプトがスエズ運河会社の国有化を宣言運河を運営する会社は、英国とフランスの資本が握っていた
10月29日〜イスラエルが侵攻し、英国とフランスも軍事介入安保理は、当事者の英仏の拒否権で動けず、問題はすべての加盟国が集まる国連総会へ
11月5日総会が、第1次国連緊急軍(UNEF)をつくると決めるカナダのピアソン外相の案を、ハマーショルド事務総長が数日で形にした
11月15日最初の部隊が到着停戦を見守り、英・仏・イスラエル軍の撤退を見届け、エジプト軍とイスラエル軍の間に立つ(第2文)
1957年1月インドネシアのガルーダ部隊が出発約550人がエジプトへ。UNEF ができた翌年のこと(第3文)
1967年5月エジプトの求めで、UNEF が撤収受け入れ国が同意を取り消せば、PKO は去るしかない(第7文)
図2:第2文の「本格的な部隊」は UNEF、「当時のハマーショルド事務総長の下」は、この部隊を形にした事務総長のことです。インドネシアの初のガルーダ部隊は、その翌年(第3文)に出ました。
Q3インドネシアと PKO——「ガルーダ部隊」の70年

インドネシアが初めて PKO に部隊を送ったのは、UNEF ができた翌年の1957年1月です。約550人の部隊は、国章の神鳥ガルーダの名をとってガルーダ部隊(Kontingen Garuda、略して Konga)と呼ばれ、エジプトに向かいました(9月まで活動)。独立を宣言してから、まだ10年余り。1955年にバンドンでアジア・アフリカ会議を開いたばかりのインドネシアにとって、エジプトは、独立をいち早く認めてくれた国の1つでもありました。

1960年には、アフリカのコンゴへ2回目の部隊を送ります。それからは、派遣のたびに「ガルーダ部隊◯◯」と番号が振られてきました。PKO の歴史と、インドネシアの派遣の歴史がほぼ重なる(第3文)のは、このためです。

いまのインドネシアは、PKO に要員を多く送る国の1つです。国連の統計では、2026年2月末で1961人(うち女性154人)。120か国の中で6番目の多さです。とくに多いのが、コンゴ民主共和国(826人)と、レバノンの UNIFIL(756人)。UNIFIL には2026年9月の時点で758人を送り、約7600人の部隊の中で最も多くの要員を出す国になっています(第9文の「同部隊に多くの要員を送ってきた」)。ジャワ島西部のセントゥールには、派遣前の訓練を行う国軍の平和維持任務センターもあります(図3)。

インドネシアと PKO——数字で見る
制服の要員(兵士・警察官など)の数です。インドネシアの要員は、コンゴ民主共和国(826人)とレバノンの UNIFIL(756人)に多く送られています(2026年2月末)。
初めての派遣1957年1月ガルーダ部隊 約550人がエジプトの UNEF へ(第3文)
PKO に送っている要員1961人2026年2月末。120か国の中で6番目(うち女性154人)
UNIFIL に送っている要員758人2026年9月。約7600人の部隊の中で最多の国(第9文)
PKO に要員を多く送っている国(2026年2月末)
ルワンダ
4405人
ネパール
4340人
インド
4278人
バングラデシュ
4148人
パキスタン
2413人
インドネシア
1961人
図3:第9文の「同部隊に多くの要員を送ってきたインドネシア」は、UNIFIL に最も多くの要員を出している国、という意味です。
Q4PKO の3原則と、冷戦後に膨らんだ任務

伝統的な PKO は、3つの原則に支えられてきました(第4文)。①紛争当事者の同意——争っている主な当事者が、PKO を受け入れることに同意していること。②不偏性——どの当事者に対しても、同じ基準で任務を果たすこと。③自衛と任務の防衛以外の武力不行使——武力を使ってよいのは、自分たちを守るときと、安保理から与えられた任務(mandat)を力ずくで妨げられたときだけ、ということです(図4)。

注意したいのは、②の不偏性が「中立」とは違うことです。国連は、PKO の要員は「当事者との接し方は不偏でなければならないが、任務の遂行において中立ではない」と説明しています。違反があれば、どちらの側のものでも指摘する、ということです。

1989年に冷戦が終わると、米ソの対立で動きにくかった安保理が、次々に PKO をつくり始めます。1989〜94年の6年間に、新しい PKO は20。その多くは、国と国の戦争ではなく、国の中の内戦に向けられました(第5文の「内戦への関与」)。

内戦の現場では、停戦を見守るだけでは平和は戻りません。そこで任務は、文民(一般の市民)の保護、選挙の支援、兵士の武装解除、そして軍や警察、司法をつくり直す治安部門改革にまで広がりました。こうした PKO は「多機能型」と呼ばれます。

しかし、守るべき和平のないところに入った PKO は、悲劇も経験します。1994年のルワンダでは、PKO がいたにもかかわらず、100日ほどの間に100万人を超える人々が殺されました。1995年には、ボスニア・ヘルツェゴビナの町スレブレニツァで、国連が「安全地帯」としていた町が武装勢力に制圧され、8000人を超える男性や少年が殺されました。中立を守って見ているだけでは、市民を守れない——第6文の「中立を保ちつつ住民を守るという矛盾」は、こうした経験が突きつけた問いです。1999年、安保理は初めて、文民の保護を PKO の任務として明記しました(図5)。

PKO の3原則——インドネシア語の定訳つき
インドネシアの大統領令(2015年第86号)も、PKO への派遣の原則として、この3つを同じ言い方で挙げています。
1紛争当事者の同意persetujuan para pihak yang bertikai
  • PKO を受け入れることへの、主な当事者の同意
  • 同意がなければ、PKO 自身が紛争の当事者になってしまう
  • 同意が取り消されると、撤収を迫られる(第7文)
2不偏性ketidakberpihakan(imparsialitas)
  • どの当事者にも、同じ基準で任務を果たす
  • 「接し方は不偏、任務の遂行では中立ではない」(国連)
  • 違反があれば、どちらの側でも指摘する(第6文)
3自衛と任務の防衛以外の武力不行使tanpa penggunaan kekuatan bersenjata kecuali untuk membela diri dan mempertahankan mandat
  • 武力を使えるのは、身を守るときと、任務を力ずくで妨げられたときだけ
  • mandat=安保理が与えた任務
訳例は、不偏性を kestabilan(安定)、自衛と任務の防衛を tugas dan pertahanan(任務と防衛)としていました(第4文)
図4:3原則は、名前ごと覚えておく語です。とくに不偏性(ketidakberpihakan)は、中立(netral)とも、安定(kestabilan)とも違います。
冷戦後、PKO の任務はどこまで膨らんだ?
上は任務の広がり、下はその間に起きたことです。内戦の現場では、停戦を見守るだけでは平和が戻らず、任務は国づくりの手伝いにまで広がりました。
伝統的な PKO1948年〜。国と国の停戦を見守る
停戦の監視pengawasan gencatan senjata兵力の引き離しpemisahan pasukan
→
冷戦後の PKO(多機能型)1989年〜。内戦のあとの国づくりまで
停戦の監視gencatan senjata文民の保護perlindungan warga sipil選挙支援bantuan pemilu武装解除perlucutan senjata治安部門改革reformasi sektor keamanan
1989〜2000年に起きたこと
1989年冷戦が終わる米ソの対立で動きにくかった安保理が、次々に PKO をつくり始める
1989〜94年新しい PKO が20多くは、国と国の戦争ではなく、国の中の内戦に向けられた(第5文)
1994年ルワンダPKO がいたのに、100日ほどで100万人を超える人々が殺された
1995年スレブレニツァ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)国連が「安全地帯」とした町が制圧され、8000人を超える男性や少年が殺された
1999年文民の保護を、初めて任務に明記シエラレオネの PKO(安保理決議1270)
2000年ブラヒミ報告PKO の改革を提言。「不偏とは、すべての当事者を常に同じに扱う中立のことではない」
図5:第5文の「停戦監視のみならず、文民の保護や選挙支援、治安部門改革に至るまで」は、上の右側の箱のことです。訳例は、治安部門改革を revolusi pengamanan(警備の革命)としていました。
Q5なぜ今、撤収が相次ぐの?——同意の撤回、安保理の対立、お金

PKO は、受け入れ国の同意があって初めて成り立ちます。逆に言えば、受け入れ国が同意を取り消せば、とどまれません。西アフリカのマリでは2023年6月、政府が PKO(MINUSMA)に「遅滞なく」撤収するよう求め、安保理は6月30日に任務の終了を決めました。部隊は、その年の12月末までに引き揚げています。コンゴ民主共和国でも、政府の求めで PKO(MONUSCO)が段階的に縮小し、2024年4月には東部の南キブ州から撤収しました。

安保理の中の対立も、PKO を揺さぶっています。常任理事国どうしの意見が割れると、新しい任務をつくることも、今の任務を続けることも難しくなります。そのうえ、お金の問題があります。PKO の予算は年に約54億ドル(2025〜26年度)。加盟国の分担金の未払いが重なり、国連は2025年10月、要員を約4分の1(1万3000〜1万4000人)減らすと決めました。2026年5月の時点で、活動中の PKO は11です(図6)。

UNIFIL(国連レバノン暫定軍)は、1978年3月、イスラエル軍がレバノン南部に侵攻したのを受けて、安保理がつくった PKO です。「暫定」の名のとおり、当初は短い任務のはずでした。2006年、イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが戦ったあと、安保理決議1701で最大1万5000人まで拡大され、レバノン軍と協力して南部を見守ってきました。

2025年8月28日、安保理は全会一致で決議2790を採択し、UNIFIL の任務を「最後の延長」として2026年12月31日までとしました。その後1年以内に撤収します。記事の第8文の「昨年…2026年末で終了させることを決めた」は、この決議のことです。終了を強く求めたのは米国で、レバノン政府は延長を望んでいました。受け入れ国が同意を取り消したのではなく、安保理の中の力関係で決まった撤収です(第7文の「安保理内の対立」)。

2026年3月から4月にかけて、レバノン南部ではインドネシアの要員が相次いで攻撃に巻き込まれ、4人が死亡、7人が負傷しました。UNIFIL の初期調査は、3月29日の攻撃をイスラエル軍の戦車の砲弾によるものとしています。インドネシアの国会では派遣の見直しを求める声が上がりましたが、5月には交代の部隊が送られました。事務総長は6月、撤収後も国連が関わり続けるための案を安保理に示し、10月の時点でも議論が続いています。撤収したあとの空白をどう埋めるか——第10文の「撤収後の空白を見据え」は、この問題です(図7)。

撤収を迫られた3つの PKO——理由はそれぞれ
上は、撤収を迫られた主な PKO と、その理由。下は、2026年の PKO 全体の規模とお金です。
1MINUSMA(マリ)受け入れ国が同意を撤回
2013〜2023年
  • 2023年6月16日、マリ政府が「遅滞なく」撤収するよう要求
  • 6月30日、安保理が任務の終了を決定(決議2690)
  • 12月末までに撤収
2MONUSCO(コンゴ民主共和国)受け入れ国の求め
2010年〜
  • 政府の求めで、段階的に縮小
  • 2024年4月30日、東部の南キブ州から撤収
  • 任務は2026年12月まで延長
3UNIFIL(レバノン)安保理の決定
1978年〜
  • 2025年8月28日、決議2790で「最後の延長」
  • 2026年12月31日に任務終了、その後1年以内に撤収
  • レバノン政府は、延長を望んでいた
第7文の「受け入れ国による同意の撤回」は左の2つ、「安全保障理事会内の対立」は右の UNIFIL にあたります
活動中の PKO112026年5月
PKO の予算約54億ドル2025〜26年度。分担金の未払いが重なっている
要員の削減約4分の12025年10月に決定。1万3000〜1万4000人
図6:同じ「撤収」でも、理由は受け入れ国の側にある場合と、安保理の側にある場合があります。第7文は、その両方を並べています。
UNIFIL(国連レバノン暫定軍)の48年
1978年に「暫定」の部隊として生まれ、48年続いた PKO です。インドネシアは、いま最も多くの要員を送っています。
1978年3月イスラエル軍がレバノン南部に侵攻 → 安保理が UNIFIL をつくる決議425・426(3月19日)。最初の部隊は3月23日に到着。「暫定」の名のとおり、短い任務のはずだった
2006年8月決議1701で、最大1万5000人にイスラエルとヒズボラの34日間の戦闘のあと。レバノン軍と協力して、南部の境界線一帯を見守る
2025年8月28日決議2790「最後の延長」全会一致。任務は2026年12月31日まで(第8文の「昨年」)
2026年3〜4月インドネシアの要員4人が死亡、7人が負傷国会で、派遣の見直しを求める声(第9文)
2026年5月交代の部隊、約740人を派遣見直しの声の中でも、派遣は続いた
2026年12月31日任務が終わるその後1年以内に撤収。「撤収後の空白」をどう埋めるか(第10文)
図7:第8文の「昨年」は2025年。決議2790は、任務を「最後に」延長したうえで、2026年末で終わらせると決めました。訳例は「終了させる」が抜けて、「UNFIL の任務を決めた」になっていました。
Q6「自由かつ能動的な外交」って?——インドネシアの bebas aktif

インドネシア外交の基本方針は、politik luar negeri bebas aktif です。日本語では「自主積極外交」や、記事のように「自由かつ能動的な外交」と訳されます。

原点は、独立戦争のさなかの1948年9月2日。モハマッド・ハッタ副大統領が、ジョクジャカルタで行った演説「2つの暗礁の間を漕ぐ」(Mendayung antara Dua Karang)です。米国とソ連の2つの陣営のどちらにも付かず(bebas=自由)、それでいて世界の平和に自分から関わる(aktif=能動的)。冷戦の中で、インドネシアは1955年にアジア・アフリカ会議を開き、1961年には非同盟運動の立ち上げにも加わりました。

1945年憲法の前文は、国の目的の1つとして「自由、永久の平和、社会正義に基づく世界の秩序の実現に参加する」ことを掲げています。PKO への派遣は、この前文と bebas aktif を形にするものとして、外交の柱とされてきました。

インドネシアが最も多くの要員を出している UNIFIL がなくなれば、どこで、どんな形で平和に関わるのかを考え直すことになります。第9文の「平和貢献の在り方を問い直す機会」、第10文の「派遣国の側にも新たな関与の形が求められている」は、このことです(図8)。

politik luar negeri bebas aktif——2つの語と、その原点
記事の第9文の「自由かつ能動的な外交」は、インドネシア外交の基本方針の名前です。日本語では「自主積極外交」とも訳されます。

Mendayung antara Dua Karang(2つの暗礁の間を漕ぐ)

1948年9月2日、ハッタ副大統領がジョクジャカルタで行った演説の題。米ソどちらの陣営にも付かない、という方針の原点
bebas自由・自主どの陣営や軍事同盟にも属さず、自分で判断する例:非同盟運動の立ち上げ(1961年)
aktif能動的・積極的世界の平和と秩序づくりに、自分から関わる例:アジア・アフリカ会議(1955年)、PKO への派遣(1957年〜)、安保理の非常任理事国(4回)

… ikut melaksanakan ketertiban dunia yang berdasarkan kemerdekaan, perdamaian abadi dan keadilan sosial …

1945年憲法の前文。「自由、永久の平和、社会正義に基づく世界の秩序の実現に参加する」ことを、国の目的の1つに掲げる
図8:第9文の「自由かつ能動的な外交」は、politik luar negeri bebas aktif という決まった名前です。diplomasi bebas aktif でも意味は通じますが、方針の名前としては politik luar negeri と組みます。
背景の出典
国連 PKO:Mandates and the legal basis for peacekeeping(憲章に明記がない)
国連 PKO:Principles of peacekeeping(3原則)
国連 PKO:Our history(最初の武装した PKO、1989〜94年の20の新しい PKO)
国連:60 years of United Nations Peacekeeping(「6章半」)
国連 PKO:UNEF I の背景
国連 PKO:UNEF I の任務
米国務省 歴史家室:The Suez Crisis, 1956
国連ダグ・ハマーショルド図書館:ハマーショルド事務総長
ノーベル賞:レスター・ピアソン(1957年平和賞)
Kompas(2022年4月12日)Kontingen Garuda, Pasukan Perdamaian Indonesia
GNFI(2026年3月1日)Kontingen Garuda I, misi perdamaian pertama Indonesia bersama UNEF di Mesir 1957
国連 PKO:Troop and police contributors(2026年2月末の要員数)
UNIFIL:Troop-contributing countries(2026年9月)
UNIFIL:Background
国連プレスリリース(2025年8月28日)決議2790の採択
安保理決議2790(2025年)
国連プレスリリース(2023年6月30日)MINUSMA の任務終了
UN News(2025年10月)PKO の要員を約4分の1削減
国連 PKO:Where we operate(活動中の PKO)
国連事務総長メッセージ(2026年)ルワンダのジェノサイド
安保理決議1270(1999年)シエラレオネ
国連デジタル図書館:ブラヒミ報告(A/55/305–S/2000/809)
大統領令2015年第86号(平和維持ミッションの派遣)
hukumonline:平和維持要員の保護の法的根拠(3原則のインドネシア語)
UNIFIL:インドネシア要員が死亡した攻撃についての発表
The New Arab:インドネシア、要員の死亡で国連に調査を要求
The Jakarta Post(2026年4月6日)国軍、要員の削減を検討
Antara(2026年5月)700人を超える国軍要員を UNIFIL へ
Antara(2024年10月18日)UNIFIL の歩み
The Jakarta Post(2026年8月22日)bebas aktif に中身を
STEP 1原文を読んで、インドネシア語に訳す

目安は35分(辞書なし)。見出しも訳します。番号は、あとの添削と対応しています。

Terjemahkan artikel berikut ke dalam bahasa Indonesia.
国連平和維持活動はどこへ向かうのか

1国連平和維持活動(PKO)は、国連憲章に明文の規定があるわけではなく、紛争の平和的解決と強制措置の中間に位置する活動として、慣行の積み重ねの中で形づくられてきた。2本格的な部隊が初めて編成されたのは1956年のスエズ危機の際で、当時のハマーショルド事務総長の下、停戦の監視と兵力の引き離しを担った。3インドネシアも翌年には初のガルーダ部隊を送り出しており、その歩みはPKOの歴史そのものとほぼ重なる。

4伝統的なPKOは、紛争当事者の同意、不偏性、自衛と任務の防衛以外の武力不行使という原則に支えられてきた。5しかし冷戦後、内戦への関与が増えるに伴い、停戦監視のみならず、文民の保護や選挙支援、治安部門改革に至るまで任務は膨らんだ。6守るべき和平そのものが存在しない現場では、要員は中立を保ちつつ住民を守るという矛盾に直面せざるを得ない。

7近年は、受け入れ国による同意の撤回や安全保障理事会内の対立を背景に、撤収を迫られる例が相次いでいる。8安保理は昨年、レバノンに展開する国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の任務を2026年末で終了させることを決めた。9同部隊に多くの要員を送ってきたインドネシアにとって、それは自由かつ能動的な外交の柱とされてきた平和貢献の在り方を問い直す機会ともなる。10撤収後の空白を見据え、派遣国の側にも新たな関与の形が求められている。

Disadur dari berbagai sumber
STEP 2訳例に、赤ペンをまとめて入れる

この記事を訳した例に、赤ペンをまとめて入れました。目安は38点/100。terpaksa(〜せざるを得ない)、sambil(〜しつつ)、mulai dari … hingga(〜から〜に至るまで)、pun(〜も)は正しく使えていて、第6文は骨組みをそのまま使えます。崩れたのは、国連の機関・役職・原則の定訳と、文の核になる動詞です。まずは全体を眺めて、どんな間違いが多いかを見てください。

波線=直すところ∧=訳が抜けているところ①=下の一覧の番号(文ごと)
訳例(添削前)
Aktifitas Keamanan① PBB Menuju Kemana②∧③

1Aktifitas Keamanan① PBB(PKO)②∧③ dibentuk④ dalam rentetan praktik diposisikan⑤ sebagai aiktifitas⑥ antara perantara⑦ penyelesaian konflik secara dalam⑧ dan tindakan paksa⑨. 2Satuan sesungguhnya① disusun② untuk pertama kalinya ketika krisis③ Suez pada 1956 dan satuan④ tersebut dialih terima⑤ pengawasan pemberhentian konflik⑥ dan pemisahan dari tentara⑦ di bawah direktorat jenderal⑧ Hamashord⑨ pada masa tersebut. 3Indonesia juga mengirimkan satuan Garuda① untuk pertama kalinya pada tahun berikutnya dan langkah tersebut② nyaris sama③ dengan sejalah④ PKO⑤ sendiri.

4PKO① tradisional ditopang prinsip dari② persetujuan antara pelaku konflik③, kestabilan④, tidak berbuat aksi tentara⑤ kecuali tugas dan pertahanan⑥ .⑦ 5Namun∧① pasca perang dingin②, ∧③semakin banyaknya ∧④perang saudara, tugas PKO⑤ semakin membengkak mulai dari pengawasan pembekuan perang⑥, perlindungan silpl⑦ dan pembantuan pemilihan⑧, hingga revolusi pengamanan⑨. 6Di lapangan yang① tidak terdapat② perdamaian yang harus dilindungi∧③, personel PKO④ terpaksa menghadapi kontrodiksi⑤∧⑥ melindungi warga sambil menjaga posisi netral.

7Belakangan ini, dengan melatarbelakangi① pencabutan persetujuan dari negara menerima② dan konflik③ dalam komisi keamanan④ PBB, kasus ∧⑤didesak penarikan⑥ terjadi berturut-turut. 8Komisi keamanan① PBB tahun lalu memutuskan ∧②tugas UNFIL③ yang menggelar④ di Lebanon ∧⑤pada akhir 2026. 9Bagi Indonesia yang selama ini mengirim banyak personel ke keamanan PBB①, keputusan itu ∧②dapat menjadi momen untuk mempersoalkan③ keberadaan④ kontribusi keamanan⑤ yang dianggap tiang⑥ diplomasi⑦ bebas aktif. 10Membayangkan① kekosongan setelah penarikan, pihak pengirim personel② pun didesak keterlibatan③ dalam bentuk baru.

赤ペン一覧(69か所)

それぞれ、訳例の語と何がいけないかを示し、右に直しを書いています。くわしい理由は、STEP 3 で1文ずつ説明します。

訳例の語と、何がいけないか直し
見出し赤ペン3か所
①
Aktifitas Keamanankeamanan=安全・治安。PKO は「平和を維持する作戦」
Operasi Pemeliharaan Perdamaian
②
Menuju Kemanakemana は2語(ke mana)。疑問の語は前に
Ke Mana Arah …
③
∧ 訳が抜けている疑問の見出しなのに ? がない
?
1第1文赤ペン9か所
①
Aktifitas Keamanan見出しと同じ。「治安活動」になる
Operasi pemeliharaan perdamaian
②
(PKO)日本の略語。括弧も全角と半角が混ざる
(削る)
③
∧ 訳が抜けている「国連憲章に明文の規定があるわけではなく」がない
sebenarnya tidak diatur secara tegas dalam Piagam PBB.
④
dibentuk「(だれかが)つくった」。自然に形づくられた
terbentuk
⑤
diposisikan受け身の動詞が2つ、つながらずに並ぶ
(削る), sebagai … yang berada
⑥
aiktifitas誤字
aktivitas
⑦
perantara「仲介者」。原文にない語
(削る)
⑧
dalamsecara dalam=深く。damai の誤字
damai
⑨
paksa強制措置の訳語ではない
pemaksaan
2第2文赤ペン9か所
①
Satuan sesungguhnyasatuan=単位。「本格的な部隊」は
Pasukan dalam arti sesungguhnya
②
disusunsusun=並べる・組み立てる。部隊は「編成する」
dibentuk
③
krisis事件の名前は大文字で
Krisis
④
satuan部隊=pasukan(①と同じ)
pasukan
⑤
dialih terimaこの形の語はない。「担った」は
bertugas melakukan
⑥
pemberhentian konflik停戦の決まった言い方ではない
gencatan senjata
⑦
dari tentara「軍から切り離す」になる
pasukan yang bertikai
⑧
direktorat jenderal省の「総局」。事務総長は
Sekretaris Jenderal PBB
⑨
Hamashord人名の綴り
Dag Hammarskjöld
3第3文赤ペン5か所
①
satuan Garuda部隊の決まった呼び名がある
Kontingen Garuda
②
langkah tersebutlangkah=一歩・措置。「歩み」は
perjalanannya
③
sama「同じ」。「重なる」は
sejalan
④
sejalah誤字
sejarah
⑤
PKO略さずに
operasi pemeliharaan perdamaian PBB
4第4文赤ペン7か所
①
PKO略さずに
Operasi pemeliharaan perdamaian
②
prinsip daridari は不要。動作主は oleh で
oleh prinsip
③
antara pelaku konflik「当事者どうしの合意」になる
para pihak yang bertikai
④
kestabilan「安定」。不偏性は
ketidakberpihakan
⑤
tidak berbuat aksi tentara武力不行使の言い方ではない
dan tanpa penggunaan kekuatan bersenjata
⑥
tugas dan pertahanan「任務と防衛」。自衛と任務の防衛は
untuk membela diri dan mempertahankan mandat
⑦
␣.ピリオドの前の空白
.
5第5文赤ペン9か所
①
∧ 訳が抜けているNamun のあとのコンマ
,
②
pasca perang dingin事件名は大文字。大文字の語の前の pasca はハイフンで
pasca-Perang Dingin
③
∧ 訳が抜けている「〜に伴い」がない
seiring
④
∧ 訳が抜けている「関与」がない。内戦の数の話ではない
keterlibatan dalam
⑤
tugas PKO前の文を受けて -nya で
tugasnya
⑥
pembekuan perang「戦争の凍結」。停戦は
gencatan senjata
⑦
silpl誤字。文民は
warga sipil
⑧
pembantuan pemilihan行政用語の pembantuan と「選出」
bantuan pemilu
⑨
revolusi pengamanan「警備の革命」。治安部門改革は
reformasi sektor keamanan
6第6文赤ペン6か所
①
yang「現場では」は副詞の句。yang でつなぐと「広場」寄りに
, ketika
②
tidak terdapat場所を yang で受ける形はとれない
(削る)… tidak ada
③
∧ 訳が抜けている「そのもの」がない
itu sendiri
④
PKO要員は「平和維持要員」
penjaga perdamaian
⑤
kontrodiksi誤字
kontradiksi
⑥
∧ 訳が抜けている矛盾の中身の前の区切り
, yakni
7第7文赤ペン6か所
①
melatarbelakangi「〜の背景となる」で向きが逆
latar belakang
②
negara menerima受け入れ国の決まった言い方がある
negara tuan rumah
③
konflik武力衝突にも読める。理事国の対立は
perpecahan
④
komisi keamanan「安全委員会」。安保理は
Dewan Keamanan
⑤
∧ 訳が抜けているdidesak の主語がない
misi yang
⑥
penarikandidesak のあとに名詞は置けない
untuk ditarik
8第8文赤ペン5か所
①
Komisi keamanan安保理の決まった訳
Dewan Keamanan
②
∧ 訳が抜けている決めた中身を文で示す bahwa がない
bahwa
③
UNFIL綴り違い。正式名もない
Pasukan Sementara PBB di Lebanon (UNIFIL)
④
menggelar目的語が要る他動詞。「展開する」は
ditempatkan
⑤
∧ 訳が抜けている「終了させる」がない
akan diakhiri
9第9文赤ペン7か所
①
keamanan PBB「国連の安全」。同部隊は
pasukan tersebut
②
∧ 訳が抜けている「〜ともなる」の「も」
juga
③
mempersoalkan「問題にする・異を唱える」
meninjau kembali
④
keberadaan「存在」。在り方は
bentuk
⑤
keamanan平和貢献の「平和」は
perdamaian
⑥
tiang物としての柱
pilar
⑦
diplomasi方針の名前は
politik luar negeri
10第10文赤ペン3か所
①
Membayangkan「想像する」。見据えるは
Untuk mengantisipasi
②
pihak pengirim personel派遣国の決まった言い方がある
negara pengirim
③
didesak keterlibatan迫られる。後ろに名詞は置けない
dituntut untuk terlibat
38点の内訳——定訳を知らずに組み立てた語と、抜けた文の核
話の流れ(PKO の成り立ち → スエズ → ガルーダ部隊 → 原則 → 冷戦後 → 撤収 → UNIFIL → インドネシア)はつかめています。点を落としたのは、国連の機関や原則の名前と、文の中心になる動詞です。
正確さ「明文の規定があるわけではなく」(第1文)と「終了させる」(第8文)が丸ごと抜けた/平和(perdamaian)を keamanan(安全)に(見出し・第1・9文)/不偏性を kestabilan(安定)、自衛と任務の防衛を tugas dan pertahanan に(第4文)/〜を背景にの向きが逆(第7文)/「関与」の抜け(第5文)
19/50
自然さ文として成り立たない形(dialih terima・kasus didesak penarikan・memutuskan tugas・didesak keterlibatan)/受け身の動詞を2つ並べた第1文/lapangan yang tidak terdapat(第6文)
12/30
語彙・表記誤字(aiktifitas・secara dalam・sejalah・silpl・kontrodiksi・UNFIL・Hamashord)/Krisis Suez・Perang Dingin の大文字/kemana・全角の括弧・ピリオド前の空白
7/20
良い点:terpaksa(〜せざるを得ない)、sambil(〜しつつ)、mulai dari … hingga(〜から〜に至るまで)、pun(〜も)、Bagi Indonesia(〜にとって)、dianggap(〜とされる)、ditopang(支えられる)は正しく使えている。第6文は骨組みをそのまま使える
図9:失点の半分近くは正確さです。ただ、その多くは定訳を知っていれば防げる誤りなので、覚えた分だけ確実に取り返せる失点でもあります。
大きく削られた3つの型

①機関・役職・原則の名前を、字面で組み立てた——PKO を Aktifitas Keamanan(治安活動)、安保理を komisi keamanan(安全委員会)、事務総長を direktorat jenderal(総局)、不偏性を kestabilan(安定)、治安部門改革を revolusi pengamanan(警備の革命)。国際機関の記事は、定訳を知っているかどうかで大きく差がつきます(図11・12)。

②文の核が抜けた——「明文の規定があるわけではなく」(第1文)、「関与」と「〜に伴い」(第5文)、「終了させる」(第8文)。PKO の出発点や、安保理が決めた中身が消えています。

③動詞のあとの形が崩れた——dialih terima(第2文)、kasus didesak penarikan(第7文)、memutuskan tugas(第8文)、didesak keterlibatan(第10文)。動詞のあとに bahwa・untuk+動詞・名詞のどれが来るかを確かめます(図16)。

perdamaian(平和)と keamanan(安全)——取り違えた4か所
国連の目的の1文には、2つの語が並んで出てきます。訳例は、見出し・第1文・第9文(2か所)で、平和を keamanan にしていました。
perdamaian平和(damai=平和な)
damai平和な
perdamaian平和
pemeliharaan perdamaian平和維持
penjaga perdamaian平和維持要員
kontribusi perdamaian平和貢献
keamanan安全・治安(aman=安全な)
aman安全な
keamanan安全・治安
Dewan Keamanan安全保障理事会
sektor keamanan治安部門
pengamanan警備
memelihara perdamaian dan keamanan internasional国連の目的「国際の平和と安全の維持」(国連憲章第1条)
訳例で取り違えたところ(左が直し、右が訳例)
Operasi Pemeliharaan Perdamaian平和維持活動(見出し・第1文)
Aktifitas Keamanan治安活動
kontribusi perdamaian平和貢献(第9文)
kontribusi keamanan安全への貢献
pasukan tersebut同部隊=UNIFIL(第9文)
keamanan PBB国連の安全
図10:perdamaian は damai(平和な)から、keamanan は aman(安全な)から。国連の文章では2つが並んで出てくるので、1語ずつ確かめます。
国際機関・役職・部隊の名前——定訳が要る8語
漢字を1字ずつインドネシア語に置き換えると、別の機関や別の役職ができあがります。名前は組み立てずに、決まった訳を使います。
日本語訳例定訳
国連平和維持活動(PKO)見出し・第1文
Aktifitas Keamanan PBB治安活動
operasi pemeliharaan perdamaian PBB法令では misi pemeliharaan perdamaian
安全保障理事会(安保理)第7・8文
komisi keamanan PBB安全委員会
Dewan Keamanan PBB略して DK PBB
事務総長第2文
direktorat jenderal省の中の「総局」
Sekretaris Jenderal略して Sekjen
国連憲章第1文
(訳抜け)「明文の規定」ごと抜けた
Piagam PBBpiagam=憲章
国連レバノン暫定軍第8文
UNFIL綴り違い・正式名なし
Pasukan Sementara PBB di Lebanon (UNIFIL)sementara=暫定の
ガルーダ部隊第3文
satuan Garuda「ガルーダ単位」
Kontingen Garuda略して Konga
受け入れ国第7文
negara menerima「国が受け取る」という文
negara tuan rumahホスト国
自由かつ能動的な外交第9文
diplomasi bebas aktif方針の名前とは違う
politik luar negeri bebas aktif方針の名前
図11:機関や役職の名前は、漢字を見て組み立てると、まず外れます。訳す前に名前に印をつけておき、知っている定訳を思い出します。
PKO の用語——3原則と、膨らんだ任務の定訳
第1・2・4・5文には、PKO の歴史と原則の用語が並んでいます。どれも、国連やインドネシアの法令で使われる決まった訳があります。
日本語訳例定訳
停戦(の監視)第2・5文
pemberhentian konflik/pembekuan perang紛争の停止/戦争の凍結
gencatan senjatasenjata=武器
兵力の引き離し第2文
pemisahan dari tentara軍から切り離す
pemisahan pasukan yang bertikai争う部隊どうしを離す
強制措置第1文
tindakan paksa無理やりの行為
tindakan pemaksaan憲章第7章
紛争当事者の同意第4文
persetujuan antara pelaku konflik当事者どうしの合意
persetujuan para pihak yang bertikaiPKO を受け入れる同意
不偏性第4文
kestabilan安定
ketidakberpihakan (imparsialitas)中立(netral)とは別
自衛と任務の防衛第4文
tugas dan pertahanan任務と防衛
membela diri dan mempertahankan mandatmandat=安保理の任務
文民の保護/選挙支援第5文
perlindungan silpl/pembantuan pemilihan誤字/行政用語
perlindungan warga sipil/bantuan pemilupemilu=pemilihan umum
治安部門改革第5文
revolusi pengamanan警備の革命
reformasi sektor keamanan軍・警察・司法の改革
図12:PKO の3原則は、インドネシアの大統領令(2015年第86号)にも同じ言い方で書かれています。原則の名前は、ひとまとまりで覚えます。
この文章の「わな」——訳しにくい表現は、どこで取れたか
日本語の言い回しや、定訳の要る語のうち、訳し方に注意が要るものを並べました。◯=取れた、△=惜しい、✕=崩れた。1行に2つあるときは、表現の並びと同じ順です。
◯ 取れた 5△ 惜しい 2✕ 崩れた 12
表現文結果正しい形・コメント
〜わけではなく第1文✕丸ごと抜けた → sebenarnya tidak diatur secara tegas
平和的解決/強制措置第1文✕△secara dalam は誤字 → damai/tindakan paksa → pemaksaan
停戦の監視/兵力の引き離し第2文✕✕gencatan senjata/pemisahan pasukan yang bertikai
人物・部隊・機関の名前第2・3・7・8文✕Hammarskjöld・Sekretaris Jenderal・Kontingen Garuda・Dewan Keamanan・UNIFIL
〜そのもの(2回)第3・6文◯✕第3文の sendiri は◯。第6文は抜けた → itu sendiri
PKO の3原則第4文✕persetujuan para pihak yang bertikai・ketidakberpihakan・tanpa penggunaan kekuatan bersenjata …
〜に伴い/〜のみならず〜に至るまで第5文✕◯seiring が抜けた。範囲は mulai dari … hingga で◯
〜ざるを得ない/〜しつつ第6文◯◯terpaksa/sambil
〜を背景に第7文✕dengan latar belakang(melatarbelakangi は向きが逆)
〜を終了させる第8文✕動詞が抜けた → akan diakhiri
〜とされてきた/柱第9文◯✕dianggap は◯。柱は pilar(tiang は物の柱)
〜を見据え/〜が求められている第10文△✕membayangkan → untuk mengantisipasi/dituntut(untuk)+動詞
図13:言い回しのわな(〜ざるを得ない・〜しつつ)は取れていて、崩れたのは定訳と、文の核になる動詞(終了させる・求められる)でした。
STEP 31文ずつ、訳し直す

ここからは見出しと10の文を1つずつ、原文 → 訳例(添削前)→ 修正案 → ここが良い → 直すところの順に並べています。赤い丸数字は、STEP 2 の一覧と同じ番号(文ごと)です。修正案のマーカーは、赤ペンを受けて書き換えた箇所です。

見出し赤ペン3か所
原文
国連平和維持活動はどこへ向かうのか
訳例(添削前)
Aktifitas Keamanan① PBB Menuju Kemana②∧③
修正案
Ke Mana Arah Operasi Pemeliharaan Perdamaian PBB?
ここが良い
「どこへ向かうのか」を、問いかけの形のまま訳そうとした方向は正しい判断です。PBB(国連)を名詞のあとに置く語順も合っています。
直すところ
①PKO は operasi pemeliharaan perdamaian(平和を維持する作戦)。keamanan は「安全・治安」で、「平和」は perdamaian です。Aktifitas Keamanan PBB だと「国連の治安活動」になり、別の活動を指してしまいます。aktifitas は綴りも違い、正しくは aktivitas(v)。国連の活動には operasi(作戦)か misi(ミッション)を使い、インドネシアの大統領令(2015年第86号)の題名も Pengiriman Misi Pemeliharaan Perdamaian(平和維持ミッションの派遣)です(図10・11)。
②kemana は ke mana と2語に分けて書きます。そのうえで、疑問の語を前に出して Ke Mana Arah …?(…の行き先はどこか)とすると、見出しらしく締まります。
③疑問の見出しには ? を付けます。原文の「〜のか」は問いかけです。? がないと、「どこかへ向かう国連の活動」という名詞のかたまりにも読めます。
ほかに:… Menuju ke Mana?(…はどこへ向かう?)の形でも見出しになります。
第1文赤ペン9か所
原文
国連平和維持活動(PKO)は、国連憲章に明文の規定があるわけではなく、紛争の平和的解決と強制措置の中間に位置する活動として、慣行の積み重ねの中で形づくられてきた。
訳例(添削前)
Aktifitas Keamanan① PBB(PKO)②∧③ dibentuk④ dalam rentetan praktik diposisikan⑤ sebagai aiktifitas⑥ antara perantara⑦ penyelesaian konflik secara dalam⑧ dan tindakan paksa⑨.
修正案
Operasi pemeliharaan perdamaian PBB sebenarnya tidak diatur secara tegas dalam Piagam PBB. Operasi ini terbentuk dalam rentetan praktik, sebagai aktivitas yang berada di antara penyelesaian konflik secara damai dan tindakan pemaksaan.
ここが良い
「慣行の積み重ね」を rentetan praktik(慣行の連なり)、「〜として」を sebagai と訳し、「平和的解決と強制措置」の2つを dan で並べた骨組みは、原文に沿っています。penyelesaian konflik(紛争の解決)も使える訳語です。
直すところ
①見出しと同じく、PKO は operasi pemeliharaan perdamaian。keamanan(安全・治安)だと、平和維持ではなく「治安活動」になります。
②PKO は日本で広く使う略語で、インドネシアの報道ではまず見かけません。略さずに書けば足ります。括弧も、開きが全角「(」、閉じが半角「)」で、そろっていません。インドネシア語の文では、半角の ( ) を使います。
③「国連憲章に明文の規定があるわけではなく」が丸ごと抜けています。PKO の出発点にかかわる、この文でいちばん大事な情報です(Q1)。sebenarnya tidak diatur secara tegas dalam Piagam PBB(実は、国連憲章にははっきり定められていない)。「〜わけではない」の含みは、sebenarnya(実は)で出せます。長い文なので、ここで1度切って2文にすると読みやすくなります(図14)。
④dibentuk は「(だれかが)つくった」。原文の「慣行の積み重ねの中で形づくられてきた」は、だれかが設計したのではなく、実際の運用を重ねるうちにできあがった、という意味です。接頭辞 ter- の terbentuk(できあがった・形成された)が合います。
⑤dibentuk … diposisikan と、受け身の動詞が2つ、つなぎの語なしで並んでいます。「〜として」は sebagai だけで表せるので、diposisikan は要りません。「中間に位置する活動として」は sebagai aktivitas yang berada di antara A dan B(A と B の間にある活動として)。
⑥aiktifitas は誤字です。綴りは aktivitas(f ではなく v)。見出しの Aktifitas も同じです。
⑦perantara(仲介者)は、原文にない語です。antara perantara で「仲介者の間の」と読めてしまいます。「中間」は di antara(〜の間に)で足ります。
⑧secara dalam(深く)ではなく secara damai(平和的に)。d-a-l-a-m と d-a-m-a-i、1字違いで意味が変わります。「紛争の平和的解決」は、国連憲章第6章の名前でもあります(図1)。
⑨強制措置は tindakan pemaksaan。tindakan paksa でも通じなくはありませんが、「無理やりの行為」に近く聞こえます。国連憲章第7章の「強制措置」の訳語としてよく使われるのは、pemaksaan(強制すること)のほうです。
ほかに:「積み重ね」をはっきり出すなら、akumulasi praktik(慣行の蓄積)も使えます。rentetan は「立て続けの連なり」(rentetan peristiwa=一連の出来事)で、ここでは許容範囲です。
長い1文は、2文に分けてよい——第1文の3つの情報
日本語の「〜ではなく、〜として、〜てきた」は、インドネシア語の1文に詰め込むと崩れやすい形です。
第1文 国連平和維持活動(PKO)は、国連憲章に明文の規定があるわけではなく、紛争の平和的解決と強制措置の中間に位置する活動として、慣行の積み重ねの中で形づくられてきた。
1文目① 憲章に明文の規定があるわけではなくOperasi pemeliharaan perdamaian PBB sebenarnya tidak diatur secara tegas dalam Piagam PBB.
2文目③ 慣行の積み重ねの中で形づくられてきたOperasi ini terbentuk dalam rentetan praktik,+② 中間に位置する活動としてsebagai aktivitas yang berada di antara …
◯ 修正案:①のあとで文を切り、2文目を Operasi ini(この活動は)で始めて、③と②をまとめる。「〜わけではなく」の含みは sebenarnya(実は)で出す
✕ 訳例:①が丸ごと抜け、残りの②と③を dibentuk … diposisikan と、受け身の動詞2つで1文に詰め込んだ
図14:原文の1文に、情報が3つ入っています。①で1度文を切り、③と②を Operasi ini … でまとめると、読みやすくなります。
第2文赤ペン9か所
原文
本格的な部隊が初めて編成されたのは1956年のスエズ危機の際で、当時のハマーショルド事務総長の下、停戦の監視と兵力の引き離しを担った。
訳例(添削前)
Satuan sesungguhnya① disusun② untuk pertama kalinya ketika krisis③ Suez pada 1956 dan satuan④ tersebut dialih terima⑤ pengawasan pemberhentian konflik⑥ dan pemisahan dari tentara⑦ di bawah direktorat jenderal⑧ Hamashord⑨ pada masa tersebut.
修正案
Pasukan dalam arti sesungguhnya dibentuk untuk pertama kalinya ketika Krisis Suez pada 1956 dan pasukan tersebut bertugas melakukan pengawasan gencatan senjata dan pemisahan pasukan yang bertikai di bawah Sekretaris Jenderal PBB Dag Hammarskjöld pada masa tersebut.
ここが良い
untuk pertama kalinya(初めて)、pada 1956(1956年に)、di bawah …(〜の下で)の組み立ては正確です。前半と後半を dan … tersebut でつないだ骨組みも、そのまま使えます。
直すところ
①国連が送り込む「部隊」は pasukan。satuan は「単位」(satuan ukuran=計量の単位)で、軍の部隊の単位(satuan tugas=任務部隊)にも使いますが、平和維持の部隊は pasukan penjaga perdamaian のように pasukan で表すのがふつうです。「本格的な」は dalam arti sesungguhnya(本当の意味での)。この記事の「本格的」は、それまでの丸腰の監視団と違って、武器を持った部隊だったという意味です(Q2・図2)。
②部隊を「編成する」は membentuk、受け身で dibentuk。susun は「並べる・組み立てる」で、名簿や書類を作るとき(menyusun daftar=名簿を作る)に使います。
③Krisis Suez(スエズ危機)は事件の名前なので、大文字で始めます。Perang Dingin(冷戦)、Perang Dunia(世界大戦)も同じです。
④①と同じく、部隊は pasukan。同じ語をくり返すときも、そろえて直します。
⑤dialih terima という語はありません。alih(移す)と terima(受け取る)を組み合わせた形ですが、「〜を担った」の意味にはなりません。担う=bertugas(任務とする)や mengemban tugas(任務を負う)。
⑥停戦=gencatan senjata。gencat(止める)+senjata(武器)で、「撃ち方やめ」の状態のことです。pemberhentian konflik(紛争の停止)は、決まった言い方ではありません。
⑦兵力の引き離し=pemisahan pasukan(yang bertikai)。dari を入れると「軍から切り離すこと」になり、だれとだれを離すのかが消えます。UNEF の場合は、エジプト軍とイスラエル軍の間に立つことでした(Q2)。
⑧事務総長=Sekretaris Jenderal(略して Sekjen)。direktorat jenderal(略して Ditjen)は、インドネシアの省の中の「総局」です。たとえば Ditjen Pajak は財務省の税務総局。国連のトップが、省の一部局になってしまいます(図11)。
⑨人名は Dag Hammarskjöld(ダグ・ハマーショルド)。スウェーデン出身の第2代事務総長です(Q2)。カタカナから綴りを起こさず、原語の綴りを確かめます。ö は o で代用されることもあります。
ほかに:ketika Krisis Suez … は saat Krisis Suez 1956(1956年のスエズ危機の際)とも書けます。pada masa tersebut は saat itu(当時)でも。
ここから先は会員限定です

第3〜10文の添削と、模範訳(全文)をまとめて収録しています。あわせて収録しているのは次の内容です。

  • 「ガルーダ部隊」と「PKO の歴史そのもの」——第3文
  • 「不偏性」が「安定」に——3原則の定訳(第4文)
  • 「治安部門改革」が「警備の革命」に——抜けた「関与」と「〜に伴い」(第5文)
  • 「和平そのもの」と「矛盾」——骨組みはそのまま使える第6文
  • 「〜を背景に」の向き——melatarbelakangi(第7文・図15)
  • 「終了させる」が抜けた第8文と、「柱」「在り方」の第9文
  • 「迫られる」と「求められる」——動詞のあとの形(第10文・図16)
  • 表記の見直し14と、見直しの5分(図17)
  • 模範訳(全文)、重要語彙17、背景メモ、次に狙う3点
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