うろ覚えの1語が、文の意味を変える。
作文例(添削前)は44点。語数と3段落の形は条件どおりですが、テーマの核心であるパートタイム(paruh waktu)やフルタイム化(penuh waktu)、2027年が、本文に一度も出てきません。さらに dibenarkan・uji batu・seramutan・asuransi・kebanyakan と、意味の通らなくなる語が5つ以上重なりました。
制度を知らなくても読めるよう、インドネシアの先生の「身分」からゼロで解説し、赤ペンをまとめて見てから、1文ずつ直していきます。
①テーマの核心語——テーマBの中心は、パートタイム(paruh waktu)の先生をフルタイム(penuh waktu)にすること。題名にも本文にもその語がないと、どれだけ文が正しくても、テーマから外れたと見なされます。
②うろ覚えの語——dibenarkan(正しいと認められる)、uji batu、seramutan(辞書にない)、asuransi(保険)、kebanyakan(大部分の)。上級の語ほど、誤用したときの減点が大きくなります。確実に使える語で、正確に書くのが先です。
③構成——本論(Isi)には「何が変わるか・評価と根拠・懸念」の3つを入れ、結論(Penutup)では新しい論点を出さずにまとめます。
書く前に、5つの問いを押さえておくと、テーマBで何を書けばよいかが見えてきます。
インドネシアの公立学校の先生は、大きく3つの身分に分かれます。1つめは PNS(Pegawai Negeri Sipil)、日本でいう正規の公務員です。2つめが、今回のテーマにもなった PPPK(Pegawai Pemerintah dengan Perjanjian Kerja)。直訳すると「労働契約にもとづく政府職員」で、契約で雇われる公務員のことです。2014年のASN法でできた身分で、PNSと同じくASN(国家の文民職員)に含まれますが、終身雇用ではなく、1年以上の契約を、必要と勤務評価に応じて更新していきます。
3つめは、公務員ではない非正規の先生(guru honorer)です。学校や自治体が独自に雇ってきた先生で、給与はきわめて低く、2024年の調査では、非正規・契約の先生の74%が月200万ルピア(約1万8000円)未満、20.5%が50万ルピア未満でした。いちばん低い地域の最低賃金(約204万ルピア)にも届きません。
政府は、この非正規の先生を公務員にするため、2020年11月に最大100万人の先生をPPPKとして採用する選考を発表し、2021年から大規模な採用を進めてきました。
2023年の新しいASN法(UU 20/2023)は、非正規職員の整理を2024年12月までに終えるよう定めました。ところが、選考を受けても採用枠(formasi)が足りず、PPPKになれない人が大勢残りました。そのまま契約を切れば、多くの人が職を失います。
そこで2025年1月、行政改革大臣の決定(KepmenPANRB 16/2025)で新しくつくられたのが PPPK paruh waktu(パートタイムのPPPK)です。公務員(ASN)にはなれますが、契約は1年ごと。給与は「非正規だったときの額」か「地域の最低賃金」以上が基準とされたものの、所属先の予算しだいで、低いまま据え置かれることもあります。勤務評価が「良」以上で予算があれば、選考なしでフルタイムに移れるしくみです。
作文例が書こうとした「kontraknya perjanjian seramutan(契約が不安定)」は、まさにこの状態のことです。正しくは kontraknya berjangka pendek dan upahnya tidak menentu(契約期間が短く、給与も安定しない)と書けます。
2026年10月6日、アブドゥル・ムッティ初等中等教育相は、地方代表議会(DPD)第3委員会との会議で、パートタイムのPPPKの先生24万2482人を、2027年1月1日から、選考なしで自動的にフルタイムのPPPKにすると説明しました。身分も中央政府の職員に移します。テーマBの「Penataan status guru PPPK paruh waktu menjadi pegawai penuh waktu」は、このことです。
そのための給与と手当には、約23兆ルピア(約2000億円)を充てます。PPPKの先生全体(93万5316人)も、2027〜2029年に段階的に中央政府の職員へ移し、条件を満たす人は選考を経てPNSにもなれます。先生の不足分46万4856人は、正規の公務員(CPNS)の採用で補い、2027年に募集、2028年から配置する計画です。2026年末で期限を迎える非正規の先生にも、勤務を続けられる特例を設けます。
この方針は、8月18日に国会の指導部と政府の調整会議で固まっていました。大臣は、ねらいとして先生の身分の確定と、教育の継続を挙げています。
インドネシアでは、2014年の地方自治法で、小学校・中学校(SD・SMP)は県・市、高校(SMA・SMK)と特別支援学校は州が受け持つことになっています。公立学校の先生を雇い、給与を払うのも、基本的には自治体です。
ところが、自治体の財政力には大きな差があります。8月の会議では、先生の給与が自治体の財政を圧迫してきたことが、中央に移す理由に挙げられ、自治体の側からは、職員の給与を払うための財政支援と、パートタイムPPPKのフルタイム化の前倒しを求める声が伝えられました。先生を中央政府の職員にすれば、給与は国の予算から払われ、住む地域によって先生の身分と待遇が左右されにくくなると期待されています。
作文例の結びには、論文(makalah)や報告書(laporan)の作成といった事務負担が出てきます。インドネシアの先生にとって、これは長年の悩みでした。2009年の規則では、昇格に必要な点数を集めるために、授業のほかに論文などの研究発表が求められ、申請書類をそろえて審査を受けなければなりませんでした。
2023年の規則で、昇格の評価は、上司との業績評価の結果を点数に換算する方式に改められ、申請書類と審査団は廃止されています。作文で事務負担を取り上げるなら、結論ではなく、本論の「懸念」として書くのが効果的です(STEP 3 のあとの「構成」を参照)。
Rakyat Merdeka(2026年10月8日)Mulai 2027, Pemerintah Tata Status Ratusan Ribu Guru
Maklumat(2026年10月8日)地方代表議会第3委員会でのムッティ大臣の説明(10月6日)
JPNN(2026年10月9日)24万2482人を2027年1月1日にフルタイム化
NU Online(2026年8月19日)国会と政府、パートタイムPPPK教員のフルタイム化で一致
NU Online(2026年8月19日)PPPKの先生を中央政府の職員に(自治体の財政への圧迫)
detikJabar(2026年5月7日)公立学校の非正規教員は2026年まで——SE Mendikdasmen 7/2026
detikFinance(2025年1月)KepmenPANRB 16/2025 の中身——パートタイムPPPK
CNBC Indonesia(2025年12月25日)非正規職員制度の終わりと、ASNの人数
内閣官房(2018年12月5日)PP 49/2018:PPPKの契約は1年以上、更新可
Bisnis.com(2020年11月24日)ナディム大臣、2021年の教員PPPK選考を発表
iNews(2024年5月)IDEAS調査:非正規教員の74%が月200万ルピア未満
BPK カリマンタン・トゥンガ州(2020年)UU 23/2014 と高校の州への移管
Komunitas Belajar(2023年1月)PermenPANRB 1/2023 で変わったこと
iNews(2026年10月4日)アジア大会2026の最終メダル順位
目安は25分。2つのテーマから1つを選び、題をつけて、100〜150語で書きます。
1. Pilih satu tema dari dua tema di bawah, lalu tentukan judul karangan.
2. Panjang karangan 100-150 kata.
3. Tulis dengan jelas dan gunakan ejaan yang benar.
4. Gunakan bahasa Indonesia yang baku.
5. Kerangka karangan: A. Pendahuluan B. Isi C. Penutup
6. Tema karangan:
A. Evaluasi prestasi olahraga Indonesia seusai Asian Games 2026
B. Penataan status guru PPPK paruh waktu menjadi pegawai penuh waktu
日本語にすると:次の指示にしたがって作文を書きなさい。①下の2つのテーマから1つを選び、題をつける。②長さは100〜150語。③明確に、正しい綴りで書く。④標準的なインドネシア語(bahasa baku)を使う。⑤構成は「A. 序論 B. 本論 C. 結論」。
テーマA:2026年アジア大会のあとの、インドネシアのスポーツの成績の評価
テーマB:パートタイムのPPPK教員を、フルタイムの職員へと身分を整えること
(参考)テーマAの背景:愛知・名古屋で開かれたアジア大会で、インドネシアは金5・銀11・銅23の計39個、メダル順位は16位でした。目標の金メダル4個は超えましたが、前回(2022年の杭州大会、金7・13位)より順位を下げています。今回の作文例はテーマBを選びました。
書き終えてから開く:テーマBで使える語彙 12
| インドネシア語 | 意味 |
|---|---|
| guru PPPK paruh waktu | パートタイムのPPPK教員 |
| diangkat menjadi PPPK penuh waktu | フルタイムのPPPKに任用される |
| tanpa seleksi | 選考なしで |
| pegawai pemerintah pusat | 中央政府の職員 |
| penataan status | 身分の整理 |
| kepastian status/kepastian kerja | 身分の確定/雇用の安定 |
| guru honorer/guru non-ASN | 非正規の教員 |
| formasi | 採用枠 |
| kesejahteraan guru | 教員の待遇・生活の安定 |
| beban administrasi | 事務負担 |
| anggaran | 予算 |
| mutu pendidikan | 教育の質 |
テーマBで書いた作文です。まずは赤ペンを入れた全体を、ひと目で見てください。波線が直すところ、①〜⑱は直しの番号で、下の添削版と、STEP 3 の解説の番号に対応しています。
よく書けている語もあります。jam terbang(経験)、Kendati demikian(とはいえ)、lumrah(ありふれた)、seyogianya(本来〜すべき。綴りは要注意)は、上級の作文らしい語の選び方です。
Pendahuluan1Pembahasan① rendahnya gaji guru sudah menjadi lumrah terjadi② di Indonesia. 2Selama ini sering diangkat pembahasan tersebut③, namun tidak pernah dibenarkan④, sehingga guru-guru yang seyogyanya dipandang⑤ masih sulit menjalankan tugas yang berat tetapi gajinya rendah⑥.
Isi3Pegawai Pemerintah dengan Perjanjian Kerja⑦ menjadi uji batu⑧ bagi guru supaya mereka dapat jaminan dalam pekerjaan⑨. 4Meskipun jam terbangnya cukup, mereka⑩ masih berada di dalam⑪ kondisi yang sulit karena kontraknya perjanjian seramutan⑫. 5Dalam kondisi saat ini, PPPK diharapkan⑬ menjadi asuransi bagi pekerjaan guru di masa depan⑭.
Penutup6Kendati demikian masih⑮ ada tantangan bahwa masih ada kewajiban yang harus ditempuh oleh guru yaitu kebanyakan tugas yang harus ditanggung seperti penulisan⑯ makalah dan laporan. 7Tanpa ada penanganan secara penuh⑰ dan cepat, kualitas SDM guru beserta pendidikan tidak meningkat⑱.
Pendahuluan1Persoalan① rendahnya gaji guru sudah lama menjadi perbincangan② di Indonesia. 2Isu tersebut sering diangkat③, tetapi tak kunjung dibenahi④ sehingga guru-guru, yang seyogianya dihormati⑤, masih harus memikul tugas berat dengan gaji yang rendah⑥.
Isi3Skema Pegawai Pemerintah dengan Perjanjian Kerja (PPPK)⑦ diharapkan menjadi batu loncatan⑧ bagi guru untuk memperoleh kepastian kerja⑨. 4Namun, meskipun jam terbang mengajarnya sudah tinggi, guru PPPK paruh waktu⑩ masih berada dalam⑪ kondisi sulit karena kontraknya berjangka pendek dan upahnya tidak menentu⑫. 5Dalam kondisi seperti ini, pengangkatan mereka menjadi PPPK penuh waktu mulai 2027⑬ diharapkan memberikan jaminan bagi masa depan guru⑭.
Penutup6Kendati demikian,⑮ masih ada tantangan lain, yaitu beratnya beban administrasi yang harus ditanggung guru, seperti penyusunan makalah dan laporan⑯. 7Tanpa penanganan yang menyeluruh⑰ dan cepat, mutu guru dan pendidikan kita tidak akan meningkat⑱.
①テーマから外れた——テーマBの中心は「パートタイムのPPPKを、2027年からフルタイムにする」ことです。作文例は教員の給与と PPPK 一般の話で、paruh waktu も penuh waktu も2027年も出てきません(図7)。言葉の誤りをすべて直しても、このずれは残ります。
②意味が通らなくなる語——dibenarkan(正しいと認められる)、uji batu(batu uji でも「試金石」)、seramutan(辞書にない)、asuransi(保険)、kebanyakan(大部分の)。どれも、読み手には別の意味で伝わります(図8)。
③構文——二重述語の menjadi lumrah terjadi(第1文)、途中で主語が入れ替わる第2文、bahwa 節を取らない tantangan(第6文)。
ここからは、題名と7つの文を1つずつ、書いた文(添削前)→ 修正案 → 意味 → 直すところの順に並べています。添削前の波線は直すべき箇所、修正案のマーカーは書き換えた箇所、丸数字は直しの番号です。
第3文以降の添削と、模範作文をまとめて収録しています。あわせて収録しているのは次の内容です。
- uji batu・seramutan・asuransi——うろ覚えの語の直し方(第3〜5文)
- テーマの核心を書き足す——paruh waktu と penuh waktu、2027年(第4・5文)
- tantangan bahwa・ditempuh・kebanyakan・beserta——結びの2文の構文(第6・7文)
- 構成の見直し——本論に入れる3つと、結論で新しい論点を出さない理由(図10)
- 模範作文(日本語訳つき)、使える表現11、背景メモ、次に狙う3点











