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oleh・dengan・tanpa——前置詞句の掛かり先ひとつで、訳文の中身が入れ替わる|教員不足をめぐる論説を見出し+全11文で精読する

精読 JAPANESIA

oleh・dengan・tanpa——前置詞句の掛かり先ひとつで、訳文の中身が入れ替わる

非常勤教員の常勤化(PPPK登用)をめぐる論説です。定員枠は増えたのに、実際に埋まったのは必要数の三分の二にとどまる——その落差から話が始まります。
訳す上での急所は語彙ではなく、修飾句がどこに掛かるかです。ditanggung sendiri は何を受けるのかoleh transfer pusat は何を削るのかdengan honor jauh di bawah upah minimum は比較項なのか条件句なのかtanpa NUPTK は誰に付くのかこの4か所だけで、訳文の意味がまるごと入れ替わります
やっかいなのは、掛け方を間違えても「意味の通る日本語」ができてしまうことです。だから訳している最中には気づけません。今日は訳し終えたあとの見直し手順まで、型として持ち帰ってもらいます。
否定も4種類出ます。bukan berarti/bukanlah A melainkan B/bukan semata-mata/bukan tidak mungkin——どれも「〜ない」ですが、日本語では全部違う形になります。
そして比喩。banting setir/di atas kertas/gali lubang tutup lubang/kambing hitam/ego sektoral/tumpang tindih/menganga直訳で流すと、論説の温度が消えます

全11文図解8点用語解説27約279語

今日のねらい:修飾句の掛かり先を、訳す前に紙の上で決める

この記事で崩れるのは語彙ではありません。難語はほとんど出てこないのに、訳文が壊れる。原因はいつも同じで、修飾句をどの語に掛けたかです。

たとえば第1文。yang bertahun-tahun ditanggung sendiri oleh pendidik(教員が長年ひとりで背負ってきた)——これを「授業負担と収入の保障」の両方に掛けると、「収入の保障を教員が背負う」という文になります。背負えるのは不均衡のほうで、保障ではありません内容が破綻する掛け方は、必ず誤りです

第3文も同じ構造です。tergerusnya ruang belanja pegawai oleh transfer pusat yang tak kunjung bertambaholeh のうしろが削っている側で、yang tak kunjung bertambahその transfer pusat に掛かります。ここを落とすと「なぜ財政が苦しいのか」が消え、段落の因果が切れます

そして第9文。jumlah guru tanpa NUPTKjumlah [guru tanpa NUPTK]——「NUPTKを持たない教員」の数です。jumlah [guru] tanpa [NUPTK] と読むと「番号が減った」になり、「これは成果だ」という文脈と正反対になります。

共通しているのは前置詞です。oleh/dengan/tanpa読みながら「この前置詞句は、直前の名詞に付くのか、文全体の動詞に付くのか」を一度立ち止まって決める——今日はそれを型にします。

訳す前の構えだけ、先に

解説に入る前に、この記事に固有の構えを4つ渡しておきます。訳の中身には触れません。

① 長い主語は、述語が来るまで終わっていない。第1文の主語は Pengangkatan guru honorer menjadi PPPK ですが、そこから述語 belum sepenuhnya mencerminkan までは30語以上あります。あいだに挟まった yang …全部、主語の説明です。読みながら訳し始めると、途中で骨が見えなくなりますまず ternyata を探して、そこから述語を拾うのが確実です。

② ダッシュ(—)で挟まれた部分は、いったん外す。第2文に — proporsi yang, terhadap target awal, malah lebih rendah ketimbang capaian dua tahun lalu — という挿入があります。外しても文は成立します。まず外して骨を立て、それから「何と何を比べているのか」を確かめて戻します

③ ketimbang の左右は、必ず同じ品詞でそろえる。この記事には ketimbang2回出ます。比較の語は左右がそろっていないと、比較になりません動詞句どうし名詞句どうしか。そろわない読み方は、その時点で誤りだと判定できます。

④ 略語は4つ。どれも本文に説明がない。PPPK/Dapodik/APBD/NUPTK。インドネシアの読者には自明なので、記事は説明しません。日本語にするときは、括弧で短く開く——それが訳注の役目です。開かないまま出すと、日本語の読者には意味のない4文字が並ぶだけになります。

それから、この記事は論説です。事実の報告ではありません。皮肉と留保が、語の選び方に埋め込まれていますhanya(〜にすぎない)/berkisar(〜程度にとどまる)/lazim(お決まりの)/belum tentu(〜とは限らない)。こうした語を落とすと、批判が事実報告に化けます

STEP 1 まず自分で訳す(全4段落・約279語)

目安は40分。段落ごとに訳し、原文の留保や皮肉のニュアンスも落とさないことを条件にします。略語には訳注を付けてください

MENAMBAL KEKURANGAN GURU DENGAN JANJI YANG BELUM TUNTAS

果たされていない約束で、教員不足を繕う

[1] Pengangkatan guru honorer menjadi PPPK, yang sejak awal diklaim sebagai ikhtiar untuk mengakhiri ketimpangan antara beban mengajar dan kepastian penghasilan yang bertahun-tahun ditanggung sendiri oleh pendidik di daerah terpencil, ternyata belum sepenuhnya mencerminkan perbaikan tata kelola yang dijanjikan. Kendati formasi yang dibuka tahun ini disebut naik dibandingkan periode sebelumnya, jumlah yang benar-benar terisi hanya berkisar dua pertiga dari kebutuhan yang tercatat di Dapodik — proporsi yang, terhadap target awal, malah lebih rendah ketimbang capaian dua tahun lalu — sementara sisanya terganjal keengganan sejumlah pemerintah daerah untuk mengusulkan formasi yang konsekuensi anggarannya harus ditanggung APBD.

[2] Alasan yang paling sering dikemukakan bukanlah ketiadaan calon, melainkan kerentanan fiskal daerah yang, seiring tergerusnya ruang belanja pegawai oleh transfer pusat yang tak kunjung bertambah, membuat kepala daerah banting setir: mereka lebih memilih memperpanjang kontrak tenaga honorer dengan honor jauh di bawah upah minimum ketimbang menambah beban permanen. Di atas kertas, kebijakan itu tampak berhemat. Dalam praktiknya, persoalan hanya dipindahkan — gali lubang tutup lubang — ke tahun anggaran berikutnya.

[3] Tumpang tindih kewenangan antara pusat, yang memegang kendali atas kuota, dan daerah, yang menanggung pembiayaannya, memperlihatkan ego sektoral yang lazim dijadikan kambing hitam setiap kali pemerataan guru dibicarakan. Jangankan menempatkan guru bersertifikat di sekolah pelosok, memastikan bahwa mereka yang telah lulus seleksi benar-benar bertugas di daerah penempatannya pun belum tentu mudah, lantaran pengajuan pindah dengan berbagai dalih terus melambung.

[4] Bukan berarti program ini gagal. Berkurangnya jumlah guru tanpa NUPTK dan menurunnya rasio kelas rangkap di sejumlah provinsi bukan capaian kecil. Namun menganggap persoalan selesai begitu status kepegawaian berubah adalah penyederhanaan yang menyesatkan. Selama distribusi masih ditentukan oleh kemampuan fiskal daerah, dan bukan semata-mata oleh peta kebutuhan, bukan tidak mungkin kekurangan guru justru kian menganga di titik yang paling membutuhkannya.

Disadur dari Kontan.co.id

STEP 2 1文ずつ、骨格に割ってから直す

ここから先は、1文ずつ①骨格に割る → ②よくあるつまずきを見る → ③直した訳を確かめる → ④語をさかのぼるの順で進みます。訳例を先に見ないほうが、身につきます

まず、この記事に出る略語4つを先に開いておきます。本文には説明がありません。ここが決まらないと、どの段落も宙に浮きます。

略語は、訳す前に正式名称を開いてしまう 教育行政の記事では、この4つがほぼ毎回そろって出ます 略語 正式名称 訳注の付け方 PPPK Pegawai Pemerintah dengan Perjanjian Kerja =雇用契約にもとづく政府職員 PPPK(政府任用契約職員) 正規公務員(PNS)とは別枠。 身分は安定するが任期がある Dapodik Data Pokok Pendidikan =教育基礎データ 学校・教員・生徒を登録する全国台帳 Dapodik(教育基礎データ) 「必要数がここに記録されている」 =公式の根拠だ、という含み APBD Anggaran Pendapatan dan Belanja Daerah =地方の歳入歳出予算 APBD(地方予算) 国のほうは APBN。1文字違いで 中央と地方が入れ替わります NUPTK Nomor Unik Pendidik dan Tenaga Kependidikan =教員・教育職員の固有番号 NUPTK(教員固有番号) これがないと公的な処遇や研修の 対象から外れる = 未登録の状態 訳注は「短く、1回だけ」 初出で括弧を1つ付け、2回目からは略語のまま。毎回開くと、かえって読みにくくなります。

図1:本文に説明のない略語は4つ初出で短く開いて、あとは略語のまま——それが読みやすい訳注の付け方です。

見出し

MENAMBAL KEKURANGAN GURU DENGAN JANJI YANG BELUM TUNTAS

文の骨格

MENAMBAL(動詞・繕う)|KEKURANGAN GURU(何を・教員不足)|DENGAN JANJI YANG BELUM TUNTAS(何で・果たされていない約束で)。主語がありません——誰が繕っているのかは、本文を読んで初めてわかります。

よくあるつまずき

menambal を「埋める」と平らに訳す。tambalつぎはぎで穴をふさぐことです。道端のtambal ban(パンク修理)の看板を思い出してください。「解決した」のではなく「間に合わせで塞いだ」——見出しの時点で、記事の態度が出ています「繕う」「その場しのぎでふさぐ」と訳すと、そのニュアンスが残ります。

belum tuntas を「未完成」で済ませる。tuntasやり残しなくやり切るという語です。selesai(終わる)より強い。belum tuntasまだやり切られていない・決着していない「果たされていない約束」と訳すと、約束したのに、という皮肉まで運べます。

原文(再掲)

MENAMBAL KEKURANGAN GURU DENGAN JANJI YANG BELUM TUNTAS

訳例

果たされていない約束で、教員不足を繕う

語注
tambal = つぎはぎで直すtambalすきまや穴に当て物をしてふさぐmenambalふさぐ・繕う・埋め合わせる
tambal ban(パンク修理)——インドネシアの道端でいちばんよく見る看板のひとつです。menambal gigi(歯を詰める)/tambalan(継ぎ当て・詰め物)/menambal kekurangan(不足を埋め合わせる)。
menambal kas negara(国庫の穴をふさぐ)のように、財政の記事でもよく出ます
「埋める」と訳すと、含みが消えますmenambal には「根本から直したわけではない」という含みがあります。穴があいたところに、間に合わせで当て物をした——それが原義です。
だから見出しに使われると、記事は最初から批判の側に立っていることがわかります。
近い語との違い:mengatasi(克服する・解決する)/memperbaiki(修繕する・改善する)/menutupi(覆い隠す)/menambal間に合わせでふさぐ)。
「繕う」「その場しのぎでふさぐ」——日本語でも同じ温度の語を選びます
kekurangan=不足(kurang=足りない → ke-kurang-an)。kekurangan guru教員不足kekurangan gizi(栄養不足)/kekurangan air(水不足)。
「繕う・間に合わせでふさぐ」。tambal ban(パンク修理)と同じ語
tuntas = やり残しなくtuntas徹底的に・完全に片づいたmenuntaskanやり切る・完遂するpenuntasan完遂tuntas dibahas(審議し尽くされる)。
selesai(終わる)との違いは「残りがないか」です。selesaiとりあえず終わったtuntasやり残しがない
belum tuntasまだ決着していない・やり切られていない「未完成」より「果たされていない」のほうが、約束という語と噛み合います。
janji = 約束janji(約束)→ berjanji(約束する)/menjanjikan(約束する・見込ませる)/dijanjikan約束された第1文に出ます)/perjanjian(協定・契約)。
janji politik(政治的公約)/menepati janji(約束を守る)/ingkar janji(約束を破る)。
この記事は「約束」と「実際」の落差を書いています。見出しの janji が、第1文の dijanjikan で受け直されている——見出しと本文は、語でつながっています
dengan〜で・〜をもって手段)。「果たされていない約束で繕う」——手段そのものが空約束だという、かなり強い皮肉です。
「果たされていない約束」。tuntas=やり残しなく片づく
見出しに主語がありません誰が繕っているのか——政府なのか、地方なのか。本文を読むと、その両方だとわかります
インドネシアの見出しはmeN- の動詞で始めて主語を省くことがよくあります。日本語の見出しが「〜へ」「〜を求める」で終わるのと同じ省略です。
訳すときも、無理に主語を補わなくてかまいません「教員不足を繕う」で、日本語の見出しとしては自然に立ちます。
第1文 <第1段落>

Pengangkatan guru honorer menjadi PPPK, yang sejak awal diklaim sebagai ikhtiar untuk mengakhiri ketimpangan antara beban mengajar dan kepastian penghasilan yang bertahun-tahun ditanggung sendiri oleh pendidik di daerah terpencil, ternyata belum sepenuhnya mencerminkan perbaikan tata kelola yang dijanjikan.

文の骨格

主語:Pengangkatan guru honorer menjadi PPPK
[挿入]yang sejak awal diklaim sebagai ikhtiar untuk mengakhiri ketimpangan antara [beban mengajar] dan [kepastian penghasilan] yang bertahun-tahun ditanggung sendiri oleh pendidik di daerah terpencil
述語:ternyata belum sepenuhnya mencerminkan
目的語:perbaikan tata kelola yang dijanjikan
主語と述語のあいだに30語以上あります。ternyata を見つけたら、そこから述語です。

よくあるつまずき

yang bertahun-tahun ditanggung sendiri を「授業負担と収入の保障」の両方に掛ける。これをやると「収入の保障を教員が背負う」という文になり、内容が破綻します。背負えるのはketimpangan(不均衡)のほうです。
判定のしかたditanggung sendiri oleh + 人「その人が一手に引き受ける」収入の保障は、引き受ける対象になりません内容が破綻する掛け方は、その時点で候補から外します
○ 授業負担と収入の保障とのあいだの不均衡=僻地の教員が長年ひとりで背負ってきたもの

dijanjikan を「保障された」と訳す。dijanjikan約束された保障されたdijamin です。行政を批判する論説では「約束したのに」が皮肉の核なので、ここを「保障」に置き換えると、論旨そのものが消えます見出しの janji と、この dijanjikan は同じ語——呼応しているところを弱めないのが原則です。

belum sepenuhnya を「まだ〜していない」で済ませる。sepenuhnya(十分に・完全に)が落ちると、「まったく映していない」という強い否定に読めます。原文は「まだ十分には映していない」——部分的には映しているという留保つきです。論説の否定は、強さの段階まで含めて訳します

原文(再掲)

Pengangkatan guru honorer menjadi PPPK, yang sejak awal diklaim sebagai ikhtiar untuk mengakhiri ketimpangan antara beban mengajar dan kepastian penghasilan yang bertahun-tahun ditanggung sendiri oleh pendidik di daerah terpencil, ternyata belum sepenuhnya mencerminkan perbaikan tata kelola yang dijanjikan.

訳例

非常勤教員のPPPK(政府任用契約職員)への登用は、僻地の教員が長年ひとりで背負ってきた、授業負担と収入の保障とのあいだの不均衡を終わらせる取り組みだと当初から喧伝されてきたが、実のところ、約束されたガバナンスの改善をまだ十分には映し出していない。

語注
angkat = 持ち上げるangkat(持ち上げる)→ mengangkat持ち上げる・任命する・採用するpeng-angkat-an任用・登用
mengangkat menteri(大臣を任命する)/diangkat menjadi …(〜に登用される)/pengangkatan pegawai(職員の採用)/anak angkat(養子)/angkat tangan(手を挙げる・お手上げ)。
A menjadi BAをBにするmenjadi変化の着地点を示します。
guru honorer = 非常勤教員honorer謝金で雇われている・非正規のhonor=謝礼・報酬)。tenaga honorer非常勤職員第3文に出ます)。
インドネシアの学校では、正規公務員(PNS)ではない教員が長く多数を占めてきました。身分も報酬も不安定で、それがこの記事の出発点です。
guru tetap(常勤教員)/guru tidak tetap(GTT)(非常勤教員)/guru bantu(補助教員)。
honor賃金(gaji/upah)とは別の語で、「謝金」に近いのがポイントです。第3文の honor jauh di bawah upah minimum(最低賃金をはるかに下回る報酬)で、この差が効いてきます。
PPPKPegawai Pemerintah dengan Perjanjian Kerja(雇用契約にもとづく政府職員)。PNS(正規公務員)とは別枠で、任期があります
「非常勤教員のPPPKへの登用」。angkat=持ち上げる→任用する
diklaim = 主張されている(距離を置く語)klaim(英語 claim から)→ mengklaim主張する・(自分のものだと)言い張るdi-klaim主張されている
大事なのは、書き手がその主張に同意していないことです。diklaim と書いた時点で「そう言われてはいるが」という距離が生まれます。
比べてみてください:dinilai(評価される・中立)/disebut(〜と言われる・中立)/dianggap(みなされる)/diklaim言い張られている・やや懐疑的)。
「〜とされてきた」より「〜だと喧伝されてきた」のほうが、この距離を訳出できます。
ikhtiar = 努力・試みikhtiar(目的に向けた)努力・方策・取り組みアラビア語由来の語で、やや改まった書き言葉です。
berikhtiar(努力する)/ikhtiar terakhir(最後の手立て)。
近い語:upaya(取り組み・いちばん一般的)/usaha(努力・事業)/langkah(措置)/terobosan(打開策)。
sejak awal当初から「最初からそう言われてきた。ところが——」という時間の対比を作っています。
sebagai〜としてdiklaim sebagai + 名詞〜であると主張されるsebagai のうしろは名詞句です。
「〜だと主張されてきた」。diklaim書き手が距離を置く語
timpang = 釣り合いが取れていないtimpang(かたよった・跛行の)→ ke-timpang-an不均衡・格差
ketimpangan sosial(社会格差)/ketimpangan ekonomi(経済格差)/ketimpangan akses(アクセス格差)/timpang tindih ではなく tumpang tindih(重複・第6文に出ます)——音が似ていますが別語です。
近い語:kesenjangan(隔たり・ギャップ)/disparitas(格差)/ketidakadilan(不公正)。
antara A dan B は、まず括るantara [A] dan [B]dan が境界です。
A = beban mengajar(授業の負担)
B = kepastian penghasilan(収入の確かさ・保障)
負担は重いのに、収入は保証されない——この2つが釣り合っていない、という意味です。
先にAとBを括ってから、中身を訳す。順番を逆にすると、どこで切れるのかわからなくなります
kepastian=確かさ(pasti=確実な → kepastian hukum=法的安定性)。penghasilan=収入(hasil=成果 → menghasilkan=生み出す)。
そして、このうしろの yang bertahun-tahun ditanggung sendiri は、ketimpangan に掛かりますAとBの両方に掛けると、意味が壊れます——次の図で確かめます。
「AとBのあいだの不均衡」。dan が境界。まず括ってから中身を訳す
cermin = 鏡cermin(鏡)→ mencerminkan映し出す・反映するtercermin映っているbercermin鏡を見る・省みる
mencerminkan kenyataan(現実を反映する)/tercermin dalam data(データに表れている)。
「実態がそこに映っているか」という言い方です。「実現していない」と訳すよりも、「映し出していない」のほうが原文に近い。
否定の強さを、段階で持つbelumまだ〜ないこれから起きうる
tidak〜ない単純な否定
belum sepenuhnyaまだ十分には〜ない部分的にはできている
sama sekali tidakまったく〜ない
sepenuhnya を落とすと、留保が消えて全否定になります。論説ではこの一語で書き手の立ち位置が変わるので、必ず拾います。
ternyata実のところ・ふたを開けてみれば期待と現実の落差を示す語で、ここから述語が始まる合図にもなります。
tata kelolaガバナンス・管理運営のしくみtata=秩序+kelola=管理する)。tata kelola pemerintahan(行政ガバナンス)/tata kelola perusahaan(コーポレートガバナンス)。「制度の回し方」と考えるとつかみやすい語です。
「まだ十分には映していない」。sepenuhnya を落とすと全否定になります
この文でいちばん時間をかけるべきなのは訳語探しではなく、線を引くことです。
①主語に線を引く(Pengangkatan … PPPK)→②コンマからコンマまでを外す③ternyata 以降が述語。ここまでで骨が立ちます
そのうえで挿入の中身に戻り、antara A dan B を括り、yang … ditanggung が何に掛かるかを内容で決める
この順番を守ると、30語の挿入があっても崩れません。逆に頭から訳し始めると、必ずどこかで骨を見失います
掛かり先は、位置ではなく「内容が成り立つか」で決めます yang bertahun-tahun ditanggung sendiri oleh pendidik —— これは何を受けているのか 候補は3つあります ① ketimpangan(不均衡)  ② beban mengajar(授業負担)  ③ kepastian penghasilan(収入の保障) 位置だけ見れば ③ がいちばん近い。しかし、それで意味が成り立つかを確かめます。 ③ に掛けると、こうなります 「収入の保障を、教員が長年ひとりで背負ってきた」 保障は、背負う対象になりません。 背負うのは負担・損失・責任・不利益です。 → 内容が破綻する。候補から外す ① に掛けると、こうなります 「その不均衡を、教員が長年ひとりで背負ってきた」 負担は重いのに、収入は保証されない。 そのしわ寄せを、僻地の教員が引き受けてきた。 → 意味が通る。これが正しい掛け先 判定のしかた:ditanggung sendiri oleh + 人 = 「その人が一手に引き受ける」 引き受けられるのは —— beban(負担)/kerugian(損失)/risiko(リスク)/tanggung jawab(責任)/biaya(費用) 引き受けられないのは —— kepastian(確かさ)/jaminan(保証)/hak(権利)のような、与えられる側のもの この判定は、今日の記事で3回使えます 第1文 yang … ditanggung sendiri / 第3文 oleh transfer pusat / 第9文 tanpa NUPTK どれも「掛け方を間違えても、意味の通る日本語ができてしまう」型です。だから内容で判定します。 内容が破綻する掛け方は、その時点で誤り —— これが今日いちばん強い武器になります。

図2:掛かり先は、距離ではなく内容で決めます「背負えるものか」を確かめるだけで、この文は崩れません。

第2文 <第1段落>

Kendati formasi yang dibuka tahun ini disebut naik dibandingkan periode sebelumnya, jumlah yang benar-benar terisi hanya berkisar dua pertiga dari kebutuhan yang tercatat di Dapodik — proporsi yang, terhadap target awal, malah lebih rendah ketimbang capaian dua tahun lalu — sementara sisanya terganjal keengganan sejumlah pemerintah daerah untuk mengusulkan formasi yang konsekuensi anggarannya harus ditanggung APBD.

文の骨格

[譲歩]Kendati formasi … disebut naik dibandingkan periode sebelumnya,
主語:jumlah yang benar-benar terisi
述語:hanya berkisar dua pertiga dari kebutuhan yang tercatat di Dapodik
[挿入・ダッシュ]— proporsi yang, terhadap target awal, malah lebih rendah ketimbang capaian dua tahun lalu —
[対比]sementara sisanya terganjal keengganan …
ダッシュの中は、外しても文が成立します。まず外して骨を立てます。

よくあるつまずき

formasi を「編成」と訳す。行政用語としての formasi(採用の)定員枠です。「今年開かれた定員枠」=今年募集をかけた採用枠「編成」だと組織づくりの話に見えてしまいます。この記事には formasi が2回出るので、取り違えると影響が広がります。

periode sebelumnya を「昨年同時期」と訳す。原文は「前回(の募集期)」としか言っていません。「昨年」も「同時期」も、原文にない情報の追加です。訳で情報を足すと、事実を1つ作ってしまいます原文が曖昧なら、訳も同じだけ曖昧に——それが翻訳の原則です。

hanya berkisar の2語をまとめて落とす。hanya〜にすぎないberkisar〜程度にとどまるどちらも書き手の評価です。「三分の二である」と訳すと事実報告になり、「三分の二程度にすぎず」と訳して初めて批判のトーンが残ります。論説で程度副詞を落とすと、記事の性格が変わります

助詞が抜けて、係りが読めなくなる。後半は「予算上の帰結をAPBDで負担せねばならない定員枠の申請に、一部の地方政府が二の足を踏む」という三重の入れ子です。日本語では、いったん切ってしまってかまいません1文を1文で返さなければならない決まりはない——読める訳のほうが、役に立ちます

原文(再掲)

Kendati formasi yang dibuka tahun ini disebut naik dibandingkan periode sebelumnya, jumlah yang benar-benar terisi hanya berkisar dua pertiga dari kebutuhan yang tercatat di Dapodik — proporsi yang, terhadap target awal, malah lebih rendah ketimbang capaian dua tahun lalu — sementara sisanya terganjal keengganan sejumlah pemerintah daerah untuk mengusulkan formasi yang konsekuensi anggarannya harus ditanggung APBD.

訳例

今年開かれた定員枠は前回より増えたとされるものの、実際に埋まった数はDapodik(教育基礎データ)に記録された必要数の三分の二程度にすぎず——当初目標に照らせば、二年前の達成率をむしろ下回る比率である——残りは、予算上の帰結をAPBD(地方予算)で負担せねばならない定員枠の申請に、一部の地方政府が二の足を踏むために滞っている。

語注
日常語と行政用語で、意味が違いますformasi は日常では「隊形・フォーメーション」です(formasi pesawat=編隊飛行/formasi 4-4-2)。
ところが人事・行政の文脈では「定員枠・採用枠」を指します。formasi CPNS(公務員採用枠)/formasi guru(教員採用枠)/membuka formasi採用枠を設ける・募集をかける)/formasi kosong(欠員枠)。
この記事はまさに人事の話なので、迷わず「定員枠」です。
membuka の使いどころmembuka開く枠・機会・道を「開く」という言い方は、インドネシア語でも日本語でもよく似ています。
membuka lowongan(求人を出す)/membuka peluang(機会を開く)/membuka akses(アクセスを開く)/membuka lahan(土地を拓く)。
formasi yang dibuka tahun ini今年設けられた定員枠yang dibuka受動の関係節で、誰が開いたか(中央政府)は書かれていません
この語は第2文の後半にもう一度出ます——mengusulkan formasi(定員枠を申請する)。同じ語なので、同じ訳語でそろえます
「定員枠」。行政では採用枠の意味(日常では「隊形」)
kisar = 回る・巡るkisar(回る)→ berkisar〜のあたりを動く・〜程度であるberkisar antara A dan B(AとBのあいだで推移する)/kisaran harga(価格帯)。
「ぴったりその数ではないが、その辺りだ」という語です。正確な数を言わずに規模だけ示すときに使います。
近い語:sekitar(およそ)/kurang lebih(だいたい)/mencapai(〜に達する・上向きの含み)。mencapai と berkisar は方向が逆——mencapai は「そこまで届いた」、berkisar は「その辺りにとどまる」
hanya を落とさないhanya〜だけ・〜にすぎない数量の前に置くと「少ない」という評価が入ります
hanya berkisar dua pertiga三分の二程度にすぎないhanyaberkisar2つ重なって、控えめさを強めています
同じ働きの語:baru(まだ〜だけ)/tidak lebih dari(〜を超えない)/sebatas(〜の範囲にとどまる)。
論説文では、こうした程度副詞が主張そのものです。数字だけ訳して副詞を落とすと、批判が事実報告に化けます
dua pertiga三分の二分子 + per + 分母seperempat=四分の一/tiga perlima=五分の三)。
terisi埋まっているisi=中身 → mengisi=満たす → ter-isi=満たされた状態)。benar-benar本当に・実際に——これも「言われている数」との対比を作る語です。
「三分の二程度にすぎない」。hanyaberkisar の2語で控えめさを強めている
ganjal = つっかい・かませ物ganjalすきまに挟むもの。机ががたつくときに脚の下に挟む紙——あれです。
mengganjalつっかえる・引っかかるter-ganjalつかえて進まないganjalan障害・わだかまり
ada yang mengganjal di hati(心に引っかかるものがある)/proyek terganjal izin(許可が下りずに事業が止まる)。
止まったのではなく、何かが挟まって進まない——その絵が見えるかどうかで訳語を選びます。
enggan = 気が進まないenggan〜する気になれない・したがらないke-enggan-an消極性・二の足を踏むこと
enggan berkomentar(コメントを避ける)/keengganan masyarakat(住民の消極姿勢)。
「拒否した」のではありません反対もしないが、動きもしない——それが enggan です。「消極性」より「二の足を踏む」のほうが、この温度に近い。
近い語:menolak(拒否する・はっきりした行為)/ragu(ためらう)/menahan diri(自制する)。
konsekuensi anggarannya harus ditanggung APBDその予算上の帰結を地方予算で負担しなければならない枠を申請すれば、そのぶん自分の財布から出る——だから申請しないこの因果が、第2段落の主題につながります
「二の足を踏むために滞る」。ganjal=つっかい。enggan=拒否ではなく、気が進まない
この文はダッシュを外すと、驚くほど短くなります
Kendati formasi … disebut naik …, jumlah yang benar-benar terisi hanya berkisar dua pertiga …, sementara sisanya terganjal ….
枠は増えた。しかし埋まったのは三分の二。残りは地方が申請しないので止まっている——骨はこれだけです。
長い文を前から訳そうとせず、まず外せるものを外すダッシュ・コンマに挟まれた部分は、たいてい外せます
ダッシュの中は、何と何を比べているのか — proporsi yang, terhadap target awal, malah lebih rendah ketimbang capaian dua tahun lalu — まず、比較の骨だけ取り出します proporsi / lebih rendah / ketimbang capaian dua tahun lalu A(今年の比率) が B(二年前の達成率) より低い。 lebih … ketimbang … で1組です。 terhadap target awal は「基準」 比べているのは「実数」ではありません。 当初目標に対して何%埋まったか、という比率です。 terhadap = 〜に照らして/〜に対して malah は「予想と逆」を示す 枠が増えたのだから、達成率も上がるはず。 ところが下がっている —— それが malah です。 justru / sebaliknya も同じ働きをします よくある取り違え:比べる相手を「今年の枠の数」にしてしまう 文頭に「枠は前回より増えた」とあるので、そちらに引っぱられます。しかしダッシュの中の比較は 「達成率どうし」です。増えたのは枠、下がったのは達成率 —— 別々のものを言っています。 ketimbang の直後にあるものが、比べる相手です。そこだけ見れば迷いません。 ダッシュを外して骨を立てる —— 手順は3つだけ ① ダッシュ(—)に挟まれた部分を、いったん全部外す ② 残った文で、主語と述語を確定させる(jumlah … hanya berkisar dua pertiga …) ③ 外した部分に戻り、ketimbang の左右をそろえてから、日本語の位置を決める

図3:増えたのは「枠」、下がったのは「達成率」ketimbang の直後を見れば、比べる相手は一目で決まります。

ここから先は、第3文以降9文の逐語解説です

この先では、残る9文について骨格 → よくあるつまずき → 直した訳 → 語をさかのぼった解説を、1文ずつ収録しています。あわせて収録しているのは次の内容です。

  • oleh・dengan・tanpa の掛かり先——今日いちばん崩れる3か所を、1枚の図に
  • ketimbang の左右をそろえる——動詞句どうしか、名詞句どうしか。判定は形だけで済みます
  • memastikan bahwa …——bahwa が続いたら「確保する」ではありません。形式標識で機械的に判定する方法
  • 否定の4種類——bukan berarti/bukanlah A melainkan B/bukan semata-mata/bukan tidak mungkin の訳し分け
  • 比喩7つの定訳——banting setir/gali lubang tutup lubang/kambing hitam/menganga ほか
  • 訳し終えたあとの見直し手順5つ復習語彙12、次に狙う2点
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