——開発と環境をテーマに、150語の意見文を組み立てる
インドネシア語で意見文を書く教材です。テーマは「発展すればするほど環境を壊すのか」——インドネシアの論説でくり返し議論されてきた問いです。
作文でいちばん詰まるのが「両立させる」という日本語。辞書を引いても出てこないのに、この種のテーマでは必ず必要になります。答えは menyelaraskan/menyeimbangkan/memadukan、自動詞なら berjalan beriringan——使い分けを含めて、まず最初に整理します。
そのうえで、148語の答案例を1文ずつ添削し、115語の清書版まで組み立て直します。派生形の条件(meN-kan/meN-i/ter-/ke-an/per-an)を意図的に配置する設計も、図で示しました。
PETUNJUK(指示)/目安30分。
1. 下記2つのテーマから1つを選び、題名は自分で決める。
2. 100〜150語で書く。
3. 正しい綴りで、明瞭に書く。
4. bahasa baku(改まった標準インドネシア語)を使う。
5. 次の枠組みに従って構成する:A. Pendahuluan(導入:話題の提示と立場の予告)/B. Isi(本論:主張+根拠+具体例、必要なら反論への応答)/C. Penutup(結論:主張の言い換えと展望・提案)
6. 下のテーマAかテーマBを選ぶ。
Pelestarian lingkungan kerap dituding menghambat laju pertumbuhan ekonomi. Benarkah keduanya tidak dapat berjalan seiring?
(環境保全はしばしば経済成長の足かせだと非難される。両者は本当に両立できないのか。)
Daerah yang kaya akan sumber daya alam justru sering tertinggal dari segi kesejahteraan warganya. Apa yang harus diubah agar kekayaan alam benar-benar memberikan nilai tambah bagi masyarakat setempat?
(天然資源に恵まれた地域ほど、住民の暮らし向きでは取り残されがちである。資源の富が地元社会に本当の付加価値をもたらすには、何を変えるべきか。)
あわせて、この形式の作文で見られるのは次の点です。指示文には書かれていませんが、採点の観点として定着しています。
・bahasa baku の徹底——nggak / bikin / kayak / banget / lumayan / bisa dibilang / biar は不可
・接続語の使い分け——namun・sebaliknya・oleh karena itu・dengan demikian・selain itu
・派生形を各1回以上——meN-kan/meN-i/ter-/ke-an/per-an
・受動 di- を織り込む
・語数の厳守(100〜150語)
この記事では TEMA A を扱います。「環境保全は経済成長の足かせなのか」——インドネシアの論説でくり返し議論されてきた問いです。
選んだ題名は Kian Maju, Kian Merusak Lingkungan. Apakah Itu Benar?(発展するほど環境を壊す。それは本当か)。問いかけ型の題名で、テーマの疑問文をそのまま受けています。
このテーマで書き始めると、ほぼ全員が同じところで止まります。「両立させる」をインドネシア語で何と言うのか。
和イ辞典を引いても、うまい訳語が出てきません。「両立」=2つのものが同時に成り立つという日本語の抽象度が高すぎて、対応する1語がないからです。そこで多くの人が menjalankan dua hal(2つのことを実行する)のように説明的に書いてしまう——意味は通じますが、論説文としては弱くなります。
答えは、動詞なら主に3つです。
① menyelaraskan A dengan B = 調和させる。これが「両立させる」の最も標準的な訳で、論説文向きです。語根は selaras(調和した・一致した)。
menyelaraskan pertumbuhan ekonomi dengan pelestarian lingkungan(経済成長と環境保全を両立させる)。政策文書でそのまま使われる形なので、覚えておくと強い武器になります。
② menyeimbangkan A dan B = 釣り合いを取る。語根は seimbang(釣り合った)。「どちらかに偏らせない」という含みが強く出ます。
menyeimbangkan kepentingan ekonomi dan lingkungan(経済と環境の利害の釣り合いを取る)。①が「両方をうまく噛み合わせる」なら、②は「片方に傾かせない」——微妙に発想が違います。
③ memadukan A dengan B = 組み合わせて一つにする。語根は padu(一体の・緊密な)。やや「融合」寄りで、2つを溶け合わせて新しいものにする感じです。
memadukan pembangunan dengan konservasi(開発と保全を融合させる)。
自動詞にしたいときは berjalan beriringan / berjalan seiring。「両立させる」ではなく「両立する」と言いたい場面です。iring(連れ立つ)+ ber-…-an で「並んで進む」。
Keduanya sebenarnya dapat berjalan beriringan.(両者は実は両立しうる。)この一文は、このテーマの序論にそのまま使えます。
名詞にするなら keselarasan / keseimbangan antara A dan B。「AとBの調和/均衡」。しかもこれは ke-an 形なので、課題条件の「ke-an を1回以上」も同時に満たせます。
keselarasan antara pembangunan dan lingkungan(開発と環境の調和)。
作文では、この4系統を1つ使えるだけで文章の格が変わります。「2つのことを実行するのは難しい」と書くか、「開発と環境保全を両立させるのは難しい」と書くか——同じ内容でも、後者は論説文の語彙で書かれています。
図1|「両立」を言うための4系統です。他動詞3つ(menyelaraskan / menyeimbangkan / memadukan)、自動詞1つ(berjalan beriringan)、そして名詞形(keselarasan / keseimbangan)。下段が示すとおり、説明的に書くか、1語で言い切るかで文章の格が変わります。
ここに置くのは完成品ではなく、提出前の答案例です。構成(Pendahuluan – Isi – Penutup)は明確で、問い→原因→提言という論の運びも成立しています。崩れているのは細部——語の選択と、条件の取りこぼしです。答え合わせは STEP3 で1文ずつ行います。
Kian Maju, Kian Merusak Lingkungan. Apakah Itu Benar?
Indonesia merupakan negara yang berkembang pesat sering dituding karena merusak lingkungan sekitarnya. Tampaknya bagi sebagian besar orang, sulit untuk menjalankan dua hal, yaitu perkembangan dan kelestarian lingkungan. Namun apakah itu benar?
Pihak yang ingin mengembangkan ekonomi, kini sering mengabaikan dampak bagi lingkungan demi kepentingan sendiri. Misalnya industri pertambangan sering memberi dampak buruk seperti kontaminasi kawasan sekitarnya, sehingga warga setempat terkadang mengeluh sampai menggugat pihak yang bersangkutan.Hal itu sebenarnya dapat dicegah bila pihak tertentu memedulikan kerusakan lingkungan dan berusaha untuk mencari solusi untuk tetap menjaga lingkungan. Dengan kata lain, kerusakan lingkungan demi perkembangan bisa dibilang kelalaian bagi pihak tertentu yang enggan melihat kerugian yang timbul akibat kelakuannya sendiri.
Oleh karena itu, jika pihak tertentu ingin mengembangkan proyek yang dapat merusak lingkungan sekitarnya, seharusnya diwajibkan untuk memenuhi syarat supaya dapat melestarikan lingkungan. Upaya itu akan mendorong perkembangan berkelanjutan di masa mendatang nanti.
Pendahuluan(非難がある → 両立は難しいと思われている → 本当か?)→ Isi(原因は利益優先 → 具体例として鉱業 → 防げたはずだ → つまり怠慢だ)→ Penutup(だから条件を課すべきだ → 持続可能な開発につながる)。問い → 原因 → 提言という流れは、論説文としてきちんと機能しています。
peduli(気にかける)→ memedulikan。ここは崩れやすい箇所です。peduli の p が m に変わる(meN- + p → mem- で p が脱落)というルールを守れています。mempedulikan と書く人が多いのですが、標準形は memedulikan です。
同じ型:punya → memunyai(ただし mempunyai も広く使われる)、pengaruh → memengaruhi、proses → memproses(外来語は脱落しない)。
dituding(非難される)/dicegah(防がれる)/diwajibkan(義務づけられる)——受動の条件は満たしています。
ke-an も kelestarian(保全)/kepentingan(利益)/kerusakan(損壊)/kelalaian(怠慢)/kerugian(損失)と5つ。ここは十分です。
失点は3種類に整理できます。
① 語数がぎりぎり(148語/上限150語)。加筆する余地がありません。あとで直したくなっても、削らないと足せない状態です。
② 条件の取りこぼし——ter- 派生がゼロ。meN-kan・meN-i・ke-an・per-an・受動 di- は満たしていますが、ter- だけ使われていません。
③ 語の選択——perkembangan と pembangunan の混同。この記事のテーマそのものに関わる語なので、影響が大きい失点です。
各文を 「答案例 → 指摘 → 直した文 → POINT」 の4層で見ていきます。直した文は唯一の正解ではありませんが、条件(bahasa baku・派生形・語数)をすべて満たす形になっています。
これは良い題名です。直す必要はありません。理由を3つ挙げておきます。
① kian A, kian B の対句を使えている。「〜すればするほど〜」という型で、semakin の書き言葉版です。見出しや題名で最もよく使われる構文のひとつ。
② 問いかけで締めている。Apakah Itu Benar?(それは本当か)——テーマ文の Benarkah keduanya tidak dapat berjalan seiring? をそのまま受けています。題名で問いを立てて、本文で答える——論説文の基本設計です。
③ 題名は Title Case で。各語の頭を大文字にし、前置詞(di, ke, dari)だけ小文字にします。ここは正しく書けています。
強いて言えば——Apakah Itu Benar? は Benarkah Demikian? とするともう少し引き締まります。benarkah は「本当にそうなのか」という反語的な問い方で、論説文らしい響きになります。
(変更なし。別案:Kian Maju, Kian Merusak Lingkungan. Benarkah Demikian?)
① 述語が2つ立っています。この文には merupakan(〜である)と dituding(非難される)という2つの述語があり、どちらが主節なのか分からなくなっています。
構造を追うと——「Indonesia merupakan negara [yang berkembang pesat]」でいったん文が完成しているのに、そのあと sering dituding が続いてしまう。接続詞も関係代名詞もないまま、2つ目の述語が始まっている状態です。
② 直し方は2通り。
(a)merupakan を捨てて、同格のカンマにする:Indonesia, negara yang berkembang pesat, sering dituding …(急速に発展する国であるインドネシアは、しばしば〜と非難される)。カンマに挟んだ部分が説明になり、主節は「インドネシアは非難される」だけになります。これが最も簡潔です。
(b)yang を足して関係節にする:Indonesia yang berkembang pesat sering dituding …。こちらも成立しますが、(a) のほうが読みやすい。
③ dituding の後に karena は不要です。menuding A(melakukan)B=「AがBしていると指弾する」という形で、非難の内容を直接続けられます。karena を入れると「〜という理由で非難される」となり、非難の内容ではなく理由を述べる形になってしまいます。
dituding merusak lingkungan(環境を破壊していると非難される)——これで十分です。
④ 語彙の確認。dituding(指弾される)は良い選択です。tuding は「指さす」で、名指しで非難するという強さが出ます。テーマ文の kerap dituding と同じ語なので、課題の語彙をそのまま回収できている点も評価できます。
1文に述語は1つ。2つ目が出そうになったら、①カンマで同格にする ②yang で関係節にする ③文を分ける——この3択で処理します。
作文では「述語を指で数える」のが最も確実なチェック方法です。この答案例では、第1文のほかにも述語の重複や欠落が見られます(第6文・第8文)。
① menjalankan dua hal は説明的すぎます。「2つのことを実行する」——意味は通じますが、論説文の語彙になっていません。ここはまさに「両立させる」を使う場面です。
sulit menyelaraskan pembangunan dengan kelestarian lingkungan(開発と環境保全を両立させるのは難しい)。これで9語が5語になり、しかも格が上がります。背景解説①の menyelaraskan がそのまま使える箇所です。
② perkembangan → pembangunan。これはこの作文全体に関わる語の選択です。詳しくは背景解説②で扱いますが、結論だけ言うと——国の発展・開発は pembangunan、経済成長は pertumbuhan ekonomi。perkembangan は「(技術や状況の)推移・展開」で、国家の開発政策には使いません。
③ untuk が余分。sulit の後ろに untuk は不要です。sulit + 動詞で直接つなげます。sulit menyelaraskan、sulit dicapai、sulit dipahami。
作文では untuk の入れすぎが全体を重くします。この答案例では第6文・第8文でも同じことが起きています。
④ 語順を整える。「Tampaknya bagi sebagian besar orang,」は、tampaknya(〜のようだ)が文頭に出ていて、誰にとってなのかが後ろに来るため、少し読みにくくなっています。
Bagi sebagian besar orang, tampaknya sulit … と「誰にとって」を先に置くと自然です。
説明的な表現を1語に置き換えると、語数が空きます。この文だけで4語節約できました。148語という上限ぎりぎりの答案では、語彙の精度がそのまま語数の余裕になります。
「2つのことを実行する」→「両立させる」、「悪い影響を与える」→「汚染する」、「〜する努力をする」→「〜を目指す」。まとめられる箇所を探すのが、推敲の第一歩です。
ほぼ正解です。導入の最後に問いを立てて本論へつなぐ——論説文の型として的確です。直すのは2点だけ。
① Namun の後にカンマ。接続副詞が文頭に来たら、Namun, とカンマを打ちます。同じく Oleh karena itu, Dengan demikian, Selain itu, も同様。bahasa baku では句読点も採点対象です。
② benarkah demikian のほうが引き締まる。apakah itu benar? でも正しいのですが、-kah を動詞・形容詞に直接付ける形(benarkah)はより書き言葉的です。demikian(そのように)も baku 度が高い語。
Namun, benarkah demikian?——4語で、しかも格が上がります。
③ 題名と重複していないか確認。題名が「Apakah Itu Benar?」なので、本文でも同じ表現を使うと反復感が出ます。題名を Apakah Itu Benar? のまま残すなら、本文は Benarkah demikian? に変える——これで重複が消えます。
-kah は疑問を作る小辞です。apakah(〜か)、benarkah(本当に〜か)、siapakah(いったい誰が)、mengapakah(なぜ)。
動詞や形容詞に直接付けると、文語的で強い問いかけになります。Benarkah demikian? / Mungkinkah hal itu terjadi? / Siapakah yang bertanggung jawab? ——論説文の導入や結論で効きます。
この続きでは、次のすべてを扱います。
- 第4文〜第9文の添削(答案例 → 指摘 → 直した文 → POINT)
- 背景解説②|pembangunan / perkembangan / pertumbuhan / pengembangan——「発展」を表す4語を、語根から永久に切り分ける(図解つき)
- 背景解説③|派生形の条件を「後から探す」のではなく「先に設計する」——meN-kan/meN-i/ter-/ke-an/per-an を意図的に配置する方法(図解つき)
- 背景解説④|100〜150語をどう配分するか——Pendahuluan・Isi・Penutup の語数設計と、上限に張りついたときの削り方
- STEP4|添削をすべて反映した清書版(115語)の全文と、変更点の対照表
- STEP5|条件充足のチェック表、重要表現18語、次に押さえるべき3点









