KUHAP は「刑法」ではない——制度の語を1つ取り違えると、法案が遅れた理由が別の話になる|資産没収法案をめぐる報道
犯罪で得たとみられる財産を、有罪判決を待たずに国が没収できるようにする——インドネシア国会が、2008年から構想されてきた資産没収法案(RUU Perampasan Aset)の審議を急いでいます。記事は「なぜ急ぐのか」と「なぜ危ういのか」を、4段落で並べた作りです。
この記事を支えているのは、制度の語と論理の語です。KUHAP を「刑法」と読むと、法案が後回しにされた理由が別の法律の話にすり替わる。Di samping itu を「一方で」と読むと、理由の追加が反論に変わる。今日はこの2種類を軸に、見出し+全13文を解体します。
今日のねらい:語を1つ動かすと、記事の筋が入れ替わる
報道記事の翻訳で崩れる箇所は、大きく2種類です。①制度の語と②論理の語。どちらも、取り違えても日本語としては読めてしまうのがやっかいなところです。
①制度の語——KUHAP(刑事訴訟法)/penegakan hukum(法執行)/putusan pemidanaan(有罪判決)/Ketua Komisi(委員長)/masa reses(休会期間)。どれも近い形・近い意味の別語があります。KUHP(刑法)、dasar hukum(法的根拠)、keputusan(決定)、Ketua DPR(議長)、そして日本語の「休廷」。
②論理の語——Di samping itu(加えて)/lebih dulu(先に)/atau(すなわち)/Kendati demikian(とはいえ)/mengingatkan agar tidak(〜しないよう促す)。1語で文の向きが決まります。
逆に言えば、この2種類を外さなければ、この記事は訳せます。文型そのものは素直です。長いのは名詞句であって、構造ではありません。
ニュースの背景を、先に30秒で
資産没収法案は、汚職や麻薬取引などで得られたとみられる財産を、国が取り上げるための手続きを定める法案です。2008年から構想されてきましたが、国会での審議は長く進みませんでした。
焦点は NCB(non-conviction based asset forfeiture)と呼ばれる仕組みです。ふつう財産の没収は、本人が有罪になってはじめてできます。NCB では、本人が亡くなった、国外に逃げた、といった場合でも、財産そのものが犯罪に由来するかどうかを裁判所で判断できるようになります。
汚職対策の切り札と期待される一方で、証拠が弱いまま財産を取り上げる道具にならないか、政敵つぶしに使われないかという懸念も根強くあります。記事はその両面を伝えています。
7月の精読では、この法案が議会で止まったままだった段階の論説を読みました。→ 塩漬けの「資産没収法案」を全11文で読み解く
今回はその続報。止まっていた法案が、一転して急ピッチで動き出したところです。
訳す前の構えだけ、先に
今日の記事に出る略語は5つ——DPR RI(インドネシア国会)/RUU(法案)/KUHAP(刑事訴訟法)/KPK(汚職撲滅委員会)/NCB(有罪判決に基づかない資産没収)。訳し始める前に、正式名称と定訳を並べてしまうのが確実です。訳しながら思い出そうとすると、似た形の別の語が先に浮かびます。
人名は3人。Habiburokhman(ハビブロクマン)/Saan Mustopa(サアン・ムストパ)/Erry Riyana Hardjapamekas(エリー・リヤナ・ハルジャパメカス)。kh は「ク」で拾います。名前の区切りは中黒、2回目からは「〜氏」でそろえます。
もうひとつ、段落の役割を先に確かめておきます。第1段落が期限、第2段落が遅れの理由、第3段落が仕組み、第4段落が危うさ。第4段落の頭の Kendati demikian が、記事の折り返し地点です。
解説を読む前に、一度自分で全文を訳してみてください。目安は35分。辞書は引いてかまいません。略語と人名だけは、訳す前に定訳を決めてから始めてください。
RUU PERAMPASAN ASET DIKEBUT, KEKHAWATIRAN PENYALAHGUNAAN MENGEMUKA
課題:次の記事を日本語に訳してください(4段落・13文)
Komisi III DPR RI menargetkan Rancangan Undang-Undang (RUU) Perampasan Aset disahkan dalam Rapat Paripurna pada 15 Desember 2026. Ketua Komisi III dari Fraksi Partai Gerindra, Habiburokhman, menyatakan pihaknya akan memaksimalkan sekitar delapan hari kerja pada masa reses untuk menyerap aspirasi publik, bahkan bila perlu hingga larut malam. Tenggat serupa juga ditegaskan Wakil Ketua DPR Saan Mustopa yang memastikan RUU tersebut rampung sebelum pertengahan Desember.
RUU yang digagas sejak 2008 itu sudah lama menjadi tuntutan masyarakat sipil, tetapi pembahasannya tak kunjung tuntas. Habiburokhman beralasan, Komisi III lebih dulu memprioritaskan revisi Kitab Undang-Undang Hukum Acara Pidana (KUHAP) yang dinilai menjadi fondasi penegakan hukum. Di samping itu, sekitar 65 persen anggota Komisi III periode 2024–2029 merupakan wajah baru sehingga mereka membutuhkan waktu untuk mendalami substansi RUU.
Salah satu pokok yang paling disorot ialah mekanisme perampasan aset tanpa putusan pemidanaan atau non-conviction based asset forfeiture. Melalui mekanisme ini, negara dapat merampas harta yang diduga berasal dari tindak pidana meskipun pemiliknya meninggal dunia, melarikan diri, atau tidak dapat dihadirkan di persidangan. Objeknya pun luas, mulai dari uang tunai, tanah, dan saham hingga aset digital dan harta yang disimpan di luar negeri.
Kendati demikian, kewenangan sebesar itu menyimpan risiko. Dalam rapat dengar pendapat umum dengan Komisi III, mantan pimpinan Komisi Pemberantasan Korupsi (KPK) Erry Riyana Hardjapamekas mengingatkan agar perampasan aset tidak dilakukan secara sembarangan tanpa bukti yang jelas. Menurut dia, penegakan hukum antikorupsi selama ini terlalu terpaku pada penghitungan kerugian negara, sementara kemampuan melacak hasil kejahatan justru melemah. Habiburokhman sendiri tidak menampik adanya kekhawatiran publik bahwa undang-undang ini kelak dapat dijadikan alat kekuasaan untuk menghabisi lawan politik.
Disadur dari Suara.com, Liputan6.com, dan VIVA.co.id
解体に入る前に、記事の骨組みを置きます。前半2段落が「急ぐ理由」、後半2段落が「仕組みと危うさ」。この流れが見えていれば、途中の接続語の向きを取り違えにくくなります。
第1〜3段落は、法案を前に進める側の情報です。第4段落の Kendati demikian から、歯止めをかける側の声に切り替わります。
RUU PERAMPASAN ASET DIKEBUT, KEKHAWATIRAN PENYALAHGUNAAN MENGEMUKA
文の骨格<前半> RUU Perampasan Aset dikebut(資産没収法案が急ピッチで進められる)
<後半> kekhawatiran penyalahgunaan mengemuka(濫用への懸念が浮上する)
2つの出来事を読点でつないだ見出しです。前半が推進、後半が懸念。記事の4段落の構成を、そのまま1行に縮めています。
dikebut を「急がれる」と訳す。意味は近いのですが、kebut は「(車などを)飛ばす」。dikebut は「急ピッチで進められる」「突貫で審議される」です。「急がれる」だと、急いでいるのか、急ぐべきなのかがぼやけます。見出しなら「急ピッチで進む」が収まりのいい形です。
penyalahgunaan を「誤った利用」と訳す。salah guna=使い方を誤る、という成り立ちはその通りです。ただ penyalahgunaan には定訳があります。濫用・悪用。penyalahgunaan wewenang=権限の濫用、penyalahgunaan narkoba=薬物の乱用。法律の記事では「濫用」一択です。
原文(再掲)RUU PERAMPASAN ASET DIKEBUT, KEKHAWATIRAN PENYALAHGUNAAN MENGEMUKA
訳例急ピッチで進む資産没収法案、濫用への懸念が浮上
語注政治記事では pembahasan RUU dikebut(法案審議を急ぐ)、proyek dikebut(工事を突貫で進める)の形でよく出ます。近い語との違いdipercepat=前倒しされる(中立)。dikebut には「無理をしてでも急ぐ」という勢いがあり、拙速への批判を含むこともあります。
法律の文脈では「没収」(最終的に国のものにすること)です。押収とは段階が違うpenyitaan(sita)=押収。捜査の段階でいったん差し押さえること。
perampasan=没収。裁判を経て国に帰属させること。
記事の法案は後者、最終的に国のものにする手続きを定める法律です。
kekhawatiran mengemuka=懸念が浮上する。isu mengemuka=問題が表面化する。
Komisi III DPR RI menargetkan Rancangan Undang-Undang (RUU) Perampasan Aset disahkan dalam Rapat Paripurna pada 15 Desember 2026.
文の骨格<主語> Komisi III DPR RI(国会第3委員会は)
<述語> menargetkan(目標にしている)
<目標の中身> RUU Perampasan Aset disahkan dalam Rapat Paripurna pada 15 Desember 2026(法案が12月15日の本会議で可決されること)
menargetkan + 名詞 + 受動の di- 動詞の形です。目標にしているのは「法案」ではなく「法案が可決されること」。di- 動詞までを1つのかたまりとして読みます。
disahkan を「法制化」と訳す。意味は届きます。ただ disahkan dalam Rapat Paripurna は「本会議で可決・成立」が定型です。報道の定型に乗せたほうが、手続きのどの段階の話かが読み手に伝わります。
DPR を、同じ訳文の中で「国会」と「国民議会」に書き分ける。どちらも使われる訳語ですが、1本の訳文の中では1つにそろえます。日本の報道では「国会」が一般的です。
原文(再掲)Komisi III DPR RI menargetkan Rancangan Undang-Undang (RUU) Perampasan Aset disahkan dalam Rapat Paripurna pada 15 Desember 2026.
訳例インドネシア国会第3委員会は、資産没収法案を2026年12月15日の本会議で可決・成立させることを目指している。
語注訳は「第3委員会」。必要なら「法務・人権・治安を担当する第3委員会」と補います。
委員会などでの審議(pembicaraan tingkat I)を終えた法案が、本会議での議決(tingkat II)を経て成立へ進みます。
RUU disahkan menjadi UU=法案が可決されて法律になる。
Ketua Komisi III dari Fraksi Partai Gerindra, Habiburokhman, menyatakan pihaknya akan memaksimalkan sekitar delapan hari kerja pada masa reses untuk menyerap aspirasi publik, bahkan bila perlu hingga larut malam.
文の骨格<主語> Ketua Komisi III dari Fraksi Partai Gerindra, Habiburokhman,(グリンドラ党会派の第3委員会委員長ハビブロクマン氏は)
<述語> menyatakan(述べた)
<発言の中身> pihaknya akan memaksimalkan … untuk menyerap aspirasi publik, bahkan bila perlu hingga larut malam
発言の中身の主語は pihaknya。「その人の側」=委員長が率いる第3委員会です。国会議員一般でも、国民でもありません。
Ketua Komisi を「議長」と訳す。議長は国会全体のトップ(Ketua DPR)です。委員会のトップは委員長。第3文に Wakil Ketua DPR(国会副議長)が出てくるので、ここを「議長」にすると役職の上下が逆転して見えます(図2)。
pihaknya を「国会議員は」と訳す。pihak=側・当事者。pihaknya=その人の側。発言者が委員長なら「同委員会」、社長なら「同社」、警察幹部なら「警察当局」です。主語を広げると、約束している主体がぼやけます。
masa reses を「休廷期間」と訳し、hari kerja を落とす。休廷は裁判所の語です。国会は休会。そして delapan hari kerja は「8日間」ではなく約8稼働日。週末を除いた、実際に動ける日数です。
bahkan を「まして」と訳す。「まして」は「〜でさえ…なのだから、なおさら」の語で、前に比べる土台が要ります。bahkan bila perlu は「さらには必要なら」「必要とあれば」。bahkan は程度をもう一段上げる語です。
原文(再掲)Ketua Komisi III dari Fraksi Partai Gerindra, Habiburokhman, menyatakan pihaknya akan memaksimalkan sekitar delapan hari kerja pada masa reses untuk menyerap aspirasi publik, bahkan bila perlu hingga larut malam.
訳例グリンドラ党会派所属の第3委員会委員長、ハビブロクマン氏は、国民の意見を聴取するため、同委員会は休会期間中の約8稼働日を最大限に活用し、必要であれば深夜まで続けると述べた。
語注報道では発言者の所属組織を指すことがほとんどです。pihaknya=同委員会/同社/同省/当局。
pihak berwenang=当局、pihak ketiga=第三者。
議員は休会中に選挙区(dapil)に戻り、住民の声を聞くのが建前です。そのため reses と menyerap aspirasi(意見を聴取する)はセットでよく出ます。
「要望を吸い上げる」でも届きますが、公聴の文脈では「意見を聴取する」が落ち着きます。
議長・副議長は国会全体、委員長は委員会の役職です。masa reses は国会の休会で、裁判所の「休廷」とは別物です。
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第3文以降の逐語解説と訳例を、図解つきでまとめて収録しています。あわせて収録しているのは次の内容です。
- KUHP と KUHAP——acara の1語で刑法と刑事訴訟法。penegakan hukum(法執行)と dasar hukum(法的根拠)もあわせて整理(図3)
- Di samping itu/lebih dulu/atau/Kendati demikian——1語で文の向きが決まる論理の語(図4)
- NCB——「人」ではなく「財産」を裁く仕組みを、従来の没収と並べて(図5)
- mengingatkan agar tidak は「〜することはない」ではない——警告を安心材料に変えない
- 日本語の語選び14語、見直し手順(図6)、復習語彙12、次に狙う2点
Tenggat serupa juga ditegaskan Wakil Ketua DPR Saan Mustopa yang memastikan RUU tersebut rampung sebelum pertengahan Desember.
文の骨格<主語> Tenggat serupa(同様の期限は)
<述語> juga ditegaskan(〜によっても強調された)
<動作主> Wakil Ketua DPR Saan Mustopa(サアン・ムストパ国会副議長)
<関係節> yang memastikan RUU tersebut rampung sebelum pertengahan Desember(同法案が12月中旬までに完了すると明言した)
di- 動詞の直後に動作主が来る受動文です。日本語では能動に戻して「〜氏も同様の期限を強調した」とします。yang 以下は述語を2つに分けて後ろに回すと読みやすくなります。
yang 節をそのまま人物の前に置く。「12月中旬前には法案を終わらせるという国会副議長の〜氏は、期限に関して同様に強調している」。情報は全部入っていますが、「〜という〜氏」は発言と人物をつなぐ形として不自然です。「〜氏は…を強調し、…と明言した」と2つの述語に開きます。
rampung を「法案を終わらせる」と訳す。rampung=完了する・片づく。ただ「法案を終わらせる」は日本語の組み合わせとして成り立ちません。法案なら「審議を終える」「成立させる」です。
原文(再掲)Tenggat serupa juga ditegaskan Wakil Ketua DPR Saan Mustopa yang memastikan RUU tersebut rampung sebelum pertengahan Desember.
訳例サアン・ムストパ国会副議長も同様の期限を強調し、同法案の審議を12月中旬までに終えると明言した。
語注melewati tenggat=期限を過ぎる、memperpanjang tenggat=期限を延ばす。
pasti=確かな。memastikan=確かめる/請け合う・明言するの2つの意味。ここは後者です。
どちらも「言った」より一段強い引用の動詞です。
法案なら「審議を終える」「成立させる」と訳します。
RUU yang digagas sejak 2008 itu sudah lama menjadi tuntutan masyarakat sipil, tetapi pembahasannya tak kunjung tuntas.
文の骨格<主語> RUU yang digagas sejak 2008 itu(2008年から構想されてきたその法案は)
<述語1> sudah lama menjadi tuntutan masyarakat sipil(長く市民社会の要求になってきた)
<逆接> tetapi
<述語2> pembahasannya tak kunjung tuntas(その審議は一向に決着しない)
「〜が、〜ない」の対比の文です。tak kunjung が「待っているのに来ない」いらだちを運んでいます。
digagas sejak 2008 を「2008年以来、発案されてきた」と訳す。発案は1回きりの行為なので、「〜されてきた」と続けると落ち着きません。「2008年から構想されてきた」か「2008年に発案された」のどちらかに寄せます。
masyarakat sipil を「市民」、pembahasan を「議論」と訳す。意味は通ります。ただ masyarakat sipil は「市民社会」(NGO・学者・メディアなど、組織された市民)という定訳のある語。pembahasan RUU は「法案審議」です。
原文(再掲)RUU yang digagas sejak 2008 itu sudah lama menjadi tuntutan masyarakat sipil, tetapi pembahasannya tak kunjung tuntas.
訳例2008年から構想されてきたこの法案は、長年にわたり市民社会の要求となってきたが、審議は一向に決着していない。
語注organisasi masyarakat sipil=市民社会組織(CSO)。
tak kunjung tuntas=一向に決着しない、tak kunjung datang=一向に来ない。
Habiburokhman beralasan, Komisi III lebih dulu memprioritaskan revisi Kitab Undang-Undang Hukum Acara Pidana (KUHAP) yang dinilai menjadi fondasi penegakan hukum.
文の骨格<主語> Habiburokhman
<述語> beralasan,(理由を挙げた・釈明した)
<理由の中身> Komisi III lebih dulu memprioritaskan revisi KUHAP(第3委員会は先に KUHAP の改正を優先した)
<関係節> yang dinilai menjadi fondasi penegakan hukum(法執行の基盤とされる)
理由の中身はすでに起きた事実です。「〜を優先すべきだ」という主張ではありません。第4文の「審議が一向に決着しない」を受けて、遅れた理由を説明している文です。
KUHAP を「刑法」と訳す。今日いちばん大きな落とし穴です。KUHP=Kitab Undang-Undang Hukum Pidana=刑法。KUHAP=Kitab Undang-Undang Hukum Acara Pidana=刑事訴訟法。acara=手続きの1語で別の法律です。刑法にすると、「犯罪と刑罰を決める法律を先にやった」という別の話になります(図3)。
lebih dulu を「より早く」と訳し、「〜すべきだ」を足す。lebih dulu=(何かより)先に。ここでは資産没収法案より先に、です。そして原文には harus も perlu もありません。「すべきだ」を足すと、釈明が提言に変わります。
penegakan hukum を「法的根拠」と訳す。penegakan hukum=法執行(法を実際に適用し、守らせること)。法的根拠は dasar hukum/landasan hukum です。第12文にもう一度出てくるので、ここで取り違えると2か所崩れます。
revisi を「改定」と訳す。法令は「改正」。改定は料金・規則・契約などに使います。
原文(再掲)Habiburokhman beralasan, Komisi III lebih dulu memprioritaskan revisi Kitab Undang-Undang Hukum Acara Pidana (KUHAP) yang dinilai menjadi fondasi penegakan hukum.
訳例ハビブロクマン氏は、第3委員会が法執行の基盤とされる刑事訴訟法(KUHAP)の改正を優先し、先に取り組んだためだと釈明した。
語注似た語の berdalih は「口実にする」で、書き手の批判がにじみます。
KUHAP=Kitab Undang-Undang Hukum Acara Pidana=刑事訴訟法。
acara は日常語では「行事・番組」ですが、法律では「手続き」です。同じ型の法律KUHPerdata(Kitab Undang-Undang Hukum Perdata)=民法。hukum acara perdata=民事訴訟法。Acara が入れば手続きの法律、と覚えます。
penegakan hukum は「法を実際に使う側」、dasar hukum は「行為を支える条文」です。
評価している主体を書かない形なので、「〜とされる」「〜と見なされている」が収まります。
acara は日常では「行事・番組」ですが、法律では「手続き」。Hukum Acara が付けば訴訟法です。
Di samping itu, sekitar 65 persen anggota Komisi III periode 2024–2029 merupakan wajah baru sehingga mereka membutuhkan waktu untuk mendalami substansi RUU.
文の骨格<接続> Di samping itu,(加えて)
<主語> sekitar 65 persen anggota Komisi III periode 2024–2029(2024〜2029年期の第3委員会委員の約65%は)
<述語> merupakan wajah baru(新人である)
<結果> sehingga mereka membutuhkan waktu untuk mendalami substansi RUU(そのため法案の中身を深く理解する時間が必要だ)
第5文に続く2つ目の理由です。理由① KUHAP を優先 → 理由② 新人が多い。Di samping itu は理由を積み増す接続語です。
Di samping itu を「一方で」と訳す。samping=横。di samping itu=それに並べて=加えて・また。「一方で」は対比・逆接です。ここを「一方で」にすると、第5文の釈明に反論が続くように読めてしまいます(図4)。
wajah baru を「新しい顔ぶれ」と訳す。「顔ぶれ」は集団全体の構成を言う語で、「委員の約65%は新しい顔ぶれ」とは言いません。「新人」「新顔」とします。
periode を「期間」とし、数量を名詞の前に置く。議会の periode は「任期」「〜年期」。そして「約65パーセントの議員は」より「委員の約65%が」と、数量を後ろに回すほうが報道の日本語です。
原文(再掲)Di samping itu, sekitar 65 persen anggota Komisi III periode 2024–2029 merupakan wajah baru sehingga mereka membutuhkan waktu untuk mendalami substansi RUU.
訳例加えて、2024〜2029年期の第3委員会委員の約65%は新人で、法案の中身を深く理解するには時間が必要だという。
語注sementara itu/di sisi lain=一方で(対比)。
形が似ているのは di samping(横に)と di sisi lain(別の側に)。横に並べるか、反対側に置くかで覚えます。
選挙記事では wajah lama(おなじみの顔ぶれ)と対で出ることもあります。
「調べる」(memeriksa, menyelidiki)より理解の深さに重心があります。
接続語は、訳し終えたあとにそれだけを拾い直すと見落としが減ります。
Salah satu pokok yang paling disorot ialah mekanisme perampasan aset tanpa putusan pemidanaan atau non-conviction based asset forfeiture.
文の骨格<主語> Salah satu pokok yang paling disorot(最も注目されている論点の一つは)
<述語> ialah(〜である)
<補語> mekanisme perampasan aset tanpa putusan pemidanaan(有罪判決なしの資産没収の仕組み)
<言い換え> atau non-conviction based asset forfeiture(すなわち NCB)
atau の後ろが英語の専門用語になっている点に注目です。インドネシア語で説明し、atau で国際的な用語に言い換える。報道でよく使う形です。
Salah satu を落とす。salah satu=〜の一つ。落とすと唯一の論点になります。Salah satu … yang paling …=「最も〜なものの一つ」は定型です。
atau を「あるいは」と訳し、英語を別の仕組みとして訳す。ここの atau は言い換え(すなわち・いわゆる)。そして non-conviction based は「有罪判決(conviction)に基づかない」です。「資産価値に基づく刑罰なし」と読むと、仕組みが2つあるうえに、2つ目は存在しない制度になってしまいます。
putusan を「決定」と訳す。putusan=判決(裁判所が下すもの)。keputusan=決定・決議(一般)。putusan pemidanaan=有罪判決、putusan bebas=無罪判決。
原文(再掲)Salah satu pokok yang paling disorot ialah mekanisme perampasan aset tanpa putusan pemidanaan atau non-conviction based asset forfeiture.
訳例最も注目されている論点の一つは、有罪判決を経ない資産没収、いわゆるNCB(non-conviction based asset forfeiture)の仕組みである。
語注pidana=刑。pemidanaan=刑を科すこと。putusan pemidanaan=有罪判決。判決の種類putusan bebas=無罪判決。putusan lepas=行為は認められるが、犯罪には当たらないとする判決。berkekuatan hukum tetap=確定した(判決)。
後ろに略語・専門用語・外国語が来て、前の語と同じものを指すときは言い換えです。Komisi Pemberantasan Korupsi atau KPK と同じ形。
訳は「すなわち」「いわゆる」、または括弧で示します。
Melalui mekanisme ini, negara dapat merampas harta yang diduga berasal dari tindak pidana meskipun pemiliknya meninggal dunia, melarikan diri, atau tidak dapat dihadirkan di persidangan.
文の骨格<手段> Melalui mekanisme ini,(この仕組みにより)
<主語> negara(国は)
<述語> dapat merampas(没収できる)
<目的語> harta yang diduga berasal dari tindak pidana(犯罪に由来すると疑われる財産)
<譲歩> meskipun pemiliknya meninggal dunia, melarikan diri, atau tidak dapat dihadirkan di persidangan(所有者が死亡・逃亡・出廷不能でも)
疑われているのは財産の「出どころ」です。diduga がかかるのは berasal dari tindak pidana(犯罪に由来する)まで。
berasal dari を落として「犯行だと疑われる財産」と訳す。財産そのものが犯行なのではありません。berasal dari=〜に由来する。「犯罪に由来すると疑われる財産」です。NCB の核心は「人の罪」ではなく「財産の出どころ」を問うことなので、ここを外すと仕組みの説明になりません(図5)。
原文にない「例えば」を足す。meskipun の後ろの3つは例示ではなく、条件の列挙です。足した1語が、そのまま誤訳になります。
tindak pidana を「刑事的犯行」と訳す。tindak pidana=犯罪(刑法上の犯罪行為)。tindak pidana korupsi=汚職犯罪。「刑事的犯行」という日本語はありません。
原文(再掲)Melalui mekanisme ini, negara dapat merampas harta yang diduga berasal dari tindak pidana meskipun pemiliknya meninggal dunia, melarikan diri, atau tidak dapat dihadirkan di persidangan.
訳例この仕組みにより、国は、所有者が死亡、逃亡し、あるいは公判に出廷させられない場合でも、犯罪に由来すると疑われる財産を没収できる。
語注報道では断定を避けるための定番の語です。terduga=(テロなどの)容疑をかけられた人。
harta yang berasal dari tindak pidana=犯罪に由来する財産。hasil kejahatan(犯罪収益)とほぼ同じものを指します。
sidang=審理・会議。persidangan=公判・審理。tidak dapat dihadirkan di persidangan=公判に出廷させることができない。
第8文の3つの条件——meninggal dunia/melarikan diri/tidak dapat dihadirkan——は、どれも上の手続きが止まる場面です。NCB はそこを埋めるための仕組みです。
Objeknya pun luas, mulai dari uang tunai, tanah, dan saham hingga aset digital dan harta yang disimpan di luar negeri.
文の骨格<主語> Objeknya pun(その対象も)
<述語> luas(広い)
<範囲> mulai dari A, B, dan C hingga D dan E(A・B・C から D・E まで)
mulai dari … hingga …=「〜から〜まで」。身近な資産(現金・土地・株式)から追いにくい資産(デジタル資産・国外資産)へ。範囲の両端を示す形です。
mulai dari を「〜に始まり」と訳し、列挙の区切りを動かす。「現金に始まり、土地、株、そして…」だと、現金だけが起点に見えます。dan で閉じている uang tunai, tanah, dan saham までが「から」の側、aset digital dan harta … が「まで」の側です。
pun を落とす。objeknya pun luas=対象「も」広い。仕組みが強力なうえに対象も広い。これが第10文の「これほど大きな権限」への布石です。硬い文なので saham は「株」より「株式」。
原文(再掲)Objeknya pun luas, mulai dari uang tunai, tanah, dan saham hingga aset digital dan harta yang disimpan di luar negeri.
訳例対象も幅広く、現金、土地、株式からデジタル資産、国外に保管された財産にまで及ぶ。
語注列挙が入るときは、dan で閉じたところが区切りです。
第10文の menyimpan risiko(リスクをはらむ)と同じ語根です。
Kendati demikian, kewenangan sebesar itu menyimpan risiko.
文の骨格<接続> Kendati demikian,(とはいえ)
<主語> kewenangan sebesar itu(これほど大きな権限は)
<述語> menyimpan risiko(リスクをはらむ)
6語の短い文ですが、記事の折り返し地点です。ここから歯止めをかける側の声になります。
Kendati demikian を「たとえ、そうであっても」と訳す。「たとえ〜ても」は仮定の形です。kendati demikian は前の事実を受けた逆接=「とはいえ」「しかしながら」。kendati=meskipun(〜にもかかわらず)、demikian=そのよう。
sebesar itu を「それほど大きな」と訳す。「それほど」は「それほど大きくない」のように否定と組みやすい語です。肯定で強めるなら「これほど」。
menyimpan を「内包する」と訳す。誤りではありませんが、menyimpan risiko には「リスクをはらむ」「危うさを抱える」という収まりのいい言い方があります。
原文(再掲)Kendati demikian, kewenangan sebesar itu menyimpan risiko.
訳例とはいえ、これほど大きな権限はリスクもはらんでいる。
語注同じ働き:meski demikian/namun demikian/walaupun begitu。
sewenang-wenang=専横な・勝手気ままな。penyalahgunaan wewenang=権限の濫用。見出しの penyalahgunaan とつながります。
Dalam rapat dengar pendapat umum dengan Komisi III, mantan pimpinan Komisi Pemberantasan Korupsi (KPK) Erry Riyana Hardjapamekas mengingatkan agar perampasan aset tidak dilakukan secara sembarangan tanpa bukti yang jelas.
文の骨格<場面> Dalam rapat dengar pendapat umum dengan Komisi III,(第3委員会との公聴会で)
<主語> mantan pimpinan KPK Erry Riyana Hardjapamekas(KPKの元幹部エリー・リヤナ・ハルジャパメカス氏は)
<述語> mengingatkan(注意を促した・くぎを刺した)
<促した中身> agar perampasan aset tidak dilakukan secara sembarangan tanpa bukti yang jelas
mengingatkan agar …=「〜するよう注意を促す」。agar が付いているので、中身は事実ではなく「こうあってほしい」という要求です。
KPK を別の委員会名で訳す。Komisi Pemberantasan Korupsi=汚職撲滅委員会。記事のテーマにつられて「資産没収委員会」としがちですが、固有名詞は文脈から作らない。pemberantasan=撲滅、korupsi=汚職と、正式名称の各語を拾います。
mantan pimpinan を「前議長」と訳す。mantan=元。「前」は直前の人を指します。pimpinan KPK は委員長と副委員長の5人からなる指導部で、「議長」という役職はありません。「元幹部」「元指導部メンバー」とします。
agar … tidak dilakukan を「行うことはない」と訳す。今日いちばん意味が反転しやすい箇所です。「行うことはない」は事実の断定、agar tidak は「行わないように」という要求。警告の中身が、安心材料に変わってしまいます。
sembarangan を「無作為に」と訳す。「無作為」は統計の random(無作為抽出)です。sembarangan=むやみに・いいかげんに。権力の文脈なら「恣意的に」が定番です。
原文(再掲)Dalam rapat dengar pendapat umum dengan Komisi III, mantan pimpinan Komisi Pemberantasan Korupsi (KPK) Erry Riyana Hardjapamekas mengingatkan agar perampasan aset tidak dilakukan secara sembarangan tanpa bukti yang jelas.
訳例第3委員会との公聴会で、汚職撲滅委員会(KPK)の元幹部エリー・リヤナ・ハルジャパメカス氏は、明確な証拠もないまま恣意的に資産没収が行われることがあってはならないとくぎを刺した。
語注RDP(rapat dengar pendapat)=政府機関の幹部を呼ぶ聴取。Raker(rapat kerja)=大臣と行う審議。
pimpinan KPK=委員長(ketua)1人と副委員長(wakil ketua)4人の指導部。mantan pimpinan KPK=KPK元幹部。エリー・リヤナ氏は発足当初の副委員長です。
mengingatkan agar (tidak) …=〜する(しない)よう注意を促す。agar の後ろは要求の中身です。
権力の行使について言うときは「恣意的に」。sewenang-wenang(専横な)と近い色です。
Menurut dia, penegakan hukum antikorupsi selama ini terlalu terpaku pada penghitungan kerugian negara, sementara kemampuan melacak hasil kejahatan justru melemah.
文の骨格<出典> Menurut dia,(同氏によれば)
<主語1> penegakan hukum antikorupsi selama ini(これまでの汚職対策の法執行は)
<述語1> terlalu terpaku pada penghitungan kerugian negara(国家損失額の算定にとらわれすぎている)
<対比> sementara(その一方で)
<主語2・述語2> kemampuan melacak hasil kejahatan justru melemah(犯罪収益を追う力はむしろ弱まっている)
sementara が本物の「一方で」です。第6文の Di samping itu と見比べてください。
penegakan hukum を、ここでも「法的根拠」と訳す。第5文と同じ語です。penegakan hukum antikorupsi=汚職対策の法執行。こなれた日本語なら「汚職摘発」。同じ語が2回出たら、訳語もそろえるのが基本です。
terlalu terpaku を「あまりに…重視しすぎており」と訳す。「あまりに」と「〜すぎ」で過剰が二重です。どちらか1つで足ります。terpaku=釘付けになる(paku=釘)。「〜にとらわれすぎている」がぴったりです。
hasil kejahatan を「犯罪での資産」と訳す。hasil kejahatan=犯罪収益(proceeds of crime)。日本の法令でも使われる定訳です。
原文(再掲)Menurut dia, penegakan hukum antikorupsi selama ini terlalu terpaku pada penghitungan kerugian negara, sementara kemampuan melacak hasil kejahatan justru melemah.
訳例同氏によれば、これまでの汚職対策の法執行は国家損失額の算定にとらわれすぎており、その一方で犯罪収益を追跡する能力はむしろ低下しているという。
語注terpaku pada …=〜にとらわれる・〜に固執する。terpaku di tempat=その場に立ち尽くす。
インドネシアの汚職犯罪撲滅法(UU Tipikor)は、主要な条文(2条・3条)で国家財政に損害を与えたことを要件にしています。だから捜査では損失額の算定が中心になりやすい——エリー・リヤナ氏の指摘はそこです。
melacak=追跡する(lacak=足跡)。pelacakan aset=資産の追跡。pencucian uang=マネーロンダリング。
Habiburokhman sendiri tidak menampik adanya kekhawatiran publik bahwa undang-undang ini kelak dapat dijadikan alat kekuasaan untuk menghabisi lawan politik.
文の骨格<主語> Habiburokhman sendiri(ハビブロクマン氏自身も)
<述語> tidak menampik(否定しない)
<目的語> adanya kekhawatiran publik(国民の懸念があること)
<懸念の中身> bahwa undang-undang ini kelak dapat dijadikan alat kekuasaan untuk menghabisi lawan politik
記事は推進役の委員長自身が懸念を認めるところで終わります。第2文の委員長が、ここでもう一度登場する構成です。
alat kekuasaan を「強力な武器」と訳す。kekuasaan=権力(kuasa=力・権限)。「強力」ではありません。alat kekuasaan=権力の道具。懸念の中身は「法律が強すぎる」ではなく、「権力者に使われる」ことです。
menghabisi を「消す」と訳す。「消す」は殺害を連想させます。menghabisi lawan politik=政敵を排除する・葬り去る。
「〜になりうる国民の懸念」と、「という」を落とす。懸念の中身を名詞にかけるときは「〜という懸念」が要ります。bahwa がちょうどその「という」に当たります。
dijadikan を「なりうる」と訳して受け身を消す。dijadikan=(誰かに)〜にされる。法律が勝手に道具になるのではなく、誰かが道具として使う話です。「利用されかねない」で受け身を残します。
原文(再掲)Habiburokhman sendiri tidak menampik adanya kekhawatiran publik bahwa undang-undang ini kelak dapat dijadikan alat kekuasaan untuk menghabisi lawan politik.
訳例ハビブロクマン氏自身も、この法律が将来、政敵を排除するための権力の道具として利用されかねないという国民の懸念があることを否定していない。
語注「認めた」(mengakui)ほど強くはありません。「否定しない」と「認めた」を入れ替えないのが報道翻訳の基本です。
alat kekuasaan=権力の道具。penyalahgunaan kekuasaan=権力の濫用。
文脈によっては殺害も指す強い語です。政治の文脈では「政敵を排除する」「葬り去る」と訳します。
訳し終えたあとの、見直し手順
今日の記事で崩れやすいのは、制度の語と論理の語でした。どちらも、取り違えても日本語として読めてしまうのがやっかいです。「国家損失の計算を重視しすぎた法的根拠」も、「一方で、新人議員が多い」も、文としては成立しています。
だから見直しは、訳文を頭から読み直すのではなく、原文の特定の語だけを拾い直すのが効きます。次の5つを、この順で。
①〜④は原文と突き合わせる作業、⑤は日本語だけを見る作業です。⑤は最後に、声に出して読むと見つかります。
日本語の語選び——「読める」のに違う14語
訳の中身は合っていても、日本語の語の選び方で、読み手に違う絵が届くことがあります。今日の記事で出やすいものを並べました。左の語が浮かんだら、いったん立ち止まる合図にしてください。
| 使いがちな語 | 何がずれるか | 置き換え |
|---|---|---|
| まして | 「〜でさえ…なのだから、なおさら」の語。前に比べる土台が要る | さらには/必要であれば |
| 休廷 | 裁判所の語 | 休会 |
| 議長(委員会の) | 議会全体のトップを指す | 委員長 |
| 改定 | 料金・規則に使う。法令には使わない | 改正 |
| 法制化 | 意味は届くが、本会議での議決の定型ではない | 可決・成立 |
| 法案を終わらせる | 日本語の組み合わせとして成り立たない | 審議を終える |
| 発案されてきた | 1回きりの行為を継続にしている | 構想されてきた |
| 一方で | 対比・逆接になる | 加えて/また |
| 新しい顔ぶれ | 集団全体の構成を言う語 | 新人 |
| 決定(判決の意味で) | 判決と決定は別の手続き | 判決 |
| 無作為に | 統計の random(無作為抽出) | 恣意的に |
| たとえ〜ても | 仮定の形 | とはいえ |
| それほど大きな | 否定と組みやすい | これほど大きな |
| 消す(政敵を) | 殺害を連想させる | 排除する |
今日の復習語彙 12
この記事から、国会・司法の報道でくり返し出る語を12だけ選びました。形の近い語と対で覚えると、取り違えが減ります。
| 語 | 意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| dikebut | 急ピッチで進められる | kebut=(車を)飛ばす。dipercepat(前倒し)より勢いが強い |
| disahkan dalam Rapat Paripurna | 本会議で可決・成立 | RUU disahkan menjadi UU=法案が法律になる |
| masa reses | 休会期間 | 議員が選挙区に戻る期間。「休廷」は裁判所 |
| menyerap aspirasi | 意見を聴取する | reses とセットで出やすい |
| tak kunjung | 一向に〜しない | tak kunjung tuntas/tak kunjung datang |
| KUHP ↔ KUHAP | 刑法 ↔ 刑事訴訟法 | acara=手続き |
| penegakan hukum ↔ dasar hukum | 法執行 ↔ 法的根拠 | 形が似ていないのに取り違えやすい |
| di samping itu ↔ sementara | 加えて ↔ 一方で | 追加と対比 |
| putusan ↔ keputusan | 判決 ↔ 決定 | putusan pemidanaan=有罪判決 |
| berasal dari tindak pidana | 犯罪に由来する | hasil kejahatan=犯罪収益 |
| kendati demikian | とはいえ | 仮定の「たとえ〜ても」ではない |
| mengingatkan agar tidak | 〜しないよう注意を促す | 断定の「〜ことはない」ではない |
次に狙う2点
第2文の pihaknya は第3委員会、第12文の dia はエリー・リヤナ氏。報道文では、発言者の「側」を指す語がくり返し出ます。pihaknya=同委員会/同社/同省/当局。発言者の所属に置き換えると決めておけば、主語は広がりません。
menyatakan(述べた)/menegaskan(強調した)/memastikan(明言した・請け合った)/mengingatkan agar(〜するよう促した)/tidak menampik(否定しなかった)。報道記事の要は、誰がどれだけの強さで言ったかです。断定と要求、「認めた」と「否定しない」を入れ替えないこと。
今日持ち帰るもの
① KUHAP は刑事訴訟法、KUHP が刑法。acara=手続き。取り違えると、法案が後回しにされた理由が別の法律の話になります。
② penegakan hukum は法執行。法的根拠は dasar hukum。同じ語が2回出たら、訳語もそろえる。
③ Di samping itu は「加えて」、sementara が「一方で」。理由の追加を反論に変えない。
④ agar tidak は要求、「〜ことはない」は断定。警告の中身を安心材料に変えない。
⑤ NCB は「人の罪」ではなく「財産の出どころ」を問う。berasal dari を落とさない。
⑥ 訳語は「読めるか」ではなく「同じ絵が届くか」で選ぶ。休廷/無作為/まして/消す。
もう一度、原文だけを見て第5文と第11文を訳し直してみてください。KUHAP が刑事訴訟法だと分かった状態で第5文を読むと、法案が遅れた理由が「手続きの土台を先に固めた」という話としてつながるはずです。第11文は、agar の一語で「警告」になることを確かめてください。








