署名は2002年、批准は2014年。いちばん困っていた国が、いちばん長くためらった
1997年、エルニーニョによる長い乾期が、スマトラとカリマンタンの森を消えない燠火に変えました。農園を拓くために放たれた火は制御を失い、煙は国境で止まりませんでした。970万ヘクタールが焼け、5か国が煙に覆われた。
2002年、ASEAN10か国は越境煙害汚染協定(AATHP)に署名します。ところが最も利害の大きい国が、最も長く批准を控えた。理由は2つ——森林主権への懸念と、焼くのが安いという農園側の事情です。
今日の設問は4問中2問が Mengapa(なぜ)。理由を聞かれる問題では、本文にある理由を数えることが答えの形を決めます。今日の本文は、第3段落に理由をはっきり2つ並べています。
語の面では、pencemaran/kedaulatan/meratifikasi/payung hukum/tanpa pandang bulu ——国際協定の記事で必ず出る語を整理します。
今日のねらい:理由を聞かれたら、本文にある理由を「数える」
4段落構成で、文の数は5・5・5・4。第1段落が出来事、第2段落が協定の成立、第3段落が遅れた理由、第4段落が批准とその後。段落の役割がきれいに分かれています。
設問は4問。Mengapa(なぜ)が2問、Apa yang dilakukan(何をしたか)が1問、Apa keuntungan(どんな利点か)が1問。数量を答える問いはひとつもありません。数字は9,7 juta hektare と lima negara と年号だけです。
今日の急所は「理由の数」です。設問3が聞いているのは批准が遅れた理由。本文の第3段落は、Sebagian kalangan … khawatir …(主権への懸念)と Ganjalan lain datang dari …(農園側の事情)——はっきり2つ並べています。Ganjalan lain(もうひとつの障害)という語が、「2つ目がある」と教えてくれています。
そして第2段落の Kesadaran bahwa persoalan itu tidak dapat diatasi sendirian(一国だけでは解決できないという認識)。これが設問1の答えの核です。「近隣国に影響した」だけでは、協定を結ぶ理由の半分にしかなりません。
音声に入る前に、聞くときの構えだけ確かめておきます。内容には触れません。
① 「もうひとつある」を示す語を待つ。Ganjalan lain(別の障害)/Selain itu(そのほか)/Faktor lain(別の要因)/antara lain(とりわけ)。この手の語が聞こえたら、理由や項目が複数あるという合図です。Mengapa の設問では、ここが答えの個数を決めます。
② 固有名詞は、略称が来るまで待つ。Persetujuan ASEAN tentang Pencemaran Asap Lintas Batas (AATHP)/Dewan Perwakilan Rakyat (DPR)/Undang-Undang Nomor 26 Tahun 2014。長い正式名称のあとに、必ずカッコで略称が来ます。答えるときは略称で通ります。
③ 年号は3つ出る。1997(火災)/2002(署名)/2014(批准)。そして「12年後」という言い方も出ます。どの年に何が起きたかを取り違えないこと。署名と批准は別の行為です。
④ 逆接と皮肉の語で身構える。Ironisnya(皮肉なことに)/justru(かえって・むしろ)/Kendati demikian(それにもかかわらず)/pun(〜もまた)。この記事は「期待と現実のずれ」で組み立てられています。逆接が聞こえたら、比べられている2つを両方確保します。
⑤ 疑問文が1つ混ざる。第3段落の最後に Apakah …? という問いかけの文があります。これは筆者の問いかけで、事実の報告ではありません。設問の答えにはなりませんが、記事の主張がどちら向きかを教えてくれます。
音声:MENUNDA RATIFIKASI PERSETUJUAN ASAP ASEAN
Mengapa negara-negara ASEAN perlu membuat persetujuan bersama mengenai kabut asap?
Apa yang dilakukan Indonesia pada 16 September 2014 terhadap persetujuan tersebut?
Mengapa pengesahan persetujuan itu tertunda begitu lama di Indonesia?
Apa keuntungan bagi negara tetangga jika Indonesia sungguh-sungguh menjalankan persetujuan itu?
Apakah menunda pengesahan perjanjian lingkungan demi kepentingan usaha dalam negeri adalah hal yang bijaksana? Jelaskan pendapat Anda dalam waktu 2 menit!
MENUNDA RATIFIKASI PERSETUJUAN ASAP ASEAN
ASEAN煙害協定の批准を先送りする
Kemarau panjang akibat El Nino pada 1997 mengubah hutan Sumatra dan Kalimantan menjadi bara yang tidak kunjung padam. Api yang dinyalakan untuk membuka lahan perkebunan menjalar tanpa kendali. Asapnya tidak berhenti di batas negara. Kabut tebal itu menutup bandar udara dan memaksa sekolah diliburkan. Peristiwa itu tercatat sebagai bencana lingkungan terburuk di kawasan ini.
Kebakaran tersebut menghanguskan sekitar 9,7 juta hektare lahan. Kabut asapnya menyelimuti lima negara tetangga, antara lain Malaysia, Singapura, dan Filipina. Kesadaran bahwa persoalan itu tidak dapat diatasi sendirian mendorong perundingan kawasan. Pada 10 Juni 2002 di Kuala Lumpur, sepuluh negara anggota ASEAN menandatangani Persetujuan ASEAN tentang Pencemaran Asap Lintas Batas (AATHP). Naskah itu mewajibkan setiap negara mencegah kebakaran, memantau titik api, dan berbagi informasi dengan negara terdampak.
Ironisnya, negara yang paling berkepentingan justru paling lama menahan diri. Sebagian kalangan dalam negeri khawatir pengawasan bersama mencederai kedaulatan atas hutan sendiri. Ganjalan lain datang dari usaha perkebunan besar yang memanfaatkan pembakaran karena murah. Malaysia dan Singapura pun berulang kali mendesak Indonesia agar segera mengesahkannya. Apakah kedaulatan sebuah negara terancam ketika ia berjanji menjaga udara yang dihirup bersama?
Pembahasan yang tersendat di Dewan Perwakilan Rakyat (DPR) baru tuntas pada 16 September 2014 melalui Undang-Undang Nomor 26 Tahun 2014. Indonesia menjadi penanda tangan terakhir yang meratifikasinya, dua belas tahun setelah kesepakatan itu. Pengesahan itu memberi payung hukum bagi kerja sama pemadaman dan pertukaran data. Kendati demikian, sudah saatnya penegakan hukum terhadap pembakar lahan dijalankan tanpa pandang bulu.
Disadur dari hukumonline.com
図1:段落ごとに役割が分かれています。設問2は第4段落、設問3は第3段落——設問の番号と段落の順は一致しません。
MENUNDA RATIFIKASI PERSETUJUAN ASAP ASEAN
語注menunda rapat(会議を延期する)/menunda pembayaran(支払いを先延ばす)/tanpa ditunda(遅滞なく)。
設問3にも tertunda が出ます。見出しの語が、そのまま設問に使われる——よくあることなので、見出しの語は必ず押さえておきます。見出しは動詞で始められますインドネシアの見出しはmeN- の動詞で始めることがよくあります。主語を省いて、行為だけを前に出す形です。
Menunda Ratifikasi …(批准を先送りする)/Menanti Keputusan …(決定を待つ)/Menyoal Kebijakan …(政策を問う)。
誰がやっているのかは、本文を読めばわかる——だから見出しでは省きます。日本語の見出しが「〜へ」「〜を求める」で終わるのと似た省略です。「遅れる」を表す語:terlambat(時間に遅れる)/tertunda(延期されている)/tersendat(つかえて進まない・第16文に出ます)/berlarut-larut(長引く)。
① penandatanganan(署名)——代表が文書にサインする。この記事では2002年。
② ratifikasi(批准)——国内の手続き(多くは議会の承認)を経て、その国が正式に拘束される。この記事では2014年。
署名しただけでは、まだ義務を負っていません。だから12年の空白が問題になるわけです。
meratifikasi(批准する)/mengesahkan(成立させる・承認する)/penanda tangan(署名国)/menandatangani(署名する)。「協定」を表す語persetujuan=協定・合意(setuju=賛成する から)
perjanjian=条約・契約(janji=約束 から)
kesepakatan=合意(sepakat=意見が一致する から)
traktat/konvensi/protokol=条約・議定書(国際法の正式な種別)
naskah=文書・原文(第10文で協定文書を指して使われます)
この記事はpersetujuan/kesepakatan/naskah を言い換えとして交互に使っています。同じものを指していると気づけると、文がつながります。asap=煙。kabut asap=煙霧・ヘイズ(kabut=霧)。英語の haze にあたります。この記事の中心語です。
動詞(MENUNDA)+目的語(RATIFIKASI PERSETUJUAN ASAP ASEAN)。主語がありません。誰が先送りしたのかは、本文の第3段落まで読まないとわかりません。
原文(再掲)MENUNDA RATIFIKASI PERSETUJUAN ASAP ASEAN
訳例ASEAN煙害協定の批准を、先送りする
実際、第3段落の1文目が Ironisnya, negara yang paling berkepentingan justru paling lama menahan diri.(皮肉にも、最も利害の大きい国が、最も長くためらった)——ここで主語が明かされます。
見出しが伏せたものは、本文のどこかで必ず明かされます。それがどこかを探しながら聞く——これが今日の聞き方です。
Kemarau panjang akibat El Nino pada 1997 mengubah hutan Sumatra dan Kalimantan menjadi bara yang tidak kunjung padam.
語注kemarau だけで乾期を指せます。kemarau panjang=長引く乾期/kemarau basah(雨の多い乾期)/musim pancaroba(季節の変わり目)。
El Nino(エルニーニョ)は乾期を長引かせ、La Nina(ラニーニャ)は雨を増やします。インドネシアの災害報道では、この2語が毎年出てきます。akibat = 「〜のせいで」akibat=結果・〜による。名詞の前に置くと「〜が原因で」という前置詞のように働きます。
akibat hujan deras(大雨のせいで)/akibat kelalaian(過失により)/berakibat fatal(致命的な結果を招く)/mengakibatkan=引き起こす/Akibatnya, …(その結果)。
似た働きの語:karena(〜だから・うしろに文も置ける)/disebabkan oleh(〜によって引き起こされた)/imbas dari(〜の余波で)。
akibat は名詞の前だけ——文を置きたいなら karena です。この記事は原因と結果の連鎖でできています。乾期 → 火 → 煙 → 越境 → 協定 → 遅れ。akibat/sehingga/Akibatnya のような語を拾うと、その連鎖がそのまま見えてきます。
mengubah A menjadi B=AをBに変える。menjadi が変化の着地点を示します。
berubah menjadi …(〜に変わる)/diubah menjadi …(〜に変えられる)/perubahan iklim(気候変動)。
綴りに注意:mengubah です。merubah は非標準(rubah は「キツネ」)。会話ではよく聞きますが、書き言葉では mengubah。主語が「乾期」であることに注目この文の主語はKemarau panjang(長い乾期)です。乾期が森を変えた——自然現象を主語にして、他動詞で受けています。
日本語なら「長い乾期によって、森は〜になった」と受動で書きたくなるところです。しかしインドネシア語のニュース文は、原因を主語にして能動で書くことをよくします。
Banjir menewaskan lima orang.(洪水が5人を死亡させた=洪水で5人が死亡した)
Gempa merusak ratusan rumah.(地震が数百軒を壊した)
訳すときは、日本語では受動に組み替えるほうが自然になります。hutan=森林。Sumatra/Kalimantan=火災が集中する2つの島。kebakaran hutan dan lahan(森林・土地火災)はkarhutla と略され、インドネシアの報道では定着した語です。
api(炎)/bara(燠)/abu(灰)/asap(煙)/nyala(燃え上がり)。
bara api=熾火/membara=くすぶる・燃えたぎる(比喩でも使う。semangat yang membara=燃える情熱)。
インドネシアの森林火災は泥炭地(lahan gambut)で地下にもぐって燃え続けるのが特徴です。炎が見えなくても消えていない——bara はその状態をよく表しています。tidak kunjung = いつまでも〜しないtidak kunjung + 動詞=いっこうに〜しない。待っているのに実現しないという、書き手のもどかしさが含まれます。
tidak kunjung padam(いっこうに消えない)/tidak kunjung selesai(いつまでも終わらない)/tidak kunjung turun(一向に下がらない)/tidak kunjung membaik(よくならない)。
belum padam(まだ消えていない)との違いは、「消えるはずなのに」という期待があるかどうかです。
padam=消える(memadamkan=消火する/pemadaman=消火・第18文に出ます)。lampu padam=停電。この文だけで、記事全体の絵が決まります。消えない火——それが12年動かなかった批准と重なる。1文目の比喩が、最後まで効いている作りです。
Kemarau panjang akibat El Nino pada 1997(主語・長い)mengubah(述語)hutan Sumatra dan Kalimantan(何を)menjadi bara yang tidak kunjung padam(何に)。主語が7語——述語が来るまで、まだ主語の途中です。
原文(再掲)Kemarau panjang akibat El Nino pada 1997 mengubah hutan Sumatra dan Kalimantan menjadi bara yang tidak kunjung padam.
訳例1997年、エルニーニョによる長い乾期は、スマトラとカリマンタンの森を、いつまでも消えない燠火に変えた。
この記事は数字がとても少ないのが特徴です。全19文で9,7 juta hektare/lima negara/sepuluh negara/dua belas tahunと年号だけ。そして設問は、数字をひとつも聞いていません。
数字が少ない記事では、耳が「語のつながり」に集中できます。今日はそちらに力を割いてください。
Api yang dinyalakan untuk membuka lahan perkebunan menjalar tanpa kendali. Asapnya tidak berhenti di batas negara.
語注menyalakan lampu(明かりをつける)/menyalakan mesin(エンジンをかける)/menyala(燃えている・光っている)/lampu menyala(ライトがついている)。
受動にしているのは、誰がつけたかを書かないためです。農園会社なのか小農なのか——そこを断定せずに事実だけ述べる書き方です。ただし第13文で、その主体が示唆されます。membuka lahan = 開墾するbuka(開く)→ membuka lahan=土地を拓く・開墾する。lahan=土地・用地(tanah より用途のある土地という感じ)。
pembukaan lahan(開墾)/lahan pertanian(農地)/lahan gambut(泥炭地)/alih fungsi lahan(土地の用途転換)。
perkebunan=プランテーション・大農園(kebun=畑・庭 から)。インドネシアでは主にアブラヤシとゴム。pertanian(農業一般)/perkebunan(換金作物の大規模農園)/kehutanan(林業)。
火で拓くのは、重機より圧倒的に安いから——その理由は第13文に出てきます。menjalar=這うように広がる(jalar=這う。tanaman menjalar=つる植物)。tanpa kendali=制御なしに(kendali=制御・手綱)。terkendali(制御されている)/pengendalian(制御・管理)。
lintas batas=越境の(lintas=横切る)。協定の正式名称にこの語が入っています——Pencemaran Asap Lintas Batas(越境煙害汚染)。
lintas の仲間:melintasi(横切る)/lintas sektor(分野横断の)/lalu lintas(交通)。この一文が、記事の主題ですAsapnya tidak berhenti di batas negara. ——たった6語。しかしこの記事のすべてがここにあります。
煙が国境で止まらないから、一国では解決できない。だから協定が要る。ところが協定は主権に触れる。だから批准が遅れた。
短い文ほど重要——これは制度や国際関係を扱う記事に共通する特徴です。長い文は説明、短い文は結論。
設問1が聞いているのも、結局この一文の含意です。berhenti=止まる(henti=停止)。menghentikan=止める/terhenti=止まってしまう/tanpa henti=絶え間なく/pemberhentian=停止・解任。
第2文:Api yang dinyalakan untuk membuka lahan perkebunan(主語+yang節)menjalar(述語)tanpa kendali(どのように)。
第3文:Asapnya(主語)tidak berhenti(述語・否定)di batas negara(どこで)。2文目は極端に短い——そこに主題が置かれています。
Api yang dinyalakan untuk membuka lahan perkebunan menjalar tanpa kendali. Asapnya tidak berhenti di batas negara.
訳例農園用地を拓くために放たれた火は、制御を失って広がっていった。その煙は、国境で止まりはしなかった。
第2文は12語、第3文は6語。説明を尽くしたあとに、言い切りを置く。読み手の記憶に残るのは、短いほうです。
音声で聞くときも同じです。短い文が来たら、そこは重要だと判断してよい。文の長さそのものが、書き手からの合図になっています。
Kabut tebal itu menutup bandar udara dan memaksa sekolah diliburkan.
語注pelabuhan=港(海)/bandar udara / bandara=空港/stasiun=駅/terminal=バスターミナル。
bandara は日常でも書き言葉でも使えます。会話では bandara のほうが普通です。
マレーシアでは bandar が「町」の意味でも使われます(Bandar Seri Begawan=ブルネイの首都)。煙で空港が閉まる、ということmenutup bandar udara=空港を閉鎖する。煙で視界(jarak pandang)が確保できず、離着陸ができなくなるためです。
関連語:jarak pandang(視程)/penerbangan dibatalkan(欠航)/ditutup sementara(一時閉鎖)/lumpuh(麻痺する)。
Bandara lumpuh akibat kabut asap.(煙霧で空港が麻痺した)——報道でそのまま出てくる形です。tebal=厚い・濃い。kabut tebal=濃い霧/asap tebal(濃い煙)/buku tebal(分厚い本)。反対は tipis(薄い)。
hari libur(休日)/liburan(休暇)/libur sekolah(学校の休み)/diliburkan=(学校・職場が)休みにされる。
sekolah diliburkan=学校が休みにされる。誰が決めたかは書きません——地方政府か学校か、そこは重要ではないからです。memaksa + 文paksa(強制する)→ memaksa=強いる・余儀なくさせる。memaksa + 主語 + 動詞で「〜せざるを得なくする」。
memaksa sekolah diliburkan(学校を休みにせざるを得なくした)/memaksa warga mengungsi(住民に避難を強いた)/terpaksa=やむを得ず/pemaksaan=強制。
主語は「濃い霧」です。自然現象が人に何かを強いる——第1文と同じ、原因を主語にする書き方です。
日本語に訳すときは「濃霧のために休校を余儀なくされた」と受動に組み替えるほうが自然です。1文に動詞が2つあります。menutup(閉鎖する)と memaksa(強いる)。dan で並んでいるので、両方とも「濃い霧」が主語です。
Kabut tebal itu(主語)menutup bandar udara(述語①)dan memaksa sekolah diliburkan(述語②)。1つの主語に、述語が2つ。dan の前後を両方つかむ文です。
原文(再掲)Kabut tebal itu menutup bandar udara dan memaksa sekolah diliburkan.
訳例この濃い煙霧のために、空港は閉鎖され、学校も休校を余儀なくされた。
数字で語る書き方と、具体的な出来事で語る書き方。この記事は次の第6文で数字(9,7 juta hektare)を出す前に、まず出来事で語っています。
順番に意味があります。先に絵を見せてから、規模を数字で裏づける——読み手を置き去りにしない構成です。
Peristiwa itu tercatat sebagai bencana lingkungan terburuk di kawasan ini.
語注ter- は誰がやったかを言わず、その状態を述べます。tercatat sebagai …=〜として記録されている・〜とされている。
大事な注意:ter- は目的語を取れません。tercatat sebagai + 名詞 の形なら正しく、tercatat + 目的語 とは書けません。「〜を記した文書」なら memuat/mencatat を使います。同じ作りの語をまとめてtercatat sebagai(〜として記録される)
dikenal sebagai(〜として知られる)
dianggap sebagai(〜とみなされる)
dinilai sebagai(〜と評価される)
disebut sebagai(〜と呼ばれる)
どれも「誰が」を書かない受動です。歴史や評価を述べるときの定番で、この記事にも第17文に penanda tangan terakhir という同じ発想の表現が出てきます。
sebagai=〜として。sebagai + 名詞 でひとかたまりです。peristiwa=出来事・事件(kejadian/insiden も近い)。bencana=災害(bencana alam=自然災害/bencana lingkungan=環境災害)。terburuk=最悪の(ter- + 形容詞=最上級)。
wilayah=領域・区域(領土・管轄範囲。wilayah negara=国土)
kawasan=地域・圏(複数の国をまとめた「圏」にもよく使う)
kawasan ASEAN(ASEAN地域)/kawasan Asia Tenggara(東南アジア地域)/kawasan industri(工業団地)/kawasan konservasi(保護区)。
この記事の kawasan ini は東南アジア地域を指しています。第8文の perundingan kawasan(地域レベルの交渉)も同じ語です。なぜ「地域」の語が重要なのかこの記事の主題は「一国では解決できない」ことです。だから国(negara)と地域(kawasan)という2つのスケールが繰り返し出てきます。
batas negara(国境)/negara tetangga(近隣国)/kawasan ini(この地域)/perundingan kawasan(地域交渉)/lintas batas(越境)。
語彙が主題を運んでいる——この記事はその作りがとてもはっきりしています。tetangga=隣人・近隣(negara tetangga=近隣国)。bertetangga(隣り合う)/ketetanggaan(近隣関係)。設問4にも negara tetangga が出ます。
Peristiwa itu(主語)tercatat sebagai(述語・受動)bencana lingkungan terburuk(何として)di kawasan ini(どこで)。第1段落を締める一文で、評価を述べています。
原文(再掲)Peristiwa itu tercatat sebagai bencana lingkungan terburuk di kawasan ini.
訳例この出来事は、この地域で最悪の環境災害として記録されている。
最後の1文だけが評価で、あとの4文は事実です。この構成は、あとの3つの段落でも繰り返されます。
段落の最後の1文に注意する——そこにその段落の要約か評価が置かれていることが多い。音声を聞くときも、段落の切れ目で集中を切らさない理由がここにあります。
図2:数字は4つだけ。しかも設問はひとつも数字を聞いていません。聞き逃しても立て直せる——そう構えておくと落ち着きます。
Kebakaran tersebut menghanguskan sekitar 9,7 juta hektare lahan.
語注roti hangus(焦げたパン)/hangus terbakar(焼け焦げる)/uangnya hangus(お金が消える=失効する)。
比喩でも使います。tiket hangus(チケットが無効になる)/poin hangus(ポイントが失効する)。「燃えて消える」から「無くなる」へ広がった語です。火事まわりの語をまとめてkebakaran=火災(bakar=焼く → terbakar=燃える → kebakaran=火災)
membakar=焼く/pembakaran=焼くこと・焼却(第13文に出ます)
pembakar lahan=土地に火を放つ者(第19文に出ます)
memadamkan=消火する/pemadaman=消火(第18文に出ます)
titik api=ホットスポット・火点(第10文に出ます)
この記事は「火」の語族だけで6語出てきます。bakar と api と padam ——3つの語根を押さえれば、全部つながります。hektare=ヘクタール(ha)。1 ha = 10.000 m²。9,7 juta hektare=970万ヘクタール——日本の国土のおよそ4分の1にあたる面積です。
9,7=9.7(コンマが小数点)
9.700=9700(点が桁区切り)
9,7 juta=970万。
日本語では「万」で数えるので、百万(juta)を万に読み替える必要があります。1 juta = 100万、9,7 juta = 970万。大きな数の単位ribu(千)/juta(百万)/miliar(十億)/triliun(一兆)。3桁ごとに単位が変わります。
日本語は万・億・兆と4桁ごと。区切りの位置がずれているので、頭の中でいったんほどく必要があります。
1万=10 ribu/100万=1 juta/1億=100 juta/10億=1 miliar。
インドネシアの経済ニュースは miliar と triliun が頻出します。juta と miliar を取り違えると桁が1000倍ずれます。sekitar=およそ(kira-kira/kurang lebih も同じ)。正確な数字ではないという合図です。lebih dari(〜以上)/hampir(〜近く)も同じ仲間。
Kebakaran tersebut(主語)menghanguskan(述語)sekitar 9,7 juta hektare lahan(何を)。8語の短い文。数字を出すためだけの一文です。
原文(再掲)Kebakaran tersebut menghanguskan sekitar 9,7 juta hektare lahan.
訳例この火災は、およそ970万ヘクタールの土地を焼き尽くした。
この記事はtersebut を4回使っています(第6文・第12文・第17文ほか)。前に出たものを指し直すときの、硬い文体の目印です。
会話なら itu、報道文なら tersebut。訳す方向(日→イ)でも、この使い分けは効きます。「この」「その」を全部 itu にすると、文体が落ちます。
Kabut asapnya menyelimuti lima negara tetangga, antara lain Malaysia, Singapura, dan Filipina.
語注毛布をかけるように、上からすっぽり覆うイメージです。煙・霧・雪・闇によく使われます。
Kabut menyelimuti kota.(霧が街を覆う)/Salju menyelimuti atap.(雪が屋根を覆う)/diselimuti kegelapan(闇に包まれる)。
似た語:menutupi(覆い隠す)/meliputi(含む・及ぶ)/melanda(襲う・災害に使う)。menyelimuti は「静かに、広く覆う」感じです。kabut asap = ヘイズkabut(霧)+asap(煙)=煙霧。英語の haze にあたります。
東南アジアでは毎年のように起きる現象で、マレーシア語では jerebu と呼びます。インドネシア語では kabut asap。
-nya が付いて kabut asapnya=その(火災の)煙霧。前文の kebakaran を受けています。
関連語:polusi udara(大気汚染)/pencemaran udara(大気汚染・より硬い)/ISPU(大気汚染指数)/ISPA(急性呼吸器感染症)。negara tetangga=近隣国。設問4がこの語を使っています。本文に出た語が、そのまま設問に出る——設問を先に読んでおくと、聞くときの目印になります。
この文はlima negara(5か国)と言いながら、3つしか名前を挙げていません。antara lain があるから、それで矛盾しないわけです。
この語がなければ「3か国」と読めてしまいます。数と、挙げられた名前の数が合わないとき、この語を探します。列挙まわりの語antara lain=とりわけ(一部を挙げる)
yaitu/yakni=すなわち(全部を挙げる)
seperti=〜のような(例示)
misalnya=たとえば
dan lain-lain(dll.)=など
termasuk=〜を含めて
yaitu と antara lain は、意味が違います。yaitu なら、そのあとに来るのが全部。antara lain なら、まだほかにもある。
設問で「何と何か」を聞かれたとき、この違いが答えの形を決めます。今日の設問には列挙を求める問いはありません。ただし設問3が「理由」を2つ求めます。数を示す語に敏感になっておくのは、今日の記事では大事な構えです。
Kabut asapnya(主語)menyelimuti(述語)lima negara tetangga(何を), antara lain Malaysia, Singapura, dan Filipina(そのうちの例)。コンマ以降は、直前の「5か国」の中身を一部だけ挙げています。
原文(再掲)Kabut asapnya menyelimuti lima negara tetangga, antara lain Malaysia, Singapura, dan Filipina.
訳例その煙霧は、マレーシア、シンガポール、フィリピンをはじめとする近隣5か国を覆った。
インドネシア語はまとめ(5か国)が先、例が後。日本語はその逆のほうが読みやすいことが多い。
訳は語順どおりでなくてよい——意味の関係が保たれていれば、並べ替えたほうが読みやすくなります。
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第8文以降の逐語解説と、設問1〜4の答えあわせをまとめて収録しています。あわせて収録しているのは次の内容です。
- 設問1の核心——Kesadaran bahwa persoalan itu tidak dapat diatasi sendirian。「近隣国に影響した」だけでは、なぜ半分の答えなのか
- 設問3の核心——理由は2つ。Ganjalan lain(別の障害)という語が、どこで「2つ目」を教えてくれるか
- 設問4の核心——本文に直接の答えがない推論問題。協定の3つの義務から、どう組み立てるか
- 署名と批准は別の行為——2002年と2014年、12年の空白が意味すること
- 設問1〜4の解答例、よくあるつまずき、設問5の解答例と日本語訳、復習語彙12











