省庁名も、通貨も、相続人も——考えて訳す語ではなく、引き出しから出す語です
今日の課題は統計・調査ものです。空き家が900万戸に達したという記事。見出し+全13文を、bahasa baku(書き言葉)に訳していきます。
難所は3つ。①定訳を覚えているかどうか。総務省/法務省/固定資産税/過料/用地取得——これらは「意味から組み立てる」語ではありません。知っているか、いないかだけです。
②接辞の向き。ahli waris(相続人)とpewaris(被相続人)、mewarisi(相続する)とmewariskan(遺す)。矢印が逆になると、誰が誰から受け取ったのかが反転します。
③留保のスコープ。「〜とは言いがたい」「〜かのように映るが実際には」「問われてしかるべきだ」。この記事は、書き手の判断がすべて留保のかたちで書かれています。そこを潰すと、記事がただの統計紹介になります。
今日のねらい:定訳は「思い出す語」ではなく「引き出す語」
この記事には固有名詞と法律用語が11個出ます。総務省/法務省/住宅・土地統計調査/所有者不明土地/相続登記/過料/固定資産税/特定空家/用地取得/公共事業/市町村。13文しかない記事に、これだけです。
やっかいなのは、どれも「意味から組み立てられそうに見える」ことです。総務省——「総合的な事務」だから? そう考え始めると、まず当たりません。Kementerian Dalam Negeri dan Komunikasi(内務・通信省)——知らなければ出ない語です。
そして通貨。「6兆円」を 6 triliun rupiah と書くと、通貨がすり替わります。桁は合っているのに、国が変わってしまう。数字を直すのに気を取られて、単位を見落とす——いちばん惜しい落とし方です。
もうひとつ、接辞の向き。pewaris(遺す側)とahli waris(受け取る側)。mewariskan(遺す)とmewarisi(相続する)。「誰から誰へ」の矢印を紙に書いてから、語を選ぶ——これだけで防げます。
最後に「以下」。10万円以下はpaling banyak 100.000 yen(最大10万円)です。kurang dari は「未満」——10万円ちょうどが入りません。法律の条文では、この1点が意味を変えます。
解説に入る前に、この課題に固有の構えを5つ渡しておきます。訳語そのものにはまだ触れません。
① 訳し始める前に、固有名詞だけ先に書き出す。今日なら総務省・法務省・市町村の3つと、住宅・土地統計調査という調査名。これを紙の端に並べてから本文に入ります。書きながら思い出そうとすると、そこで必ず手が止まります。
② 数字は「桁 + 単位」を一組で確認する。この記事の数字は7つ——900万/13.8%/385万/212万/8割/24%/6兆/10万/6倍と、実は9つです。桁の変換が要るのは「900万」「385万」「212万」「6兆」「10万」の5つ。そのうち通貨がつくのは「6兆円」と「10万円」の2つです。
③ 「誰から誰へ」の矢印を書く。相続の話は方向がすべてです。亡くなった人 → 受け取る人。この矢印を先に決めてから、pewaris と ahli waris を割り当てます。語を先に選ぶと、まず逆になります。
④ 留保の語に、先に印をつける。この記事には「〜とされ」「〜とみられる」「〜とは言いがたい」「〜かのように映るが実際には」「〜にすぎない」「問われてしかるべきだ」と、6か所あります。13文の記事で6か所——ほぼ2文に1回です。この記事は、留保でできていると言っていい。
⑤ 比喩は、定型があるかどうかを先に確かめる。「生煮え」にはsetengah matang(半煮え)というそのまま使える定型があります。「歯止めがかかる」はtertahan(止められている)。定型があるなら借りる、なければ意味に開く——順番はこちらです。
1文ずつ訳してください。直接引用の部分も、書き言葉のまま置きます。先に解説を読まずに、まず自分の訳を作ってから先へ進むと、あとの解説が効きます。
空き家900万戸、過去最高 所有者不明土地の解消は「生煮え」のまま
課題:次の日本語をインドネシア語(bahasa baku・書き言葉)に訳しなさい
総務省の住宅・土地統計調査によれば、全国の空き家は約900万戸に達し、総住宅数に占める割合は13.8%と過去最高となった。うち、賃貸用でも売却用でもなく、別荘などの二次的住宅にも当たらない「その他空き家」は385万戸と、20年前の212万戸から8割近く増えた。増加率は前回調査の伸びを下回ったが、それをもって歯止めがかかったとは言いがたい。
空き家の増加と切り離せないのが所有者不明土地である。相続の際に登記が行われないまま放置され、世代を重ねるうちに相続人が数十人に膨れ上がった土地は、国土面積の約24%に及ぶとされ、これによる経済的損失は2040年までの累計で6兆円規模に達するとみられる。公共事業の用地取得をめぐって自治体が数年単位の遅延を余儀なくされる例も珍しくない。
こうした事態を受け、相続登記は2024年から義務化された。正当な理由なく3年以内に申請しなければ、10万円以下の過料が科される。もっとも、法務省の担当者は「対象の洗い出しを進めている段階だ」と述べるにとどめ、実務は段階的かつ計測可能な形で進めるという説明を繰り返す。制度が動き出したかのように映るが、実際には、登記費用の負担と、価値の乏しい山林を相続したくないという心理とが、申請を鈍らせて久しい。
市町村が「特定空家」に指定すれば固定資産税の優遇は外れ、税額は最大で6倍になる。とはいえ、指定に踏み切った件数は全国で年間数百件にすぎない。生煮えのまま数字を積み上げる運用が地域の安全にどれだけ資するのかは問われてしかるべきだ。
Dikutip dari Nikkei
解説に入る前に、今日いちばん多く落ちる場所を先に片づけておきます。固有名詞と法律用語の定訳です。
図1 この記事に出る定訳。訳し始める前に、この6つを紙の端に書き出しておきます。
空き家900万戸、過去最高 所有者不明土地の解消は「生煮え」のまま
訳に使う語数字のゼロも kosong です。電話番号を読むときは「nol」より「kosong」と言うことのほうが多い——生活に近い語です。戸数の数え方unit が住宅の数を数える単位です。9 juta unit(900万戸)/rumah kosong 3,85 juta unit(385万戸)。
rumah をそのまま数えて9 juta rumah でも通じますが、統計の記事では unit が定番。本文が「戸」という助数詞を使っているので、unit で受けるほうが忠実です。rumah kosong はそのままで通じる語です。rumah tak berpenghuni(住む人のいない家)という言い方もありますが、統計の見出しなら rumah kosong が短くて強い。
ここは②——「記録が取られてきたあいだじゅうで」という意味です。「過去最高」の言い方tertinggi sepanjang pencatatan(統計開始以来の最高)/tertinggi sepanjang sejarah(史上最高)/rekor tertinggi(過去最高記録)/tertinggi yang pernah tercatat(記録されたなかで最高)。
統計の記事なら pencatatan(記録を取ること)が最も正確。sejarah(歴史)だと統計が始まる前まで含んでしまうので、やや大げさになります。catat(書き留める)→ mencatat/tercatat(記録されている)/pencatatan(記録すること)/catatan(メモ)。この記事に tercatat も出ます(第2文)。同じ語根が2回。
tuan rumah(家の主・主催者)/tuan tanah(地主)/Tuan(〜氏/敬称)。見出しと本文で言い分ける見出しは短く tanah tak bertuan、本文は正確に tanah yang pemiliknya tidak diketahui(持ち主が分からない土地)。
日本語の「所有者不明土地」は「持ち主がいない」のではなく「誰か分からない」という意味です。tak bertuan は厳密には「持ち主がいない」——見出しでは許容範囲ですが、本文では pemiliknya tidak diketahui のほうが忠実です。
見出しは短さ、本文は正確さ——この使い分けが報道文の作法です。milik(所有)→ pemilik=所有者/memiliki=持つ/kepemilikan=所有権/dimiliki=所有される。第4文で pemiliknya が出ます。
buah matang(熟した果物)/rencana yang matang(練られた計画)/pemikiran matang(成熟した考え)。料理から人や計画へ、そのまま伸びる語です。setengah matang が定型setengah(半分)+matang=半煮え。telur setengah matang(半熟卵)でおなじみの言い方です。
そこから「中途半端な・詰めきれていない」という比喩へ。日本語の「生煮え」と、絵がそのまま重なります。これは訳し替えずに、そのまま借りられる比喩です。
belum matang(まだ煮えていない)でも通じますが、setengah matang のほうが「途中で止まっている」感じが出ます。比喩は、まず定型があるかを確かめる。あるなら借りる、なければ意味に開く。今日の「生煮え」は借りられる側、「歯止めがかかる」は開く側です。
何がどうなったか(Rumah Kosong Tembus 9 Juta Unit)|その評価(Tertinggi Sepanjang Pencatatan)|セミコロン|もう一つの話題(Penuntasan Tanah Tak Bertuan Masih Setengah Matang)。
日本語の見出しは「空き家900万戸、過去最高」と「所有者不明土地の解消は生煮え」という2つのかたまりです。インドネシア語でもセミコロンで割ると、そのまま収まります。
空き家900万戸、過去最高 所有者不明土地の解消は「生煮え」のまま
模範訳Rumah Kosong Tembus 9 Juta Unit, Tertinggi Sepanjang Pencatatan; Penuntasan Tanah Tak Bertuan Masih Setengah Matang
見出しでrumah kosong と決めれば、本文でも同じ語が使えます。tanah tak bertuan と決めれば、本文の第4文でその言い直しを用意する必要が出てきます。
だから見出しを訳す瞬間がいちばん慎重になるべきところです。ここで語彙を確定させてから、本文に入ります。
そして「解消」を訳し落とさないこと。「所有者不明土地は生煮え」ではなく、「その解消が生煮え」です。tuntas(やりきる)→ penuntasan(やりきること)。問題そのものではなく、対処のほうが未完だと言っています。
「解消」に、辞書にない語を作ってしまう。atas(越える・対処する)からpengatasan という語を組み立てたくなりますが、この形はインドネシア語にありません。mengatasi(対処する)は存在しますが、名詞形は penanganan / penuntasan / penyelesaian を使います。
接辞の作りが正しくても、実在しない語になることがある——迷ったら、より一般的な語に逃がすのが安全です。penanganan(取り扱い)なら、どんな文脈でも通ります。
「生煮え」を belum matang で置く。これはほぼ正解です。意味は通ります。ただし定型は setengah matang——半熟卵の言い方で、「途中で止まっている」という絵がより近い。
比喩を訳すときは、まず「その言語に同じ絵の定型があるか」を探す。あれば借りるのが、いちばん自然に響きます。
総務省の住宅・土地統計調査によれば、全国の空き家は約900万戸に達し、総住宅数に占める割合は13.8%と過去最高となった。
訳に使う語produk dalam negeri(国産品)/Kementerian Luar Negeri(外務省)。この対で覚えると、両方いっぺんに入ります。なぜ「総務」が「内務・通信」になるのか日本の総務省は地方自治・選挙・統計・情報通信・郵政を所管します。英語名が Ministry of Internal Affairs and Communications——それをインドネシア語に置いた形です。
「総務」という日本語を訳しているのではなく、その役所が何をしているかで名前がついている。だから「総合的な事務」から組み立てようとすると、まず当たりません。
Kementerian Pekerjaan Umum は公共事業省——まったく別の役所です。本文の第6文に「公共事業」が出るので、なおさら混ざりやすい。統計を出しているのが総務省だという点も、記事の前提です。日本では統計を総務省が所管している——これを知っていると、省名がすっと出ます。
tanah(土地)→ pertanahan=土地行政・土地に関すること。Badan Pertanahan Nasional(国家土地庁)という役所の名前にも入っています。調査名の型Survei(調査)+Statistik(統計)+分野名。Survei Sosial Ekonomi Nasional(全国社会経済調査、略称 Susenas)/Sensus Penduduk(国勢調査)。
survei(標本調査)とsensus(全数調査)は別物です。住宅・土地統計調査は標本調査なのでsurvei。調査の性格まで語が担っています。Menurut …(〜によれば)で文を始めるのが、出典を示すときの型です。Berdasarkan …(〜に基づけば)も同じ働き。どちらでも通ります。
mencapai kesepakatan(合意に達する)/sulit dicapai(届きにくい)。数量と組む動詞の手札mencapai(〜に達する)/tercatat(〜と記録される)/berjumlah(〜の数である)/menembus(〜を突破する)/naik menjadi(〜に増える)。
この記事では mencapai(第1文)と tercatat(第2文)が両方出ます。同じ語を繰り返さないのが報道文の文体です。
sekitar(約)=kurang lebih/kira-kira。「約900万戸」の「約」を落とさない——統計の記事では、概数か実数かが情報です。見出しでは tembus(突破する)を使いました。見出しは短く強く、本文は正確に——同じ内容でも、置く場所で語を変えます。
dari(〜から)だと出どころを示す語になり、「総住宅数から出た割合」という別の意味に読めてしまいます。rasio dari よりporsi terhadap。terhadap の働きterhadap=〜に対して。比較・対象・態度を示します。sikap terhadap …(〜に対する態度)/kebal terhadap …(〜が効かない)/rasio utang terhadap PDB(GDPに対する債務比率)。
統計で「AがBに占める割合」と言うときの定型は「terhadap B」です。経済記事で毎日出る形なので、覚えておくと役に立ちます。dengan porsi 13,8 persen terhadap total unit rumah=「総戸数に対して13.8パーセントの割合で」。dengan で前の節にぶら下げると、文を切らずに情報を足せます。
点(.)が桁区切り、コンマ(,)が小数点——日本と逆。この記事は 9 juta/3,85 juta/100.000 と、両方の使い方が出ます。パーセントの書き方persen と綴って書くのが書き言葉の作法です。% 記号も使えますが、報道の本文では persen。13,8 persen/hampir 80 persen/sekitar 24 persen。
persentase(百分率)/seperseratus(100分の1)/persen poin(パーセントポイント)。この記事のパーセントは3つ:13,8(空き家率)/80(増加率)/24(国土に占める割合)。どれも「何に対する割合か」が違います。数字だけ拾って、対象を落とさないこと。
出典(Menurut Survei … Kementerian …)|何が(rumah kosong di seluruh Jepang)|どうなった(mencapai sekitar 9 juta unit)|その割合(dengan porsi 13,8 persen terhadap total unit rumah)|評価(tertinggi sepanjang pencatatan)。
日本語は「〜に達し、〜となった」と述語が2つですが、インドネシア語では1つの述語(mencapai)に dengan でぶら下げるほうが締まります。dan … dan … と3つ並べると、論説体になりません。
総務省の住宅・土地統計調査によれば、全国の空き家は約900万戸に達し、総住宅数に占める割合は13.8%と過去最高となった。
模範訳Menurut Survei Statistik Perumahan dan Pertanahan Kementerian Dalam Negeri dan Komunikasi, rumah kosong di seluruh Jepang mencapai sekitar 9 juta unit, dengan porsi 13,8 persen terhadap total unit rumah — tertinggi sepanjang pencatatan.
日本語の「〜に達し、〜となった」を、そのままmencapai … dan menjadi … と訳すと、文が平板になります。
インドネシア語の論説体は述語を1つに絞って、残りを dengan / yang / — でぶら下げるのが基本です。mencapai を主動詞にして、割合は dengan で、評価はダッシュで足す。
dan を3回使ったら、いったん立ち止まる——これは日→イ全般に効く目安です。
総務省を Kementerian Pekerjaan Umum(公共事業省)にしてしまう。今日いちばん影響の大きい取り違えです。記事の出典が、別の役所になってしまいます。
しかもこの記事には第6文に「公共事業」が出るので、読み手には矛盾して見えます。省庁名は、意味から組み立てず、定訳を引き出す——今日の記事がいちばん言いたいのはここです。
「〜に占める割合」を rasio dari にしてしまう。dari(〜から)は出どころを示す語です。「総住宅数から出た比率」と読めてしまいます。
比較の相手を示すのはterhadap。porsi 13,8 persen terhadap total unit rumah。統計で「AがBに占める割合」と言うときの定型なので、そのまま覚えてしまうのが早いです。
dan で3つつないでしまう。「〜し、〜し、〜となった」をdan … dan … と並べると、報告書ではなく口頭説明のように響きます。
述語を1つに決めて、残りは dengan / yang / ダッシュ。bahasa baku の課題では、この整理がそのまま出来ばえに出ます。
図2 数字の変換表。色をつけた2行だけ、通貨の確認が要ります。
うち、賃貸用でも売却用でもなく、別荘などの二次的住宅にも当たらない「その他空き家」は385万戸と、20年前の212万戸から8割近く増えた。
訳に使う語di antara mereka(彼らのなかで)/antara lain(とりわけ・たとえば)/perantara(仲介者)。「うち」を受ける形Di antaranya=「そのうち」。-nya が前の文の 9 juta unit を受けています。
言い換え:Dari jumlah tersebut(その数のうち)/Sebagian di antaranya(そのうちの一部は)。どれも通りますが、Di antaranya がいちばん短い。
前の文とのつながりを示す語なので、落とすと第1文と第2文が切れてしまいます。antar-(〜間の)は接頭辞で別語です。antargenerasi(世代間の)/antarnegara(国家間の)。くっつけて1語で書きます。
-kan が入ると方向が逆になります。menyewa(自分が借りる)/menyewakan(人に貸す)。今日の mewarisi / mewariskan と、まったく同じ作りです。「〜用の」の出し方untuk + 受動で「〜されるための」。untuk disewakan(貸し出すための)/untuk dijual(売るための)。
rumah untuk disewakan=賃貸用の家。rumah sewa(賃貸住宅)でも通じますが、「用途として」を出すなら untuk + 受動が正確です。
この文は「AでもBでもなく」なので、tidak diperuntukkan bagi penyewaan maupun penjualan と名詞で並べる手もあります。diperuntukkan bagi …=「〜のために充てられている」。untuk(〜のため)から作った動詞で、制度や施設の用途を言うときの硬い形です。
beli(買う)→ membeli/dibeli/pembeli(買い手)/pembelian(購入)。方向を間違えない「売却用」は「売るための」です。untuk dijual(売られるための)。untuk beli(買うための)だと方向が逆——「買うための家」になってしまいます。
売り手から見るか、買い手から見るか。統計の区分は「その家をどうするつもりか」なので、持ち主の側から見た用途です。だから「売る」。
jual beli のように2語をセットで覚えると、方向で迷わなくなります。この文には方向を持つ語が3つあります。disewakan(貸す)/dijual(売る)と、のちに第10文の mewarisi(相続する)。今日は方向がテーマの記事です。
sekunder(二次の)↔primer(一次の)。sektor primer(第一次産業)/data sekunder(二次資料)。別荘の言い方vila(別荘)/rumah peristirahatan(保養用の家)/rumah liburan(休暇用の家)。vila がいちばん短く、seperti vila(別荘などの)と例示に使えます。
istirahat(休む)→ peristirahatan(休息の場)。tempat peristirahatan terakhir(最後の休息の場=墓)という言い方もあります。「その他空き家」は統計上の区分名なので、引用符でくくって置きます。“rumah kosong lainnya”。lain(他の)→ lainnya(その他の)/selain itu(そのほかに)。
長い主語のあとには、必ず述語を立てる必要があります。tercatat 3,85 juta unit(385万戸と記録されている)。
sebanyak 3,85 juta unit とだけ書くと、「385万戸ぶんの」という修飾句になり、文が閉じません。述語がないまま終わってしまう——長い主語の文で、いちばん起きやすい事故です。第1文が mencapai、第2文が tercatat。同じ「〜である」を、動詞を変えて言っています。統計の記事では、この使い分けが文体を作ります。
meningkat tajam(急増する)/meningkat dua kali lipat(倍増する)/tingkat kemiskinan(貧困率)。「8割」の出し方8割=80 persen。日本語の「割」はインドネシア語にありませんので、パーセントに直します。hampir(ほぼ)を添えてhampir 80 persen。
比較の起点は dari:meningkat hampir 80 persen dari 2,12 juta unit pada 20 tahun lalu(20年前の212万戸から8割近く増えた)。dari が「どこから」を示します。pada 20 tahun lalu=20年前に。ここに yang は要りません。yang は名詞を後ろから説明する語なので、時を示す句には付けません。2,12 juta unit yang 20 tahun lalu とすると宙に浮きます。
前の文を受ける(Di antaranya)|主語(”rumah kosong lainnya” — yang tidak diperuntukkan bagi … dan tidak pula tergolong …)|述語(tercatat 3,85 juta unit)|変化(meningkat hampir 80 persen dari 2,12 juta unit pada 20 tahun lalu)。
主語が長いので、ダッシュで囲って挿入句にすると読みやすくなります。“rumah kosong lainnya” — 説明 — tercatat …。これで主語と述語が視覚的に近づきます。
うち、賃貸用でも売却用でもなく、別荘などの二次的住宅にも当たらない「その他空き家」は385万戸と、20年前の212万戸から8割近く増えた。
模範訳Di antaranya, “rumah kosong lainnya” — yang tidak diperuntukkan bagi penyewaan maupun penjualan dan tidak pula tergolong rumah sekunder seperti vila — tercatat 3,85 juta unit, meningkat hampir 80 persen dari 2,12 juta unit pada 20 tahun lalu.
この文の主語は日本語で40字以上あります。訳しているうちに、主語を訳し終えたことを忘れる——そこで述語が抜けます。
防ぎ方は先に述語を決めておくこと。「その他空き家は、385万戸と記録されている」——骨はこれだけです。骨を先に置いてから、修飾を戻していきます。
そしてダッシュで挿入句にすると、主語と述語が視覚的に近づきます。読み手にとっても、書き手にとっても楽な形です。
「売却用」を untuk beli にしてしまう。方向が逆です。売るのは持ち主のほう——untuk dijual(売られるための)。
jual(売る)とbeli(買う)はjual beli(売買)というセットで覚えると、方向で迷いません。統計の区分は、いつも持ち主の側から見た用途です。
述語が消えて、文が閉じなくなる。長い yang 節のあとに sebanyak 3,85 juta unit と続けると、「385万戸ぶんの」という修飾句になり、主語に述語がつかないまま文が終わります。
tercatat を入れるだけで着地します。tercatat 3,85 juta unit(385万戸と記録されている)。主語が長い文では、述語を先に決めておく——それだけで防げます。
時を示す句に yang をつけてしまう。2,12 juta unit yang 20 tahun lalu と書くと、yang のあとに述語がなく、宙に浮きます。
yang は名詞を後ろから説明する語で、後ろに述語が要ります。時を示すだけなら pada 20 tahun lalu——前置詞だけで足ります。
増加率は前回調査の伸びを下回ったが、それをもって歯止めがかかったとは言いがたい。
訳に使う語laju inflasi(インフレ率)/laju pertumbuhan ekonomi(経済成長率)/laju penularan(感染の広がり方)。「どれくらいの勢いで進むか」を表す語です。tingkat との違いtingkat(水準・率)は「ある時点の値」。laju は「変化の勢い」。
tingkat kemiskinan(貧困率=いまの水準)/laju pertambahan penduduk(人口増加率=増える勢い)。
この文は「増加率」=変化の勢いなのでlaju。persentase kenaikan(上昇の百分率)でも通じますが、laju のほうが「勢い」が出ます。tambah(加える)→ bertambah(増える)/pertambahan(増加という現象)/penambahan(追加すること)/tambahan(追加ぶん)。4つの形が全部あるので、どれを使うかは「何を指すか」で決めます。
Menimbang, … は法令文の冒頭(「〜を考慮し」)に必ず出る語です。daripada とほぼ同義ketimbang=daripada(〜よりも)。意味は同じで、ketimbang のほうが報道文でよく見るという程度の差です。
lebih rendah ketimbang survei sebelumnya(前回調査より低い)/lebih baik ketimbang tidak sama sekali(何もしないよりまし)。
会話では dari で済ませることもありますが、書き言葉では daripada / ketimbang が正式です。survei sebelumnya=前回調査。sebelum(〜の前)→ sebelumnya(その前の・以前は)。第7文の「こうした事態」を受ける tersebut と同じく、前を指す語です。
仲間:belum bisa dikatakan(まだそうとは言えない)/tidak serta-merta berarti(ただちに〜を意味しない)/terlalu dini untuk menyimpulkan(結論づけるのは早い)。否定しきらないための語これは「歯止めはかかっていない」と言い切っているのではありません。「かかったとは言いにくい」——判断を保留しているのです。
tidak tertahan(止まっていない)と書くと断定になり、書き手の慎重さが消えます。統計の記事では、この差が大きい。数字はまだ動いている途中だから、言い切らないわけです。
留保の語を、断定に置き換えない——今日の記事で6回出てくる作業です。bahwa(〜ということ)は節をまるごと目的語にする接続詞。書き言葉では律儀に置きます。この記事には bahwa が3回出ます。
menahan laju inflasi(インフレを抑える)/menahan diri(自制する)。「歯止めがかかった」は状態「歯止めがかかった」は「止まっている」という完了した状態です。tertahan(ter- =そうなっている)がぴったり。telah(すでに)を添えてtelah tertahan。
dapat dihentikan(止めることができる)だと可能の話になり、しかも「誰が止めるのか」という主語が要ります。ここは「勢いのほうが止まっている」ので、主語は laju pertambahannya。
ter- は行為者を書かずに済ませる形——だからこそ、この文にちょうど合います。「歯止め」は日本語固有の比喩です。rem(ブレーキ)を使ってdirem(ブレーキがかけられた)とも書けますが、tertahan のほうが硬く、報道文になじみます。比喩は、定型がなければ意味に開く——こちらは開く側です。
hanya karena …(〜というだけの理由で)/berdasarkan hal itu saja(それだけに基づいて)/semata-mata karena …(もっぱら〜のゆえに)。hanya を落とさないkarena angka tersebut(その数字ゆえに)だけだと、ふつうの理由になります。hanya が入って初めて「それだけを根拠にするのは不十分だ」という書き手の判断が出ます。
この記事は、こういう小さな語に主張が乗っている。hanya/sulit/masih/sekadar/patut——どれも1〜2語ですが、消すと記事が別のものになります。angka tersebut=その数字。「それ」が指しているのは、前半の「増加率が前回を下回った」という事実です。tersebut は前を指す語——この記事に4回出ます。
譲歩(Meski laju pertambahannya lebih rendah ketimbang survei sebelumnya)|主節(sulit dikatakan bahwa …)|その中身(pertambahan itu telah tertahan hanya karena angka tersebut)。
日本語の「〜が、〜とは言いがたい」は譲歩 + 留保という2段構えです。Meski …, sulit dikatakan bahwa … と置けば、そのまま形が写せます。
増加率は前回調査の伸びを下回ったが、それをもって歯止めがかかったとは言いがたい。
模範訳Meski laju pertambahannya lebih rendah ketimbang survei sebelumnya, sulit dikatakan bahwa pertambahan itu telah tertahan hanya karena angka tersebut.
「歯止めがかかったとは言いがたい」と「歯止めはかかっていない」は、違う主張です。
前者は「まだ判断できない」。後者は「止まっていないと断言する」。統計の記事で、書き手が前者を選んでいるのには理由があります——数字がまだ動いている途中だからです。
sulit dikatakan bahwa … という形を、そのまま覚えてしまうのがいちばん早い。この記事だけでなく、論説文ならどこでも使えます。
「歯止めがかかった」を dapat dihentikan にしてしまう。問題が2つあります。①主語がない——誰が止めるのかが書かれていません。②可能形になっている——「止めることができる」で、「止まっている」という完了の状態ではありません。
laju pertambahannya telah tertahan(その増加の勢いは止められている)。ter- は「そうなっている状態」を表すので、行為者を書かずに済みます。この文にちょうど合う形です。
「それをもって」の hanya が消える。karena angka tersebut だけだとふつうの理由になり、「それだけでは足りない」という含みが消えます。
hanya karena angka tersebut。1語ですが、この文の主張そのものです。留保の語は、いちばん最初に落ちる語——訳し終えたあとに、原文からこの種の語だけを拾い直すと防げます。
空き家の増加と切り離せないのが所有者不明土地である。
訳に使う語masalah(問題)とほぼ同義。persoalan のほうがやや硬いので、論説文向きです。日本語の「〜のが」を主語に立てる日本語の「〜と切り離せないのが所有者不明土地である」は、「のが」で主語を作る形です。インドネシア語には、この「のが」に当たる語がありません。
だから中身のある名詞を補います。Persoalan yang tak dapat dilepaskan dari … adalah …(〜と切り離せない問題は〜だ)。Persoalan やHal/Faktor/Isu を頭に置くと、文が立ち上がります。
日本語の「〜のが」「〜ということ」は、訳すときに名詞を足す——日→イで毎回出てくる調整です。A adalah B(AはBである)といういちばん素直な形で置けます。merupakan(〜である)でも同じ。報道文なら adalah が短くて読みやすい。
tak dapat dilepaskan dari …=「〜から切り離すことができない」。日本語とほぼ同じ絵です。luput とは違うluput(免れる・見逃す)→ tidak luput dari=「〜を免れない・〜から漏れない」。これは別の意味です。tidak luput dari kritik(批判を免れない)。
「切り離せない」=2つが結びついている。「免れない」=逃げられない。日本語で言い直すと、違いがはっきりします。
言い換え:tak terpisahkan dari(〜と不可分の)/berkaitan erat dengan(〜と密接に関わる)。どちらも通ります。tak はtidak の短縮形で、書き言葉でも使えます。tak dapat/tak terpisahkan/tak jarang(第6文に出ます)。短いぶん、論説文で好まれます。
harga melonjak(値段が跳ね上がる)/lonjakan kasus(症例の急増)。「ぴょんと跳ねる」が原イメージで、数字の急な動きにそのまま使えます。-nya で動詞を名詞にするmelonjak(急増する/動詞)+-nya=melonjaknya(急増すること/名詞のかたまり)。
この -nya は「〜すること」を作る働きです。datangnya musim hujan(雨季の到来)/naiknya harga(値段が上がること)/diperluasnya sasaran(対象が広げられたこと)。
前置詞のあとに動詞を置きたいときに使います。dari melonjaknya rumah kosong(空き家の急増から)。dari のあとに裸の動詞は置けないので、-nya で名詞にしてから置くわけです。peningkatan(増加)/pertambahan(増加)でも通じます。melonjaknya のほうが「勢いよく増えた」という手ざわり。第3文で laju pertambahan を使ったので、ここは語を変える——同じ語を繰り返さない文体です。
日本語の「所有者不明」は「いない」ではなく「分からない」です。持ち主はいるはずだが、誰か特定できない——それがこの制度問題の核心なので、本文では正確に置きます。yang + -nya の形tanah yang pemiliknya tidak diketahui——yang のあとに「その所有者は」という小さな主語が入っています。-nya がtanah を受けている形です。
同じ作り:rumah yang atapnya rusak(屋根が壊れた家)/orang yang namanya tidak jelas(名前がはっきりしない人)。
「〜の◯◯が〜な△△」という日本語は、この形で写せます。第5文でも同じ形が出ます(yang jumlah ahli warisnya membengkak)。tahu(知る)→ mengetahui=知る/diketahui=知られている/pengetahuan=知識/ketahuan=ばれる。tidak diketahui=「知られていない=分からない」。
主語(Persoalan yang tak dapat dilepaskan dari melonjaknya rumah kosong)+adalah+述部(tanah yang pemiliknya tidak diketahui)。
A adalah B といういちばん単純な形です。ただしAが長い——「〜と切り離せない問題」まで全部が主語。adalah を見つけて左右に切ると、構造が見えます。
空き家の増加と切り離せないのが所有者不明土地である。
模範訳Persoalan yang tak dapat dilepaskan dari melonjaknya rumah kosong adalah tanah yang pemiliknya tidak diketahui.
「〜のが所有者不明土地である」——この「のが」は、日本語が主語を作るための道具です。インドネシア語には対応する語がありません。
だから中身のある名詞を足します。Persoalan(問題)/Hal(こと)/Faktor(要因)/Isu(論点)。どれを選ぶかで、文の性格が少し変わります。
ここではPersoalan——「これは問題である」という書き手の立場が、この一語に入ります。Hal だと中立になり、記事の調子とずれます。補う名詞も、選ぶ語です。
「切り離せない」を tidak luput dari にしてしまう。luput は「免れる・見逃す」。tidak luput dari kritik(批判を免れない)のように使う語で、「2つが結びついている」という意味ではありません。
tak dapat dilepaskan dari(切り離すことができない)/tak terpisahkan dari(不可分の)。lepas(離す)/pisah(分ける)——どちらも「2つを引き離す」絵です。日本語で言い直してから語を選ぶと、こういう取り違えは減ります。
主語に立てる名詞が抜ける。Yang tak dapat dilepaskan dari … adalah … とyang だけで始めることも文法上は可能ですが、報道文では中身のある名詞を置くほうが読みやすい。
Persoalan yang …/Hal yang …/Faktor yang …。頭に名詞があると、読み手が「何の話か」を最初につかめます。
ここから先は、第5文以降の逐語解説です
この先では、残る9文について 日本語原文 → 訳に使う語 → 訳の設計 → 模範訳 → よくあるつまずき の順に見ていきます。あわせて収録しているのは次の内容です。
- ahli waris と pewaris——相続の矢印。「誰から誰へ」を書いてから語を選ぶという一手(図3)
- mewarisi と mewariskan——接辞ひとつで、受け取る側と遺す側が入れ替わります
- 「以下」は paling banyak——kurang dari(未満)では、10万円ちょうどが入りません(図4)
- 留保のスコープ——disebut/diperkirakan/seolah-olah…padahal/patut dipertanyakan。この記事は留保でできています(図5)
- 「生煮えのまま」は何に掛かるか——数字ではなく、運用のほうです(図6)
- 模範訳の全文、提出前の点検リスト(図8)、復習語彙12











